※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
2026年10月15日|Ben McGregor
中国によるレアアースの輸出規制が、世界の供給網に影響を与えています。特に深刻なのは採掘段階よりも、その後の分離・精製と永久磁石の製造です。
中国以外の国でもレアアース鉱石は採掘されています。しかし、鉱石を元素ごとに分離し、電気自動車(EV)などに使われる永久磁石へ加工できる企業は限られています。
こうした状況で注目されるのが、中国国外でレアアースの分離・精製や磁石製造を進める企業です。
本記事では、Neo Performance Materials、Lynas Rare Earths、Aclara Resourcesの3社を取り上げます。
Neoはエストニアで永久磁石の商業出荷を開始しました。Lynasは中国国外で大規模なレアアース分離・精製事業を展開しています。Aclaraは米国ルイジアナ州で新たな分離施設の建設を計画しています。
3社は事業の進捗段階が大きく異なります。投資対象として比較する際には、中国の輸出規制だけでなく、実際の生産量や設備投資、資金調達の状況を確認する必要があります。
中国は世界最大のレアアース生産国です。
米国地質調査所(USGS)の2026年版資料によると、2025年の世界のレアアース酸化物生産量は約39万トンでした。このうち中国が約27万トンを占め、世界全体の約69%に相当します。
米国のシェアは約13%、オーストラリアは約7%でした。
中国の採掘量は突出していますが、他国でも一定量が生産されています。
より大きな差があるのは、採掘後の加工工程です。
国際エネルギー機関(IEA)によると、2024年の磁石向けレアアース4元素における中国のシェアは以下の通りです。
・採掘:約60%
・分離・精製:約91%
・焼結永久磁石の製造:約94%
対象となる4元素はネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムです。
採掘段階では中国以外の国にも一定の供給力があります。しかし、分離・精製と磁石製造では中国への依存度が一段と高くなっています。
なお、2025年の採掘シェア69%と2024年の採掘シェア60%は対象元素と集計年が異なるため、単純には比較できません。
IEAが2026年10月12日に公表した資料では、レアアース精製における最大供給国のシェアが2023年の90%から2025年には85%へ低下したとされています。
中国への集中度はやや緩和しましたが、依然として高い水準です。
レアアースの供給網を評価する際には、鉱石の生産量だけでなく、分離・精製と磁石製造の能力まで確認する必要があります。
レアアース鉱石は、採掘しただけではEVのモーターなどに使用できません。
まず鉱石を選鉱して品位を高め、化学処理によって成分を抽出します。その後、分離施設で各元素を取り出し、酸化物から金属や合金へ加工します。
永久磁石を製造するには、さらに成形や焼結などの工程が必要です。
完成した磁石も、すぐに自動車メーカーへ供給できるとは限りません。耐熱性や耐久性などの品質基準を満たし、顧客の認証を取得する必要があります。
米国やオーストラリアでレアアース鉱山が新たに開発されても、分離・精製施設や磁石工場が不足していれば中国への依存は続きます。
鉱山開発と加工施設の整備は、分けて考える必要があります。
中国政府は2025年以降、レアアース関連製品や技術の輸出管理を強化してきました。
ただし、現在も有効な規制と、一時停止されている規制を区別する必要があります。
中国商務省は2025年4月4日、公告第18号に基づき7種類の中・重希土類元素を輸出許可の対象としました。
対象はサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムです。
この規制は2026年10月時点でも継続しています。
特にジスプロシウムとテルビウムは、永久磁石の耐熱性を高めるために使用されます。
EVの駆動モーターや風力発電設備、防衛関連機器などでは、高温環境でも磁力を維持する必要があります。
そのため両元素の輸出許可制度は、中国国外の磁石メーカーにも影響します。
中国は2025年10月、輸出管理の対象をさらに広げる措置を発表しました。
この追加措置にはホルミウムなどの元素に加え、レアアースの分離設備や製造技術、磁石製造に関する技術も含まれていました。
さらに、中国由来の規制対象レアアースが製品価値の0.1%以上を占める場合、中国国外で製造された製品にも輸出許可を求める規定が設けられました。
