AIが銅需要を押し上げられ、カナダの銅資産は戦略的重要性を増すのか?

September 10, 2026

※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。

AIの普及に伴うデータセンター建設は、銅需要を押し上げています。しかし、鉱山の開発には10年以上かかることも珍しくありません。重要なのは「AI関連」という言葉ではなく、必要な時期までに実際に銅を供給できる資産かどうかです。

AIが銅需要を押し上げるという話は、もはや将来予測ではありません。AIインフラに銅が不可欠なのは、大量の電力を供給するためにケーブルや変圧器、バスウェイ、接地設備などが必要になるためです。

液冷式データセンターでは、電力1MWあたり20~40トンの銅が必要になると見積もられています。Wood Mackenzieは、米国の電力需要が今後大幅に増加するなか、その大部分をデータセンターが牽引するとみています。

変圧器やバスウェイ、接地設備への投資は、新しいAIモデルの登場に合わせて短期間で変化するものではありません。数年単位で進められる設備投資です。

2026年の銅価格は16%上昇し、ロンドン市場では1トンあたり1万4,533米ドル付近と過去最高水準にあります。その背景ではAIインフラなどからの需要が増える一方、今年上半期の鉱山供給が1.1%減少しています。

本記事では、「買うべきカナダの銅関連株」や「カナダの優良銅関連株」といったランキングは紹介しません。

AIを理由に銅関連株へ投資することと、その企業が本当に戦略的重要性を持つことは別の話です。重要なのは企業が掲げるテーマではなく、鉱業に適した国・地域で鉱業権を保有していること、十分な電力を確保できること、そして新たな国・地域で一から鉱山を開発することなく、実際に銅カソードや精鉱を供給できる道筋があることです。

ジュニア鉱山会社に関係なく拡大する銅需要

AIによる銅需要は、突き詰めれば電力需要の増加によるものです。

AIモデルを訓練する大規模なコンピューティング設備には大量の電力が必要です。電力需要が増えれば変電所が必要になり、変電所には銅を使った巻線や母線などが必要になります。

ただし、「世界で銅が不足している」という表現には注意が必要です。2026年7月には米国が海上輸送で20万~22万5,000トンの銅を輸入しました。また、通商拡大法232条に基づく関税導入に備え、米国内には約70万トンの銅が事前に持ち込まれたとの推計もあります。

AIにとって問題なのは、地球上から銅そのものがなくなることではありません。データセンター事業者が2027年に設備を必要としているにもかかわらず、その時期に必要な場所で確保できる未契約の銅が不足することです。

銅の供給面でも懸念材料があります。CodelcoとFreeportの生産量は2桁減となり、チリの第2四半期の生産量は約20年ぶりの低水準となりました。Antofagastaは生産見通しを62万5,000~65万5,000トン、Lundin Miningは30万~32万5,000トンとしています。

Morgan Stanleyも、2017年以来初めて年間の鉱山供給が減少する可能性を想定しています。

つまり、現在の銅市場には2つの大きな要因があります。鉱山からの供給が伸び悩んでいるという物理的な供給要因と、データセンター建設によって銅需要が増えているという設備投資による需要要因です。

この2つが重なることで、銅価格が1トンあたり1万4,000米ドルを超える水準を維持する可能性があります。

しかし、銅価格が高騰したからといって、AIインフラの設備投資サイクルに間に合うように、ブリティッシュコロンビア州の未開発鉱山からすぐに銅を供給できるわけではありません。

カナダ政府は銅を重要鉱物に指定しています。しかし、政府の重要鉱物リストに掲載されることと、鉱山から実際に銅を生産できることは別問題です。

鉱山開発には従来どおり許認可や資金、インフラ整備が必要です。戦略的資産として重要なのは、リストに名前が載っていることではなく、実際に供給できる銅の量です。

「戦略的資産」とは何を意味するのか?

