※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
出来高が多いということは、その銘柄をめぐって市場参加者の見方が分かれていることを意味します。しかし、出来高の多さが企業の優良さを示すわけではありません。銀価格が1オンス62米ドル台から反発し、70米ドルを下回る水準で推移するなか、投資家の取引が活発になっている銀関連株10銘柄を紹介します。
2026年9月20日時点で、銀のスポット価格は1オンスあたり約66.20米ドルです。FRB会合後につけた62米ドル付近からは反発したものの、8月下旬につけた70米ドル超の水準には戻っていません。
金銀比価は66前後で推移しており、銀価格は一定のレンジ内での値動きが続いています。
一方、銀関連株は銀そのものより値動きが大きくなる傾向があります。銀価格の上昇が企業利益を大きく押し上げる可能性がある一方、下落局面では逆方向にもレバレッジが働くためです。
本記事では、9月中旬から下旬にかけての出来高や売買代金をもとに、投資家の取引が活発な銀関連株10銘柄を取り上げます。
ただし、これは「優良な銀鉱株ランキング」ではありません。出来高は投資家の関心の高さを示しますが、その背景には買い集めだけでなく、売却や短期売買による値動きも含まれます。
以下の10銘柄はいずれも推奨銘柄ではありません。また、株価は9月18~19日前後の概算値であり、その後変動している可能性があります。
9月の銀市場では、一定の価格帯をめぐる攻防が続いています。
1オンス62~63米ドル付近では下値が支えられた一方、68~70米ドル付近の上値抵抗線を終値ベースで突破するには至っていません。
工業用銀の需要が緩やかに変化する一方、金利やドルは短期間でも大きく動きます。
銀価格が2日間で4米ドル上昇すれば、銀生産会社の株価が8~15%程度上昇することもあります。
そのため、銀関連株の出来高はHecla Mining(ヘクラ・マイニング)、Coeur Mining(クール・マイニング)、First Majestic Silver(ファースト・マジェスティック・シルバー)、Endeavour Silver(エンデバー・シルバー)、Pan American Silver(パン・アメリカン・シルバー)など、一部の銘柄に集中しています。
ただし、銀の供給量が1週間で大きく変わるわけではありません。鉱山の生産計画は年単位で動きます。
短期間で大きく変化するのは、その株式を保有したいと考える投資家の数やポジションです。
したがって、単に「銀関連株が上昇している」という見方ではなく、なぜ特定の銘柄に売買が集中しているのかを見る必要があります。
Hecla Miningは、9月に米国上場の主要銀関連株のなかでも特に活発に取引されました。
9月16~18日の出来高は約5,000万~6,100万株に達しています。9月18日の終値は18.90~19.00米ドル付近で、前週には21米ドル台をつけました。時価総額は直近のデータで約120億~130億米ドルです。
同社は米国最大の一次銀生産会社です。
アラスカ州のGreens Creek(グリーンズ・クリーク)鉱山とアイダホ州のLucky Friday(ラッキー・フライデー)鉱山が主力資産となっています。Casa Berardi(カサ・ベラルディ)からの撤退により、事業全体に占める銀の比重も高まりました。
そのため、銀価格が大きく上昇した際には株価も反応しやすい一方、銀価格が62米ドル付近まで下落すれば、逆方向にも大きく動く可能性があります。
北米に主要鉱山を持つことは同社の特徴ですが、コストや鉱石品位についても確認する必要があります。
出来高の大きさは、同社が銀関連株の中心的な取引対象となっていることを示しています。ただし、それ自体が割安さを意味するわけではありません。
Coeur Miningも、銀関連株のなかで出来高の多い銘柄です。
同期間には約5,000万~5,700万株が取引され、株価は19.70~19.80米ドル付近で推移しました。直近の株価上昇を受け、時価総額は100億米ドル台前半から半ばとなっています。
同社は銀だけでなく金も生産しており、純粋な銀専業企業ではありません。
Palmarejo(パルマレホ)、Rochester(ロチェスター)、Kensington(ケンジントン)、Wharf(ワーフ)などの鉱山を保有しています。