ただし、この追加措置は2025年11月に1年間停止されました。
公告第70号に記載された停止期限は2026年11月10日です。
一方、2026年9月28日に中国商務省が公表した米中間の貿易取り決めでは、合意の期限が2027年1月10日とされています。
このため一部の貿易関連資料では、レアアースの追加規制についても停止期間が延長されたと解釈されています。
しかし、10月中旬時点で確認された当該発表の文言には、公告第70号やレアアース規制への明示的な言及がありません。
2026年11月10日と2027年1月10日は、それぞれ異なる文書に記載された期限です。
両者を同じものとして扱うべきではありません。
10月8日と9日には、中国と欧州連合(EU)の貿易担当者がレアアースや永久磁石などの輸出許可手続きを円滑に進める方針を示しました。
ただし、輸出許可の審査を円滑にする方針と、規制そのものを撤廃する措置は異なります。
2025年4月に導入された7元素の輸出許可制度は引き続き有効です。
輸出規制の影響は貿易統計にも表れています。
ロイターが報じた中国税関のデータによると、2026年9月のレアアース輸出量は4,269.8トンでした。
前年同月比では6.7%増加しましたが、8月の4,735トンからは9.8%減少しています。
1~9月の累計輸出量は4万3,711トンで、前年同期比9.6%減でした。
別の市場レポートでは、9月の輸出量は5月の約5,490トンというピークから約22%減少したとされています。
一方、同レポートによると1~8月の輸出額は前年同期比約53.5%増加しました。
輸出量が減少するなかで輸出額が増加した背景には、価格上昇や輸出品目の構成変化などが考えられます。
ただし、輸出額の増加率は市場レポートによるもので、前述のロイター記事に掲載された税関統計とは出典が異なります。
永久磁石の輸出にも変化が見られます。
2026年8月の中国から米国への磁石輸出量は512トンで、前月比20%、前年同月比13%減少したと報告されています。
米国向けの単月データだけで世界全体の供給状況を判断することはできませんが、磁石の調達が中国の輸出動向に左右される状況は続いています。
また、別の市場レポートでは中国がネオジム・プラセオジム酸化物の供給と分離能力の約84%を占めるとされています。
同レポートは2026年の中国国外における同酸化物の供給不足を約3万2,000トンと推計しています。
これは市場レポートによる推計値であり、確定した需給実績ではありません。
いずれにしても中国国外で不足しているのは、鉱石だけではありません。特に分離済み酸化物と永久磁石の供給能力が課題となっています。
中国以外のレアアース供給網に関わる企業として、Neo Performance Materials、Lynas Rare Earths、Aclara Resourcesの3社を比較します。
NeoとAclaraはトロント証券取引所に上場するカナダ企業です。Lynasはオーストラリア証券取引所に上場しています。
3社を選んだ理由は、事業の進捗段階が異なるためです。
Neoは永久磁石の商業出荷を開始しています。Lynasはレアアース酸化物を継続的に生産しています。Aclaraは新たな分離施設の設計を終えた段階です。
それぞれの生産実績と今後の計画を確認します。
Neo Performance Materialsはカナダに本拠を置くレアアース関連企業です。
同社は2026年9月14日、エストニアのナルヴァにある工場から焼結レアアース永久磁石の商業出荷を開始したと発表しました。
出荷先はEV用駆動モーターを製造する大手一次サプライヤーです。顧客名や出荷量は公表されていません。
この発表によって、同社の事業は工場建設や試験生産の段階から商業供給へ進みました。
ただし、初回出荷が完了しただけでは工場の稼働率や年間販売量は分かりません。
ナルヴァ工場は2025年9月に開設されました。
第1期の設備能力は年間約2,000トンです。
同社は次の拡張段階として、年間約5,000トンへの能力増強を計画しています。詳細設計や設備の発注、工場配置の検討が進められています。
ただし、年間5,000トンは計画上の設備能力であり、現在の生産実績ではありません。
エストニアの現地報道では、既存工場がフル稼働に達する時期は2028年末になると見込まれています。
同社が今回参照した発表資料では、工場の具体的な稼働率は明らかにされていません。
Neoは3社の大手モーターメーカーから複数の磁石供給プログラムを獲得したと説明しています。