政府にとって重要なのは、地政学的な供給リスクが比較的小さい国・地域から金属を調達できることです。

電力会社などの需要家にとっては、関税政策が変化しても安定して銅精鉱やカソードを調達できる契約が重要になります。

そして鉱山会社にとって重要なのは、プレスリリースで「戦略的」と宣伝することではありません。NI 43-101に基づいて公表された資源量・埋蔵量があり、さらに電力を確保した製錬所など、実際の供給につながるインフラが存在することです。

カナダの銅鉱山会社は、こうした条件のいくつかを満たしていますが、すべてを備えている企業は多くありません。

現在すでにケベック州、オンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州、カナダ北部などから銅を出荷している生産企業は、すでに戦略的な役割を担うことができます。

一方、カナダ企業が米国の既存鉱山地域へ進出する動きもあります。

Hudbay MineralsによるArizona Sonoran Copper Companyの買収は、その一例です。カナダの証券取引所に上場する企業が、米国にある銅資産を取得する動きであり、現在の銅価格水準を背景としたM&Aと捉えることができます。

Faraday Copperも、アリゾナ州にあるBHPのSan Manuel鉱区を取得する契約を結んでいます。取引条件にはFaradayの株式約30%に相当する株式が含まれており、残る条件についてはまだ確定していません。

これらに共通するのは、カナダ国内で新たな鉱山の評価・開発を一から進めるのではなく、すでに鉱業が行われている地域のブラウンフィールド資産を取得するという戦略です。

この動きは、戦略的重要性を決めるのが企業の本社所在地ではなく、銅をどこから、どれだけ早く供給できるかであることを示しています。

カナダ国内にも、Sudbury、Timmins、Highland Valley、Labrador–Quebec回廊など、既存の主要鉱業地域があります。また、Sterling Metalsが掘削を進めるBatchawana地域のSooプロジェクトなど、新たな探査も続いています。

しかし、探査プロジェクトが存在するだけでは戦略的資産とはいえません。ディーゼル価格が1ガロンあたり5.85米ドルに達し、関税政策にも不透明感が残り、現在1万4,533米ドルの銅価格が将来平均的な水準へ戻る可能性もある環境では、次の1,000メートルの掘削に必要な資金を確保できなければ、プロジェクトを前進させることはできません。

どの企業が戦略的重要性を持ち得るのか

ここでも特定の銘柄ランキングを示すのではなく、企業がどの段階にあるのかを考える必要があります。

まず、すでに銅を生産し、送電網など必要なインフラへのアクセスを持つ企業です。こうした生産者は、オフテイク契約を通じてAIによる銅需要増加の恩恵を最も早く受ける可能性があります。

銅価格はチリなど主要産出国の生産状況に左右され、精鉱の在庫は米国の政策によっても影響を受けます。そのなかで、2028年より前に実際の供給を増やすなど「戦略的」な動きを取れるのは、基本的にすでに生産している企業です。

次に、鉱業権やパートナーを確保し、製錬所へのアクセスや必要な許認可を得ている開発企業です。

2027~2028年になっても銅需要が高い状態が続いていれば、PEA(予備的経済性評価)より先の開発段階へ進んでいるプロジェクトは戦略的な存在になる可能性があります。

Faraday CopperのSan Manuel鉱区やHudbay Mineralsのアリゾナ州の資産は、米国内に位置するこのカテゴリーの例です。

一方、カナダ楯状地やコルディレラ山系で活動する初期段階の銅探査会社が戦略的な供給源となるのは、さらに先の話です。大手鉱山会社が開発資金を投入し、政府が道路などのインフラ整備を支援して初めて、実際の供給源となる可能性があります。

資源量の裏付けもなく、投資家向け資料に「AI」という言葉を載せているだけのジュニア鉱山会社は、戦略的資産とはいえません。

AIブームを背景に銅関連株が上昇しても、チリの生産見通しや銅市場のニュースによって株価は再び下落する可能性があります。

すでに銅を生産しているカナダの鉱山会社にとって、「AI」という言葉そのものは必要ありません。重要なのは、鉱山や処理施設を建設している間も十分な銅価格が維持され、実際の需要が続くことです。

