※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
ゴールドマン・サックスは2026年の金価格見通しを一度5,400米ドルまで引き上げた後、4,900米ドルへ引き下げました。しかし、オプション市場による価格上昇の増幅や、中央銀行による構造的な金購入を背景に、5,400米ドルという水準は依然として市場で意識されています。こうした環境のなか、SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)は、低コストで金価格へのエクスポージャーを得る手段として改めて注目されています。
金は、ウォール街の精緻な予測でさえ短期間で古く見せてしまうほど、大きく動くことがあります。
2026年初め、ゴールドマン・サックスは、民間投資家によるポートフォリオ分散と中央銀行による継続的な金購入を理由に、2026年12月の金価格目標を1オンス5,400米ドルへ引き上げました。
その後、FRBの金融政策に対するより慎重な見方を反映し、年央には目標を4,900米ドルへ引き下げています。
しかし、2026年8月21日、金価格が週間で約5.5%上昇し、4,620~4,625米ドル付近で取引されるなか、ゴールドマン・サックスは再び、現在の4,900米ドルという予測を上回る可能性に言及しました。
同行は、オプション市場での取引が価格変動を機械的に増幅し、上方向にも下方向にも値動きを加速させる可能性があると指摘しています。
5,400米ドルへ引き上げ、4,900米ドルへ引き下げ、その後に再び上振れリスクを指摘するという一連の動きは、現在の金市場をよく表しています。
金価格の上昇には再び勢いがつき、安全資産への需要も高まっています。政府債務や財政赤字への懸念も依然として残っています。
そのなかで投資家が直面する現実的な疑問は、「金価格がさらに上昇すると考える場合、どのような方法で保有するのが効率的なのか」という点です。
そこで注目されるのが、SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)です。
GLDMの経費率は年間0.10%で、より規模の大きいSPDRゴールド・シェアーズ(GLD)と同じく現物金価格への連動を目指しています。一方、GLDの年間経費率は0.40%です。
長期投資家にとって、この差は小さくありません。金価格上昇によるリターンをより多く手元に残せるか、それとも手数料として支払い続けるかという違いになるためです。
ゴールドマン・サックスが2026年1月に金価格目標を5,400米ドルへ引き上げた背景には、個人投資家が金を一時的なヘッジではなく、政策の不確実性や財政拡大に備える長期的な資産配分として捉えるようになっているとの見方がありました。
中央銀行による金需要は長年にわたって高水準を維持し、金価格の下支えとなっています。さらに、欧米のETFへの資金流入や富裕層による現物金購入も、追加の需要を生み出しています。
その後、目標が4,900米ドルへ引き下げられたのは、マクロ経済見通しの調整によるものでした。
FRBが2026年に金融緩和へ動く可能性が低下すれば、利息を生まない金を保有する機会費用は相対的に高くなります。
ただし、ゴールドマン・サックスが最近、オプション需要や金価格が上方へオーバーシュートする可能性について言及していることは、同行が金を支える構造的な要因そのものを否定していないことを示しています。
中央銀行による金購入は依然として数年来のテーマです。地政学的リスクが高まった場合や、市場への不安が強まった場合には、安全資産としての金需要が再び高まる可能性があります。
実質金利と金価格には長期的に逆相関の関係がみられ、インフレと金の関係も、短期的には変動するものの長期的なテーマとして残っています。
その意味で、5,400米ドルという水準は一種の心理的な節目になっています。市場参加者が以前の目標価格を意識し、オプション取引もこうしたキリの良い価格帯に集中することで、過去に示された目標がその後のポジション形成にも影響する可能性があります。
金投資の目的が、資産保全と将来的な値上がり益を期待して金を保有することであれば、どの投資手段を選ぶかも重要になります。
GLDは、非常に大きな取引量と充実したオプション市場を持ち、流動性の面では大きな強みがあります。一方、年間経費率は0.40%です。
GLDMは後から設定されたETFで、1口あたりの金保有量もGLDより小さく設計されています。GLDMは約100分の1オンス、GLDは約10分の1オンス相当の金へのエクスポージャーを提供し、GLDMの年間経費率は0.10%です。
どちらも現物金を保有し、LBMA金価格への連動を目指す仕組みです。そのため、長期的なパフォーマンスの差は主に手数料の違いから生じます。
例えば10万米ドルを投資した場合、年間の手数料差は約300米ドルになります。単純計算では、10年間で約3,000米ドルの差です。複利効果を考慮すれば、長期的な差はさらに大きくなる可能性があります。
課税口座では税制を考慮する必要がありますが、手数料面でのGLDMの優位性そのものは変わりません。
GLDMとGLDの比較で重要なのは、どちらが金価格を正確に追跡するかというより、投資家がGLDの高い流動性やブランド認知度に対して、どれだけ追加コストを支払う価値を感じるかという点です。
長期保有を目的とし、極端に大規模な取引を必要としない投資家にとっては、GLDMの低コストと十分な流動性が、より効率的な選択肢となる場合があります。
GLDMと現物金を比較すると、異なるメリットとデメリットがあります。
