※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
銀価格は2026年8月初旬、50日移動平均線を突破し、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ期待の後退やショートカバーの動きを背景に、再び上昇の勢いを取り戻しました。
長期的に見ると、銀市場は構造的な供給不足が続いています。シルバー・インスティテュートは、2026年の銀市場が4,630万オンスの供給不足となり、6年連続の供給不足になると予測しています。
2021年以降の累積供給不足は7億6,000万オンスを超えています。太陽光発電、電子機器、電化などによる産業需要が銀を吸収し続けるなか、利用可能な在庫は着実に減少しています。
こうした環境では、TSX(トロント証券取引所)やTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するカナダの銀鉱山会社は、銀価格の上昇に対する株式レバレッジを得るための選択肢となります。
主要な銀生産会社や、銀の副産物収入が大きい企業では、AISC(全維持費)が抑えられていれば、銀価格の上昇によって利益が大きく拡大する可能性があります。
一方、銀鉱山株には操業、事業地域、資金調達などのリスクもあり、銀価格や市場心理が悪化した場合には下落幅が大きくなる可能性があります。
本記事では、大規模な多角化生産企業から銀生産に特化した企業、成長志向の企業まで、カナダの銀関連株として注目される5社について、生産状況、コスト構造、成長要因、主要なリスクを見ていきます。なお、これは推奨銘柄のリストではありません。
銀は工業用金属であると同時に、貨幣・投資資産としての性質も持っています。この二つの役割が、銀特有の需給構造を生み出しています。
太陽光発電、電子機器、EV(電気自動車)などに支えられる産業需要が、年間需要の大部分を占めています。一方、銀地金、銀貨、上場投資商品などの投資需要は変動が大きく、銀価格の上昇・下落を増幅させる要因になります。
供給面では、世界の銀生産量の70%以上が、鉛、亜鉛、銅、金などを採掘する際の副産物として生産されています。そのため、銀価格が上昇しても、銀だけを目的として短期間で生産量を大幅に増やすことは困難です。
鉱山からの供給が横ばい、あるいは緩やかな増加にとどまる一方、総需要は依然として高水準にあり、これが数年にわたる供給不足につながっています。リサイクルによる供給もありますが、需給ギャップを埋めるまでには至っていません。
銀の採掘コストは、鉱山や事業地域によって大きく異なります。一次銀生産会社のAISCは、副産物クレジットや操業効率によって異なるものの、副産物または共同生産ベースで1オンス当たり10ドル台半ばから20ドル台後半、あるいは30ドル台前半となるのが一般的です。
AISCが低く、埋蔵量に基づく鉱山寿命が長い企業ほど、銀価格上昇時の利益拡大効果が大きく、価格下落局面への耐性も高くなる傾向があります。
Pan American Silverは、カナダの銀鉱山会社のなかでも最大級かつ事業を幅広く展開している企業です。
メキシコのLa Colorada鉱山や、高品位鉱床を持つJuanicipio合弁事業の44%権益をはじめ、ペルー、ボリビア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、カナダなどに事業を展開し、銀と金の両方を生産しています。
2026年の会社予想では、権益分の銀生産量は2,500万~2,700万オンス、金生産量は70万~75万オンスです。銀部門のAISCは1オンス当たり15.75~18.25米ドルと、同業他社と比較して競争力のある水準となっています。
同社は健全なバランスシートを維持し、現在の価格水準では大きなフリーキャッシュフローを生み出しており、配当も支払っています。
規模の大きさと地域分散によって、銀生産に特化した企業よりも単一資産への依存リスクが抑えられています。MAG Silverが保有していたJuanicipioの権益を取得したことで、高品位の銀資産へのエクスポージャーもさらに高まりました。
一方、大規模なポートフォリオ全体の操業変動、中南米の事業地域リスク、副産物クレジットに影響するベースメタル価格などが主なリスクです。
カナダの銀関連株のなかで、一定の規模と分散を重視する投資家にとって、Pan American Silverは高ベータの銀専業株というより、中核的な銘柄として位置づけられることが多い企業です。
First Majestic Silverは、TSXに上場する銀関連株のなかでも、銀への純粋なエクスポージャーが大きい一次銀生産会社として知られています。
売上高に占める銀の割合が高いため、銀価格が上昇した際の利益拡大効果も大きくなります。
同社はメキシコでSan Dimas、Santa Elena、La Encantadaなどの鉱山を運営し、Los Gatos鉱山にも権益を持っています。
2026年の会社予想では、権益分の銀生産量は1,300万~1,440万オンスで、これに金やベースメタルの副産物生産が加わります。銀換算ベースのAISCは、鉱山や副産物クレジットによって異なりますが、10ドル台後半から20ドル台半ばです。
今後の成長は、処理能力の拡大や鉱山の最適化が中心となります。また、同社は造幣機能も取り入れており、付加価値を持つ銀製品を販売できます。
主なリスクは、メキシコへの事業集中、鉱石品位の変動、低コスト生産会社と比較した場合のコストの高さです。
銀へのエクスポージャーが大きいことから、First Majesticの株価は、より事業を多角化した同業他社と比べて銀価格に対して大きく動く傾向があります。