そして、戦略的重要性を判断するうえで見逃せないのがオフテイク契約です。

商社や電力会社などが将来の生産物を購入する契約を結び、場合によっては前払いまで行うことは、企業が「重要鉱物」を掲げることよりも強いシグナルになります。

今週、Trafiguraが金関連企業の資金調達に参加したことも、商品取引会社が実際の資金を投じることで意思を示す一例です。銅でも生産量が実際に増加すれば、同様の動きがみられる可能性があります。

政策をめぐるリスク

米国では、通商拡大法232条に基づく銅関税をめぐる不透明感が依然として残っています。

関税の行方が不透明な状態が続けば、米国への銅の流入によってロンドン市場の需給が逼迫しやすくなります。一方、関税を導入するかどうかが明確に決まれば、これまで関税を見越して積み上がった在庫が動き出し、市場に大きな影響を与える可能性があります。

こうした環境では、カナダから米国へ安定して供給できる銅の価値が高まります。特に関税の影響を抑えながら米国の需要家と供給契約を結べる企業は、戦略的な供給源となる可能性があります。

一方、カナダ政府が海外との資源協力を強化するだけで、銅の供給構造がすぐに変わるわけではありません。

データセンターの多くは米国で建設されています。一方、供給不足への懸念が強まっている主要な銅生産地域の一つはチリです。

そのため、戦略的重要性を持とうとするカナダの銅鉱山会社には、大きく2つの選択肢があります。

一つは、AI・データセンター需要が支える価格水準でカナダ国内の銅を生産することです。もう一つは、すでにデータセンターや関連インフラが建設されている米国などの地域で、既存の鉱業資産を取得することです。

どちらも合理的な戦略です。

しかし、ユーコン準州などに鉱業権を保有しているというだけで、それをAIデータセンター向けの戦略的供給資産とみなすことはできません。鉱床の存在と、実際の需要家に銅を届けられることの間には大きな隔たりがあります。

結論

AIの普及に伴い、銅需要は増加しています。その理由は、AIモデルそのものに銅が使われるからではなく、AIを支える大規模な電力インフラに大量の銅製機器が必要になるためです。

変圧器の巻線などには安価で簡単に置き換えられる代替材料がないため、銅はAIインフラにとって重要な金属です。

カナダの銅資産も、すでに生産段階にある場合や、既存の鉱業地域に位置し、許認可やインフラが整ったブラウンフィールドプロジェクトであれば、戦略的資産となる可能性があります。2027年以降の銅調達競争が本格化する前に金融機関などから資金を確保し、供給を開始できる可能性があるためです。

しかし、カナダに存在するすべての銅鉱床が戦略的資産になるわけではありません。

銅価格は現在1トンあたり1万4,533米ドル付近にあり、在庫の逼迫や関税をめぐる不透明感が続けば、1万5,000米ドルまで上昇する可能性があります。一方、米国の供給構造が変化すれば、価格が過去の平均的な水準へ戻る可能性もあります。

そのため、「買うべき銅関連株」という銘柄リストを見るだけでは十分ではありません。

AIによる電力需要が何MW増えるのかを確認し、その次に、企業がNI 43-101に基づいてどれだけの資源量・埋蔵量を示しているのかを見る必要があります。

戦略的重要性を決めるのは、「AI」という言葉ではなく、実際に供給できる銅の量と、その供給までに必要な時間です。

【重要なお知らせ】

本記事は情報提供および教育目的のみを意図したものであり、投資助言や、銅関連証券の購入、売却、保有を推奨するものではありません。

企業名は、執筆時点で公表されている情報に基づき、業界の背景情報として記載しています。銅価格、輸入量、各プロジェクトの状況は今後変化する可能性があります。また、関税政策の行方やデータセンターの建設ペースには不確実性があります。

鉱業への投資は元本の損失につながる可能性があります。必要に応じて資格を有する専門家にご相談ください。著者および出版社は、本記事の内容に基づいて行われた行為について一切の責任を負いません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

著者:Ben McGregor

Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週更新される「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターを分析しています。金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、市場動向やTSXV上場のジュニア鉱山会社について、データに基づいた分析を提供しています。

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