さらに2026年末までに、追加で2~3件のプログラムが商業生産に移る見通しです。
EV用磁石は耐熱性や耐久性などの厳しい基準を満たす必要があります。
自動車メーカーによる認証には時間がかかりますが、一度採用されれば車種の生産期間を通じて継続的な需要につながる可能性があります。
今後は追加プログラムが予定通り商業生産に移るか、実際の出荷量が公表されるかが焦点になります。
Neoはエストニアのシッラマエに軽希土類の分離施設も保有しています。
2026年秋の報道によると、同施設では4月にジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類を分離する設備が稼働を開始しました。
ただし、今回参照した資料では、これらの重希土類酸化物の具体的な販売量を確認できていません。
設備の稼働開始と商業販売の実績は分けて評価する必要があります。
同社は長期的に複数国の工場で年間約2万トンの磁石生産能力を確保する構想も掲げています。
これは中国国外の永久磁石需要予測の10~15%に相当するという同社の試算です。
しかし、現在の設備能力は年間約2,000トンです。
年間2万トンという目標は、現在の設備能力の10倍に当たります。
今後の拡張には設備投資に加え、原料となるネオジム・プラセオジムやジスプロシウム、テルビウムの安定調達が欠かせません。
中国の輸出規制によって原料価格が上昇すれば、磁石製造の利益率が圧迫される可能性があります。
反対に中国からの供給が増えれば、中国国外で製造した磁石に対する価格上乗せが縮小する可能性もあります。
Neoはすでに商業出荷を開始していますが、今後の収益性を評価するには出荷量と原料コストの情報が必要です。
Lynas Rare Earthsはオーストラリアに本拠を置くレアアース生産企業です。
西オーストラリア州のマウント・ウェルド鉱山で採掘した原料を、カルグーリーの処理施設とマレーシアの分離・精製施設で加工しています。
同社の強みは、中国国外ですでに商業規模の分離・精製事業を展開していることです。
2026年6月30日までの会計年度では、レアアース酸化物の生産量が約1万3,089トンとなりました。
このうちネオジム・プラセオジムの生産量は約7,260トンです。
売上高は約9億7,800万豪ドル、税引後利益は約2億2,200万豪ドルと報告されています。
これらは事業計画上の予測ではなく、実際の業績に基づく数値です。
2026年4~6月期のレアアース酸化物生産量は約3,481トンでした。
このうちネオジム・プラセオジムは約1,857トン、ジスプロシウムとテルビウムは合計約19トンです。
重希土類の生産量は軽希土類と比べて小規模にとどまっています。
Lynasは2025年にマレーシアでジスプロシウムとテルビウムの分離を開始しました。
2026年3月にはサマリウム酸化物の生産にも成功しています。
ガドリニウムについては2028会計年度の初めに生産を開始する予定です。
また、マレーシアでは年間最大5,000トンの重希土類原料を処理する設備拡張も進めています。
ただし、この5,000トンは処理する原料の能力であり、分離後に得られる重希土類酸化物の生産量ではありません。
今後の四半期決算ではジスプロシウムとテルビウムの生産量が増えるか、ガドリニウムの生産計画が予定通り進むかを確認する必要があります。
Lynasは日本の顧客向けにレアアースを長期供給する契約も結んでいます。
関連する企業開示資料をまとめた報告によると、ネオジム・プラセオジムについて年間5,000トンの供給枠が設定されています。
価格の下限は1キログラムあたり約110米ドルとされ、供給量を最大約7,200トンまで増やせる余地があります。
契約期間は2038年頃までと報告されています。
重希土類についても生産量の50%を供給する枠組みがあり、最大75%まで拡大できるとされています。
2026年3月には対象元素がジスプロシウムとテルビウム以外にも広がり、サマリウムやイットリウム、ルテチウム、ガドリニウムなどが追加されたと報告されています。
ただし、これらの契約条件は関連資料をまとめた報告に基づいており、本記事では契約書の原文を再確認していません。
報告された価格下限や供給枠が契約通りであれば、短期的な市況変動に左右されにくい収益基盤につながります。
一方、契約があっても鉱山や処理施設が予定通り稼働しなければ供給量は確保できません。
同社は2026年4~6月期に、水の再利用設備やマウント・ウェルド鉱山の精鉱品質、カルグーリー施設の処理工程などを改善課題として挙げています。
