※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
2026年7月下旬、金価格は1月につけた5,500ドル超の高値から大きく調整し、1オンス4,000〜4,100ドル付近で推移しています。そうしたなか、ゴールドマン・サックスは2026年末までに金価格が4,900ドルに達するという強気の見通しを維持しています。
同社が重視しているのは、中央銀行による構造的な金需要が依然として強いことです。さらに、マクロ経済や地政学的な環境次第では、2026年後半に投資資金が再び金市場へ流入し、次の上昇相場につながる可能性があるとみています。
では、現在の4,100ドル前後から4,900ドルまで金価格を押し上げるには、何が必要なのでしょうか。本記事では、ゴールドマン・サックスの金価格予測と、その背景にある需要、今後の上昇要因、金鉱株への影響などを見ていきます。なお、本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言ではありません。
ゴールドマン・サックスは、現在の金相場に対して比較的強気な見方を示してきた大手投資銀行の一つです。
2026年末の目標価格を4,900ドルとしている主な理由は、中央銀行による旺盛な金購入が続くとの予想と、持ち合いや資金流出が続いた後に投資需要が回復する可能性です。
同社は、各国の中央銀行による購入がここ数年間、年間の鉱山生産量のかなりの部分を吸収してきた点を重視しています。この需要は短期的な価格変動を狙ったものではなく、外貨準備の分散、地政学リスクへの備え、相手方リスクを持たない資産への需要などを背景とした戦略的なものとみられています。
そのためゴールドマン・サックスは、中央銀行による購入が金価格の下値を支え、長期的な価格上昇の土台になると考えています。
また、欧米の投資家のポートフォリオに占める金の割合は、まだそれほど高くないと指摘しています。金ETFの保有量や現物投資需要は価格やマクロ環境によって変動してきましたが、投資が過熱しているといえる水準には達していません。
実質金利が安定または低下し、ETFや現物への資金流入が再び拡大すれば、金価格を押し上げる大きな材料になる可能性があります。
つまり、4,900ドルという目標は、中央銀行による構造的な需要が続き、さらに2026年後半に景気循環的な上昇要因が加わることを前提としたものです。
金融機関の予測は、経済指標や市場環境の変化によって修正されます。それでもゴールドマン・サックスが強気姿勢を維持している背景には、複数の傾向があります。
まず、2026年に入っても中央銀行による金購入は高い水準を維持しています。多くの中央銀行が今後も世界の金準備が増加すると予想していることも、長期的な需要を支える材料です。
また、主要市場では金価格が調整している局面でも現物需要が比較的底堅く推移しています。
一方、供給面では、鉱石品位の低下、新規鉱山開発に長期間を要すること、過去10年間の投資不足などによって、鉱山生産を急速に増やすことは難しい状況です。
こうした点から、ゴールドマン・サックスを含む一部の金融機関は、2026年1月の高値からの調整を金の強気相場が終わったサインではなく、上昇サイクルの途中で起きた調整と捉えています。
金価格が4,900ドルへ向かうためには、いくつかの材料が必要になります。
中央銀行による金購入
最も重要な構造的要因は、中央銀行による購入です。現在と同程度、あるいはそれ以上の買いが続けば、市場に出回る金の大部分を吸収し、投資需要が弱い局面でも価格の下値を支える可能性があります。
ETFと投資資金の回復
持続的な上昇相場には、金ETFなどへの投資資金の回帰も重要です。実質金利の低下、地政学リスクの高まり、財政の持続可能性への懸念などは、過去にも金への資金流入を促してきました。
ETF保有量が安定し、再び増加し始めれば、投資資金が金市場へ戻っている初期のサインになる可能性があります。
FRBの金融政策
FRBが金融緩和へ傾いたり、現在の引き締め局面が明確にピークを迎えたりすれば、利息を生まない金を保有する機会費用が低下します。また、米ドル安につながれば金価格には追い風となります。
反対に、高金利が長期間続くとの見方が強まれば、金価格の次の上昇は遅れる可能性があります。
地政学・金融システムのリスク
貿易政策を巡る不透明感、地域紛争、国際通貨体制への不安なども、金の安全資産・準備資産としての需要を支えています。
こうしたリスクが拡大または長期化すれば、金価格の次の上昇を加速させる可能性があります。
銀など他の貴金属の上昇
銀など他の貴金属が上昇すれば、貴金属市場全体への投資家心理が改善し、金への資金流入を促す可能性もあります。
これらの要因のいくつかが同時に発生し、テクニカル面でも上昇が確認されれば、4,900ドルへ向かう可能性は高まります。
2026年半ばの金価格は、年初の急騰後に持ち合い局面へ入っています。
4,000ドル付近では繰り返し買いが入り、下値支持線として意識されています。一方、4,200〜4,300ドル付近では上値を抑えられる場面があり、抵抗線となっています。
出来高やモメンタムの改善を伴って、この抵抗線を明確に上抜ければ、年末の4,900ドルを含む、より高い価格帯へ向かう可能性があります。
投機筋の買いポジションも以前の低水準から回復していますが、まだ極端に積み上がった状態ではなく、相場が上向けば追加の買いが入る余地があります。
ただし、テクニカル分析だけで特定の価格を保証することはできません。長期間レンジ相場が続くこともあれば、一度上抜けた後に再び下落する「ダマシ」が起きることもあります。
金需要のファンダメンタルズが長期的な背景を形成する一方、実際にいつ、どの程度上昇するのかはテクニカルな値動きにも左右されます。
金価格が4,900ドルまで上昇すれば、金鉱株にも大きな影響があります。
金の販売価格が上がれば、効率的な生産会社では利益率やフリーキャッシュフローが拡大し、配当、自社株買い、成長投資などに使える資金が増える可能性があります。