現物金はETFの構造に伴うリスクを避けることができます。一方で、保管、保険、真贋確認、売買時の流動性など、実際に保有することによるコストや手間が発生します。
GLDMでは年間0.10%の経費率が必要ですが、証券市場で売買できるため高い流動性があり、少額から保有でき、個人で金を保管する必要もありません。
どちらが常に優れているというわけではありません。投資期間、口座の種類、保管や売買に伴う手間をどこまで許容できるかによって、適切な選択肢は異なります。
GLDMの仕組みは比較的シンプルです。
GLDMはNYSE Arcaに上場しており、通常の株式と同じように証券口座を通じて売買できます。
投資家が保有するGLDMの持分は、信託が保有する現物金への部分的な権利を表します。そのため、純資産価値は経費率による小さな差を除き、基本的に金価格に連動します。
レバレッジ、先物のロールオーバー、アクティブ運用などは行われません。
ファンドの役割は、現物金を保有し、できるだけ低いコストで金価格への連動を提供することです。
このシンプルさはGLDMの強みですが、同時に限界でもあります。金価格が上昇すればその恩恵を受けますが、金価格が下落すれば同じように価値も下落します。
ゴールドマン・サックスが金に対して強気な背景には、公的部門による継続的な需要、より構造的になりつつある民間投資家の需要、そして財政拡大や地政学的不確実性がすぐには解消しそうにないという見方があります。
金価格目標を一度引き下げた後も、同行はポジショニングやオプション市場の動きによる上振れリスクを指摘しています。
GLDMが良い金ETFかどうかについては、GLDより低い手数料で現物金へのエクスポージャーを得たい投資家にとって、効率性の高い選択肢の一つと考えられます。
ただし、低コストであることと、投資リスクが低いことは同じではありません。
長期的な金の強気相場が続いたとしても、その途中では数か月にわたる大きな調整が発生する可能性があります。そのため、ポジションの大きさやポートフォリオ全体に占める割合を考えることが重要です。
GLDMを利用する際には、課税口座なのか退職口座なのか、どれくらいの期間保有する予定なのか、ポートフォリオ全体のリスクにどの程度影響するのかを確認し、必要に応じてリバランスを行うことが重要になります。
金価格は数か月で20%以上下落することもあり、その場合GLDMも連動して下落します。
金利と金価格の関係も常に一定ではありません。FRBの利下げが金価格を支える傾向はありますが、毎回同じように反応するとは限りません。
中央銀行による金購入が減速する可能性もあります。また、投資家のリスク選好が強まり、安全資産への需要が低下すれば、金価格の下押し要因となります。
これまでの金の強気相場でも、大きな上昇と急激な下落の両方が発生してきました。
ETFの市場価格が、一時的に純資産価値より高いプレミアム、または低いディスカウントで取引される場合もあります。ただし、GLDMでは通常、その差は比較的小さくなっています。
また、経費率がどれほど低くても、高値圏で購入してしまうリスクを防ぐことはできません。
現在の金市場で重要なのは、どの金融機関が2026年末の金価格を正確に予測できるかということだけではありません。
価格上昇の勢いが再び強まり、金ETFへの資金流入が目立ち始め、複数回の予測修正があってもなお、中央銀行や民間部門による構造的な需要が残っていることが重要です。
こうした環境における実践的な課題は、長期的な金価格上昇への見方を、できるだけ低いコストでポートフォリオに反映させる方法を選ぶことです。
GLDMは、この問いに対して非常にシンプルな選択肢を提供しています。GLDと同様に現物金へのエクスポージャーを得ながら、年間の保有コストを大幅に抑えることができます。
最終的に金価格がゴールドマン・サックスが以前示した5,400米ドルへ達するのか、それとも別の価格帯で落ち着くのかは、市場が決めることになります。
一方、どの投資手段を選ぶのかは投資家自身が決められます。長期投資家にとっては、保有コストを抑えること自体が、投資効率を高める重要な要素となります。
【免責事項】
本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、推奨、または証券の売買を勧誘するものではありません。
金、GLDMやGLDを含む金ETF、その他の関連投資には、元本損失の可能性を含む大きなリスクがあります。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
経費率、保有資産、市場データは今後変更される可能性があります。投資判断を行う前に、関連する目論見書を確認し、自身の財務状況やリスク許容度を考慮したうえで、必要に応じて資格を有する財務・税務・法律の専門家に相談してください。
本記事に記載された予測や市場に関する見解は、2026年8月21日時点の公開情報に基づいており、その後変更される可能性があります。
Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週の「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を提供しています。市場のトレンドを捉え、複雑な市場変動をTSXV上場のジュニア鉱山会社に関する分かりやすい洞察へとまとめています。
毎週の記事では、金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、データに基づく視点と投資機会を見極める分析を提供しています。変化の激しいジュニア鉱山業界を理解するうえで、投資家に役立つ情報を発信しています。