Endeavour Silverは、生産量を拡大している中堅の銀・金生産会社です。
メキシコのGuanaceví鉱山とBolañitos鉱山に加え、2025年に商業生産を開始したTerronera鉱山、2025年に取得したペルーのKolpa鉱山、開発段階にあるPitarrillaプロジェクトなどを保有しています。
2026年はTerroneraが通年で生産に貢献する最初の年となるため、生産量の大幅な増加が見込まれています。
会社予想では、銀生産量は830万~890万オンス、銀換算生産量は1,460万~1,560万オンスです。副産物を差し引いた銀1オンス当たりのAISCは20ドル台半ばから後半になると予想されています。
短期的な最大の成長要因はTerroneraの生産拡大です。順調に進めば生産規模が拡大し、将来的には単位当たりのコスト低下につながる可能性があります。
一方、新規鉱山の立ち上げ、ペルーで取得した資産の統合、大手企業と比較して高いAISCなどがリスクとなります。
Endeavour Silverは、大手生産会社より銀価格上昇時のレバレッジが大きい一方、それに応じて操業リスクも高くなります。
Aya Gold & Silverは、近年急速に生産を拡大しているカナダの銀鉱山会社の一つです。
主力資産はモロッコのZgounder銀鉱山で、これに多金属鉱床であるBoumadine開発プロジェクトが加わります。
Zgounderでは処理量と回収率の向上によって生産が大きく増加し、最近の四半期には過去最高の生産量を記録しています。
2026年の会社予想では、Zgounderから520万~580万オンスの銀を生産し、現金コストは1オンス当たり約21.50米ドルとなっています。さらにBoumadineの貯鉱から銀換算生産量が加わる予定で、大規模な探鉱プログラムも進められています。
モロッコは、一部の中南米諸国と比べて比較的安定した事業地域とみられており、同社はNasdaqへの上場によって資本市場での存在感も高めています。
一方、現時点ではZgounderへの依存度が高いこと、Boumadineの開発を進めるうえでの実行リスク、坑内掘り銀鉱山に一般的な操業上の変動などがリスクです。
生産量の増加と探鉱による上昇余地を兼ね備えていることから、Ayaは成長志向の銀関連株として注目されることが多い企業です。
Silvercorp Metalsは、中国のYing Mining DistrictとGC Mineを中心に事業を展開する銀生産会社です。銀に加え、金、鉛、亜鉛なども副産物として生産しています。
また、エクアドルのEl Domo銅・金プロジェクトを初回生産に向けて開発しており、実現すれば地域と鉱種の両面で事業を分散できます。
同社はこれまで中国の資産から安定したキャッシュフローを生み出し、保守的なバランスシートを維持してきました。今後の最大の成長要因となるのがEl Domoの開発です。
一方、中国での操業上の問題や生産停止、El Domoを生産開始まで進めるために必要な資金と開発リスク、中国とエクアドル双方の政治・規制環境などがリスクとなります。
カナダの銀鉱山株のなかで、現在のキャッシュフローと将来の開発余地を組み合わせた企業を求める投資家にとって、Silvercorpは独自の位置づけにあります。
カナダの銀関連株を投資戦略に組み入れる場合、主に次の点を考慮する必要があります。
投資額、投資期間、リスク許容度も重要です。銀鉱山株は、銀地金やETFを通じて銀そのものを保有する場合よりも、価格変動が大きくなる傾向があります。
銀価格上昇時には、銀へのエクスポージャーが大きく、競争力のあるAISCと増産余地を持つ一次銀生産会社ほど、利益やフリーキャッシュフローが大きく増加する傾向があります。
Pan American Silverのような大規模で事業を分散している企業は、銀価格へのレバレッジが比較的穏やかな一方、単一資産への依存リスクを抑えられます。
First Majestic、Endeavour Silver、Aya Gold & Silverのように銀へのエクスポージャーが大きい企業や成長志向の企業は、銀価格に対する株価の感応度がより高くなる傾向があります。
「上昇余地」は、銀価格の動きと各企業の業績の両方によって決まります。
Endeavour SilverのTerronera鉱山の生産拡大や、Aya Gold & SilverによるZgounder鉱山の継続的な最適化とBoumadineプロジェクトの進展など、短期的な増産要因を持つ企業は、銀価格上昇局面でより大きな上昇余地を持つ可能性があります。
また、純資産価値に対する過去の株価倍率と比べて割安な水準で取引されている企業にも、大きな上昇余地が生まれる可能性があります。
ただし、高い上昇余地には、ほぼ必ず高いリスクが伴います。投資家は潜在的なリターンだけでなく、操業、事業地域、資金調達などのリスクも比較する必要があります。
【免責事項】
本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、証券の購入・売却・保有の推奨、または将来の業績を予測するものではありません。
銀鉱山株への投資には、元本を失う可能性を含む大きな損失リスクがあります。操業、事業地域、商品価格、為替、資金調達などのリスクは、企業の業績に大きな影響を与える可能性があります。
過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。投資判断を行う前に、ご自身で十分な調査を行い、必要に応じて資格を持つ専門家へ相談してください。
Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。
金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。