レアアースの分離・精製には薬品や電力、水などが必要です。
設備が完成していても、安定した稼働には継続的な改善が欠かせません。
Lynasは中国国外の供給網を支える重要な企業ですが、中国の生産規模を単独で代替できるわけではありません。
同社の2026年4~6月期の重希土類生産量は約19トンでした。
中国の輸出規制が厳しくなった場合でも、Lynasが短期間で不足分をすべて補えるわけではありません。
Aclara Resourcesはトロント証券取引所に上場するレアアース開発企業です。
同社はブラジルとチリでイオン吸着型粘土鉱床の開発を進めるとともに、米国ルイジアナ州で分離・精製施設の建設を計画しています。
2026年10月13日、同社はProject Dynamoと呼ばれる分離施設の基本設計が完了したと発表しました。
設計を担当したのはエンジニアリング会社のHatchです。
建設費の見積額は約4億9,400万米ドルで、Class 3と呼ばれる精度区分に該当します。
Class 3は初期の概算見積もりより詳細な設計に基づくものですが、最終的な建設費が確定したわけではありません。
同社は2027年第1四半期に現地工事を開始し、2028年後半に建設を完了する計画です。
ただし、工事開始には資金調達などの条件を満たす必要があります。
Aclaraが2026年4月に公表したClass 5段階の建設費見積額は約2億7,700万米ドルでした。
今回の約4億9,400万米ドルという見積額は、当初から約78%増加しています。
建設費が増えた背景には、施設の処理能力拡大や対象元素の追加があります。
同社によるとジスプロシウムとテルビウムの分離能力を約42%増やし、ブラジルとチリの両プロジェクトから原料を受け入れられる設計に変更しました。
さらにイットリウム、ガドリニウム、サマリウムを分離する工程も追加しています。
設備の規模が大きくなったため、建設費も増えた形です。
ただし、必要資金が増えたことに変わりはありません。
今後は建設資金を確保できるかが事業化の大きな課題となります。
Aclaraが公表した設計上の年間平均生産量は以下の通りです。
これらはブラジルのCarinaプロジェクトとチリのPencoプロジェクトがフル稼働し、計画通りに原料を供給する場合の数値です。
両プロジェクトは現時点で商業生産を開始していません。
Pencoについては環境面の承認を取得したとされていますが、建設に必要な資金はまだ確保されていません。
鉱山開発が遅れれば、ルイジアナ州の分離施設への原料供給も遅れる可能性があります。
そのため、年間200トンのジスプロシウム生産能力を、すでに確保された供給量として扱うことはできません。
Aclaraは米バージニア州ブラックスバーグに実証施設を保有しています。
2026年5月には、ネオジム・プラセオジム酸化物が目標とする品質基準を満たしたと発表しました。
ジスプロシウムとテルビウムについては2026年第4四半期中に目標品質を達成する計画です。
イットリウムの分離設備も設置が進められており、ガドリニウムとサマリウムの設備も同四半期中に導入する予定です。
実証施設で目標品質を達成できれば、分離技術の実用化に向けた進展となります。
ただし、実証規模での生産成功と商業施設での大量生産は異なります。
ルイジアナ州の新施設では、年間数百トン規模の重希土類酸化物を安定的に生産する必要があります。
Aclaraは分離施設の運営コストを、酸化物1キログラムあたり約38米ドルから約26米ドルへ引き下げたと試算しています。
約3分の1の削減です。
ただし、26米ドルには原料となるレアアース炭酸塩の調達費用が含まれていません。
そのため酸化物の販売価格から26米ドルを差し引いても、実際の利益率は計算できません。
同社はArgusの価格データを用いた事業評価で、税引後の内部収益率を約28%、投資回収期間を約2.6年と試算しています。
これらは会社が設定した前提条件に基づくプロジェクトの収益性評価です。
株式投資の期待利回りではありません。
建設費や原料供給、販売価格、回収率などが変われば試算結果も変化します。
元素ごとの設計上の回収率も異なります。
ジスプロシウムは約97.9%、テルビウムは約97.7%、サマリウムは約96.3%、ネオジム・プラセオジムは約98.9%です。
一方、イットリウムは約85.7%、ガドリニウムは約86.7%にとどまります。
目標純度はジスプロシウム、サマリウム、ネオジム・プラセオジムが99.5%、テルビウム、イットリウム、ガドリニウムが99.9%です。
いずれも設計上の目標であり、商業施設で達成された実績ではありません。