また、今回のサイクルで初めて配当を実施したことで、インカムを重視する投資家からも注目されています。
株価が大きく上昇した後に出来高が増加している場合、上昇の勢いを追う投資家と、反落を予想する投資家の双方が取引している可能性があります。
そのため、出来高だけで判断するのではなく、直近四半期の銀生産量やAISC(全維持費)を確認することが重要です。
First Majestic Silverは、個人投資家から銀関連株として高い関心を集めている企業です。
直近の出来高はNYSEで約1,000万株、TSXで約800万株でした。株価は米国市場で19.80米ドル前後、トロント市場では28.20カナダドル前後で推移しています。
同社はメキシコを中心に鉱山を運営しており、Santa Elena(サンタ・エレナ)、San Dimas(サン・ディマス)、Los Gatos(ロス・ガトス)、La Encantada(ラ・エンカンターダ)などの資産を持っています。
Gatos(ガトス)の操業開始後、2026年のガイダンスが引き上げられたことはプラス材料です。
一方、メキシコにおける財政政策や治安などはリスク要因となります。
AGは以前から銀価格への感応度が高く、活発に取引される銘柄です。そのため、銀価格だけでなく、メキシコに関するニュースにも株価が大きく反応する可能性があります。
Pan American Silverの出来高はHecla MiningやCoeur Miningほど多くありません。
直近では米国市場で約300万株、トロント市場で約200万株が取引されました。
一方、株価が高いため、売買代金で見ると依然として銀関連株の主要銘柄です。直近の株価は米国で50米ドル前後、トロントでは70カナダドル前後となっています。
同社は銀だけでなく、金の生産も大きいシニア鉱山会社です。
2026年の銀生産ガイダンスは2,000万オンス台半ばとなっています。また、La Arena(ラ・アリーナ)、Jacobina(ヤコビナ)などの金鉱山を持つため、銀価格だけに業績が左右される企業ではありません。
したがって、Pan American Silverを調査する際には、銀の生産量だけでなく、複数の鉱山に分散された生産体制や、金事業が銀価格への感応度をどの程度抑えているのかを見る必要があります。
Wheaton Precious Metalsは、一般的な鉱山会社ではありません。
銀や金を中心としたストリーミング事業を展開しており、自ら鉱山を運営するのではなく、鉱山会社に資金を提供する代わりに、将来生産される金属をあらかじめ定められた条件で購入する権利を得るビジネスモデルです。
株式の出来高は約150万株と比較的少ないものの、株価が高いため売買代金は大きくなります。
直近の株価は米国市場で約151米ドル、トロント市場で約211カナダドルでした。
投資家がWPMに注目する理由の一つは、鉱山を直接運営せずに銀や金価格へのエクスポージャーを得られることです。
鉱山会社が直接負担するディーゼル価格、人件費、鉱山操業などの影響を受けにくい一方、契約相手となる鉱山会社の事業状況など、ストリーミング企業特有のリスクがあります。
2026年の計画では、ストリーミング契約による銀が2,000万オンス以上、金相当生産量が80万オンス台後半から90万オンス台前半となっています。
WPMは、株数ベースでは「最も活発な銘柄」に見えない場合がありますが、売買代金で見れば非常に大きな資金が動いている銘柄です。
Endeavour Silverは、流動性の高い中堅銀関連株です。
直近の米国市場での出来高は約750万株、株価は10.20米ドル前後でした。時価総額はデータによって約25億~40億米ドルの範囲となっています。
同社はメキシコで鉱山を運営するとともに、開発プロジェクトも進めています。
銀価格が上昇すれば、開発中の鉱山が将来生み出す収益への期待も高まり、株価が大きく反応する可能性があります。
一方、ここでは銀市場のファンダメンタルズだけでなく、プロジェクトを予定通り建設・稼働できるかという事業遂行リスクも重要です。
製錬・処理施設が予定通り稼働すれば、銀価格上昇によるレバレッジが働きます。しかし、開発が遅れれば追加資金調達が必要となり、既存株主の持分が希薄化する可能性があります。
銀価格が3米ドル程度上昇した後にEXKの出来高が増えること自体は珍しくありません。ただし、出来高の増加がプロジェクトの開発リスクを解消するわけではありません。