金鉱株には、金価格に対するレバレッジがあります。そのため、金価格が上昇する局面では金そのもの以上に株価が上昇する可能性がある一方、金価格が下落すれば損失も大きくなりやすい点には注意が必要です。
質の高い金鉱山会社には、いくつか共通する特徴があります。
こうした企業ほど、金価格の上昇を株主価値の増加につなげやすくなります。
カナダのTSXやTSXVには、大手・中堅の金生産会社からジュニア金鉱山会社、探査会社まで幅広い企業が上場しています。
ジュニア金鉱株や探査会社は、金価格上昇や探査成功によって大幅に評価が上昇する可能性があります。ただし、初期段階の企業の多くは商業生産まで到達せず、探査、資金調達、株式の希薄化などのリスクも高くなります。
そのほか、ロイヤルティ・ストリーミング会社などを通じて金価格へ投資する方法もあります。現物、ETF、生産会社、ジュニア企業などではリスクが異なるため、投資手段を分散することも重要です。
ゴールドマン・サックスが想定する中央銀行需要と潜在的な投資需要が続き、さらに景気循環的な上昇要因が加われば、4,900ドルという目標は達成可能と考えられます。
過去の金の強気相場でも、中間的な持ち合い局面を経て同程度の上昇率を記録したケースがあります。現在は鉱山供給の伸びが限定される一方、中央銀行需要が高いことも、金市場を支える材料です。
ただし、4,900ドルまで一直線に上昇するとは限りません。実質金利の上昇、米ドル高、安全資産需要を弱めるような投資家心理の改善などが起きれば、価格上昇が遅れたり、上値が抑えられたりする可能性があります。
4,900ドルはあくまで一定の条件がそろった場合の予測であり、確実に到達する価格ではありません。
長期的な金価格の上昇を支える要因も、ゴールドマン・サックスの見通しと基本的には同じです。
中央銀行が継続して金を購入することで、市場から一定量の金が吸収されています。また、世界の主要国では財政状況が急速に改善する兆しが乏しく、欧米の投資ポートフォリオに占める金の割合も、投資が飽和したといえるほど高くありません。
さらに、地政学的な分断や国際通貨システムの長期的な安定性を巡る懸念も、金需要を支えています。
こうした構造的な要因があっても、途中で大幅な価格調整が起きる可能性はあります。それでも、これまでの急落はより大きな長期上昇トレンドの中で発生してきたという見方があります。
現在、金への投資を検討する場合は、金融機関の強気な見通しだけでなく、短期的なリスクも考える必要があります。
数年間の投資期間を想定し、金をポートフォリオの分散手段や通貨価値の低下に対するヘッジとして考える投資家にとって、2026年初頭の高値を大きく下回る現在の水準は、以前より魅力的に見える可能性があります。
一度に投資するのではなく、一定額を定期的に購入することで短期的な価格変動の影響を抑える方法もあります。
一方、短期投資を考えている場合や大きな含み損に耐えにくい場合は、金利上昇圧力が弱まったことや、金価格が主要な抵抗線を上抜けたことを確認してから投資するという考え方もあります。
金そのものは利息を生まないため、株式などのリスク資産が好調な局面では相対的に低迷することもあります。
現物価格に連動する流動性の高い商品を中心に、質の高い金生産会社で価格上昇へのレバレッジを得て、リスク許容度が高い場合のみジュニア探査株を一部組み入れるなど、投資手段ごとの特徴を理解することが重要です。
金への投資にも重大なリスクがあります。
金価格は長期的な上昇相場の中でも大幅に下落することがあり、実質金利の上昇や米ドル高はこれまで何度も金価格への下落圧力となってきました。
地政学的な出来事も必ずしも金価格を上昇させるとは限らず、市場全体で現金化の動きが強まれば、一時的に金が売られる場合もあります。
金鉱株には、金価格の変動に加え、操業、事業地域、コスト上昇、経営などのリスクがあります。ジュニア金鉱株ではさらに、探査の失敗、資金調達、株式の希薄化などのリスクが高まります。
また、現物、ETF、鉱山株など、投資手段によって流動性、保管、保険、税制上の扱いも異なります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、投資元本の大部分または全額を失う可能性があります。
ゴールドマン・サックスが2026年末の金価格を4,900ドルと予測している背景には、中央銀行による継続的な需要と、投資資金が金市場へ戻る可能性があります。
現在の4,100ドル前後から4,900ドルへ上昇するには、こうした構造的な支援に加え、実質金利の低下、ETF需要の回復、地政学リスクの高まりなど、景気循環的な材料も必要になります。
ゴールドマン・サックスの見方に沿えば、数カ月から数年という時間軸での金価格の見通しは依然として強気です。ただし短期的には、金利、経済指標、市場心理などによって大きく変動する可能性があります。
金価格が実際に4,900ドルへ到達するかどうかは、これらの要因がどのように組み合わさるかによって決まります。金や金鉱株への投資を検討する場合は、長期的な支援材料だけでなく短期的なリスクも考慮し、適切なポジションサイズと投資対象の質を重視することが重要です。
【免責事項】
本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、証券または商品の購入・売却・保有の推奨、または取引の勧誘を目的とするものではありません。
金、金鉱株、カナダの金鉱株、ジュニア金鉱山会社などへの投資は価格変動が大きく、投資元本の大部分または全額を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
投資判断を行う前に、ご自身で十分なデューデリジェンスを行い、関連する開示資料を確認するとともに、必要に応じて金融・法律・税務の専門家へ相談してください。市場環境、金利、中央銀行の政策、地政学的な出来事などは急速に変化する可能性があります。著者および発行者は登録投資顧問ではありません。
Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。
金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。