Aclaraは2026年9月4日、米国輸出入銀行から最大7億5,000万米ドルの融資に関する意向表明書を受け取ったと発表しました。
想定される融資期間は最長15年です。
ただし、この意向表明書に法的拘束力はありません。
実際の融資には詳細審査や引受審査、各種承認が必要です。
ルイジアナ州も約4,640万米ドルの優遇措置や支援策を提示していますが、こちらも制度上の条件を満たす必要があります。
したがって、約4億9,400万米ドルの建設資金が確保されたわけではありません。
同社はイットリウムなどの酸化物について購入候補企業との初期協議も進めています。
しかし、現時点では正式な長期購入契約は締結されていません。
Lynasには長期供給契約があり、Neoは永久磁石の商業出荷を開始しています。
これに対してAclaraは、施設建設と商業販売に向けた準備段階です。
今後は資金調達の確定、実証施設での品質目標達成、購入契約の締結が焦点となります。
3社はいずれも中国国外のレアアース供給網に関わっていますが、事業の進捗は大きく異なります。
Neo Performance Materials
永久磁石の商業出荷を開始しています。今後は出荷量や工場稼働率、追加プログラムの商業化が焦点になります。
Lynas Rare Earths
レアアース酸化物を商業規模で生産しています。重希土類の増産や設備拡張、既存施設の安定稼働を確認する必要があります。
Aclara Resources
分離施設の基本設計を完了した段階です。資金調達の確定、実証試験、建設開始、購入契約の締結が今後の課題となります。
Neoは顧客への出荷実績を持っていますが、磁石の出荷量や工場稼働率は十分に公表されていません。
Lynasは生産量と売上高、利益を公表しています。ただし、ジスプロシウムやテルビウムの生産量はまだ小規模です。
Aclaraは重希土類を中心とした施設を計画していますが、建設資金や原料供給の確保が課題となっています。
中国の輸出規制が厳しくなれば、中国国外のレアアースや永久磁石に対する需要が高まる可能性があります。
NeoやLynasはすでに商業事業を展開しているため、価格や顧客の調達方針の変化が業績に影響する可能性があります。
反対に規制が緩和されて中国からの供給が増えれば、中国国外の製品に支払われる価格上乗せが縮小するかもしれません。
Aclaraは商業施設がまだ完成していないため、短期的な輸出規制の変化が直接的な販売収入に与える影響は限定的です。
ただし、将来の販売価格や事業価値への期待が変われば株価が動く可能性はあります。
中国の輸出規制は3社に共通する要因ですが、実際の収益への影響は事業段階によって異なります。
レアアース関連株を評価する際には、企業がどの元素を生産しているのかも確認する必要があります。
EVなどで使用されるネオジム・鉄・ホウ素磁石には、主にネオジムとプラセオジムが使われます。
これらは軽希土類に分類され、永久磁石の主要な材料です。
一方、ジスプロシウムとテルビウムは重希土類に分類され、磁石の耐熱性を高めるために使用されます。
中国が2025年4月に導入した輸出規制は、こうした重希土類などを対象としています。
ネオジム・プラセオジムを生産している企業が、そのままジスプロシウムやテルビウムの供給不足を解消できるわけではありません。
Lynasは軽希土類を大量に生産していますが、重希土類の生産量はまだ小規模です。
Neoは重希土類の分離と永久磁石製造の両方に取り組んでいます。
Aclaraはジスプロシウムやテルビウム、イットリウムなどの分離能力を重視した施設を計画しています。
同じレアアース関連企業でも、対象元素と事業工程によって市場での役割が異なります。
中国国外でレアアースの供給能力を増やすには、採掘から永久磁石の製造まで複数の工程を整備する必要があります。
鉱山で採掘した鉱石は選鉱と化学処理を経て、分離施設で元素ごとに取り出されます。
分離した酸化物を金属や合金へ加工し、さらに成形・焼結して永久磁石を製造します。
完成した磁石は顧客の品質認証を取得してから量産供給へ進みます。
各工程には専用設備と技術、人材が必要です。
特に分離・精製は複雑な化学処理を伴い、中国国外で大規模に実施できる企業は限られています。
そのため、新たな鉱山の開発だけで中国への依存を短期間で減らすのは困難です。
Neoが商業出荷を開始したことは、永久磁石製造の分野で進展があったことを意味します。
Lynasは分離・精製を商業規模で実施しており、重希土類の生産拡大を進めています。