Fortuna Miningも、流動性の高い中堅鉱山株の一つです。
米国市場では数百万株規模の平均出来高があり、銀と金の両方を生産しています。
同社は西アフリカと中南米に事業を展開しています。
この地域構成によって、FSMは銀や金価格への投資対象であると同時に、事業地域に伴う政治・制度リスクを持つ銘柄でもあります。
貴金属価格が上昇すれば、First Majestic SilverやEndeavour Silverなどとともに売買が活発になる傾向があります。
一方、事業を展開する国で政治・制度上の問題が発生すれば、銀価格が動いていなくても株価が急変する可能性があります。
そのため、FSMを見る際には、金属価格だけでなく、鉱山がどの国にあるのかも確認する必要があります。
Silvercorp Metalsは、直近の米国市場で約230万株が取引され、株価は11.90米ドル前後でした。
時価総額はデータの取得時点によって約17億~37億米ドルとなっています。
同社の主要事業は中国をはじめとするアジアにあります。
これは、米国のアイダホ州などに鉱山を持つHecla Miningとは異なるリスク要因を持つことを意味します。
Silvercorpはカナダの銀関連株として取り上げられることがありますが、それはTSXに上場し、カナダを中心とした株主基盤を持つためです。
上場市場や本社所在地と、実際に鉱山が存在する国は分けて考える必要があります。
SVMの出来高は銀価格だけでなく、中国に関するニュースによっても大きく変化することがあります。
Discovery Silverは、9月のTSXで取引が活発だった銀関連銘柄の一つです。
直近では100万株を超える出来高を記録し、株価は12.26カナダドル前後でした。9月中旬の一部データでは、株価の再評価を受けて時価総額が約100億カナダドルとなっています。
ただし、時価総額は株価によって変動するため、あくまで一時点の数字として見る必要があります。
同社の中心となるのが、メキシコのCordero(コルデロ)プロジェクトです。
Discovery Silverは、開発会社から生産会社へ移行する段階にあります。
そのため、出来高の増加は銀価格への期待だけでなく、建設、許認可、資金調達が予定通り進むかどうかへの市場の評価も反映しています。
開発会社から生産会社へ移行する時期の株価は大きく動く可能性があります。すでに株価が上昇した企業であっても、掘削結果や設備投資額の変更などによって、ジュニア鉱山株のような値動きを見せることがあります。
Vizsla Silverは、9月19日時点で約160万株が取引され、株価は5.70カナダドル前後でした。時価総額は約20億カナダドルです。
主力資産はメキシコのPanuco(パヌコ)プロジェクトです。
同社はジュニア銀鉱山会社ですが、カナダ市場ではすでに高い知名度と流動性を持つ銘柄となっています。
探鉱会社や開発会社の株価は、銀価格だけでなく、資源量の更新や掘削結果にも大きく左右されます。
そのため、銀価格が2%上昇した日にVZLAが6%上昇することもありますが、その逆も起こり得ます。
銀関連株の調査対象を生産会社だけに限定すれば、こうした開発・探鉱銘柄に集まる資金の動きを見逃す可能性があります。
一方、Vizsla Silverのような銘柄だけを保有している場合、銀そのものを保有しているのではなく、銀価格に加えて探鉱・開発リスクを負っていることを理解する必要があります。
今回の10銘柄には入っていませんが、ほかにも取引が活発な銀関連銘柄があります。
Americas Gold and SilverはTSXの出来高上位に登場しています。Aya Gold & Silverも中型の銀・金関連株として取引されています。
Franco-Nevadaは大手ロイヤルティ企業ですが、事業全体では銀より金の比重が大きいため、今回の主要銀関連株とは性格が異なります。
また、iShares Silver Trust(SLV)は鉱山会社ではなく、銀価格へのエクスポージャーを得るための金融商品です。米国市場では、銀関連商品のなかでも特に大きな出来高を記録することがあります。
SILやSILJのような銀鉱山株ETFもあります。
個別株だけを見ていると銀関連市場全体への資金流入を見逃す可能性があり、ETFだけを見ていると個別企業特有の大きな値動きを把握できません。