Aclaraは新たな分離施設の建設を目指していますが、事業化にはまだ時間が必要です。
中国国外の供給網を拡大するには、これらの工程が継続的につながることが欠かせません。
中国の輸出規制については、2026年11月10日が重要な日付となります。
これは2025年10月に発表された追加措置について、公告第70号に記載された停止期限です。
一方、米中間の貿易取り決めには2027年1月10日という期限が記載されています。
ただし、10月中旬時点で確認された文言では、レアアースの追加規制に関する停止期限が正式に変更されたとは判断できません。
今後、新たな中国商務省の公告が公表されれば、その内容を確認する必要があります。
2025年4月から続く7元素の輸出許可制度についても、変更の有無が焦点となります。
企業ごとに確認したい事項も異なります。
Neoは2026年末までに追加の磁石供給プログラムを商業生産へ移す計画です。今後は出荷量や稼働率が公表されるかが重要になります。
Lynasは重希土類の生産拡大を進めています。四半期ごとの生産量と設備拡張の進捗を確認する必要があります。
Aclaraは2026年第4四半期に実証施設でジスプロシウムとテルビウムの品質目標達成を目指しています。
さらに2027年第1四半期の建設開始に向けて、資金調達を確定できるかが課題です。
米国輸出入銀行の融資意向表明書は、融資契約そのものではありません。正式な契約や資金実行が確認されるまでは、建設資金を確保したと判断できません。
中国は世界のレアアース採掘量の約69%を占めています。さらに磁石向けレアアースの分離・精製と永久磁石製造では、2024年時点でそれぞれ約91%、約94%のシェアを持っていました。
中国国外で供給網を整備するには、鉱山開発だけでなく分離・精製施設と磁石工場を増やす必要があります。
今回取り上げた3社は、その異なる段階に位置しています。
Neo Performance Materialsはエストニアで永久磁石の商業出荷を開始しました。ただし、実際の出荷量や稼働率は十分に公表されていません。
Lynas Rare Earthsは中国国外で大規模なレアアース分離・精製事業を展開しています。2026年4~6月期のネオジム・プラセオジム生産量は約1,857トンでしたが、ジスプロシウムとテルビウムは合計約19トンです。
Aclara Resourcesは米国ルイジアナ州で約4億9,400万米ドルを投じる分離施設を計画しています。しかし、建設資金は確定しておらず、商業生産の開始もこれからです。
中国の輸出規制はレアアース市場の価格や供給に影響しますが、規制が厳しくなったからといって、すべての関連企業の業績が改善するわけではありません。
Neoでは磁石の出荷量、Lynasでは重希土類の生産量、Aclaraでは資金調達と建設の進捗が重要です。
今後の企業価値を判断する際には、中国の政策動向とともに、各社が公表する生産実績や事業計画の達成状況を確認する必要があります。
本記事のレアアース生産量に関する数値は、米国地質調査所の2026年版資料、国際エネルギー機関の統計および2026年10月12日付の資料に基づいています。
中国の輸出規制については、中国商務省の公告第18号と公告第70号、2026年9月28日の貿易取り決めに関する公表文書、10月の中国とEUの協議に関する情報を参照しています。
中国の2026年9月の輸出量は、ロイターが報じた税関データに基づいています。輸出額の増加率や米国向け磁石輸出量、一部の需給推計は別の市場レポートによるものです。
Neo Performance Materialsの商業出荷と設備拡張計画、Lynas Rare Earthsの生産実績と設備計画、Aclara ResourcesのProject Dynamoの基本設計および事業評価については、各社の2026年の公表資料などを参照しています。
Lynasの日本向け長期供給契約の一部条件は、企業開示資料をまとめた報告に基づいており、契約原文を再確認したものではありません。
Aclaraの建設費、生産量、回収率、内部収益率などは同社の設計や試算に基づく数値であり、商業生産の実績ではありません。
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Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターの市場動向を分析しています。金、銅、ウランなど幅広い資源を対象に、特にTSXV上場のジュニア鉱山会社に関するデータや企業動向を取り上げ、投資家に向けて情報を発信しています。