また、Franco-NevadaとWheaton Precious Metalsはいずれもロイヤルティ・ストリーミング分野の大手ですが、銀へのエクスポージャーの大きさは異なります。
株数ベースの出来高では上位に入らなくても、両社では大きな金額が取引されています。
出来高を見ることで、市場参加者の関心がどの銘柄に集まっているのかを確認できます。
しかし、その次に見るべきなのは、コスト、事業地域、売上高に占める銀の割合です。
市場で話題になっている銀関連株は、値動きの大きい高ベータ銘柄であることが少なくありません。それが必ずしも事業内容の優れた企業であることを意味するわけではありません。
銀関連株をポートフォリオに組み入れる目的で調査するのであれば、ストリーミング企業、北米の生産会社、複数の鉱山を持つ大手企業、そして投機枠として保有できる開発会社など、異なる特徴を持つ企業を比較する方法があります。
コストについては、銀価格が現在の66米ドル前後で推移するケースだけでなく、55米ドルまで下落した場合でも採算を維持できるかを確認する必要があります。
メキシコ、ペルー、中国、西アフリカなどに鉱山を持つ企業については、政治・制度上のニュースが突然発生する可能性も考慮します。
さらに、発行済み株式数の推移も重要です。
頻繁に増資を行う企業で出来高が多い場合と、発行株式数が比較的安定した企業で出来高が多い場合では、意味が異なります。
銀価格が再び70米ドルへ向かうとの予測が出れば、銀関連株はそれを先取りして上昇する可能性があります。しかし、その後銀価格が下落すれば、上昇分を失うこともあります。
こうした値動きの大きさそのものが、銀関連株の特徴です。
2026年9月中旬の出来高を見ると、Hecla Mining、Coeur Mining、First Majestic Silver、Endeavour Silver、Pan American Silver、Wheaton Precious Metals、Fortuna Mining、Silvercorp Metals、Discovery Silver、Vizsla Silverなどに取引が集中しています。
ただし、出来高が多いことと、投資先として優れていることは同じではありません。
Hecla MiningやFirst Majestic Silverは銀価格への感応度が高く、Wheaton Precious Metalsはストリーミングという異なるビジネスモデルを持ちます。Pan American Silverは金を含む複数の資産に分散され、Discovery SilverやVizsla Silverでは開発・探鉱リスクがより大きくなります。
銀価格が66米ドル前後にある現在、銀関連株の出来高は、投資家が今後の銀価格をどのように見ているのかを知る一つの手掛かりになります。
しかし、出来高だけで結論を出すべきではありません。
今後の焦点となるのは、銀価格が上値の68~70米ドルを突破するのか、それとも下値の62米ドル付近へ戻るのか、そして各企業が銀価格の下落局面でもAISCを抑え、事業を維持できるかどうかです。
【免責事項】
本記事は市場解説を目的としたものであり、投資助言ではありません。また、銀関連株、銀鉱山株、銀ロイヤルティ株、カナダの銀関連株、TSX上場の銀関連株、ジュニア銀鉱株、ETF、銀地金などの売買を推奨するものではありません。
記事内の価格、出来高、時価総額は、2026年9月18~20日前後の公開市場データをもとにした概算値であり、その後変動している可能性があります。
企業やプロジェクトには、事業運営、政治、資金調達などのリスクがあります。また、過去の出来高は将来の投資収益を示すものではありません。投資判断にあたってはご自身で調査を行い、必要に応じて資格を有する専門家にご相談ください。
Canadian Mining Reportおよびその関係者は、本記事で取り上げた証券を保有または売買している場合があります。
Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週更新される「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターを分析しています。金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、市場動向やTSXV上場のジュニア鉱山会社について、データに基づいた分析を提供しています。