JPモルガンは、金鉱株にはまだ成長の余地があると述べている。投資家はどの銘柄を調査すべきか?

September 16, 2026

※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。

JPモルガンは、金鉱株には依然として上昇余地があるとの見方を示しています。同行が新たに公開したグローバル金鉱株ダッシュボードは、5地域・20銘柄以上、合計時価総額約7,000億米ドルを対象としています。ただし、これは特定の金鉱株を推奨するものではありません。重要なのは、金価格だけでなく、生産コストやキャッシュフロー、負債、事業地域などから各企業を比較することです。

2026年9月15日、JPモルガンは金鉱業セクターにはまだ上昇余地があるとの見方を示しました。

その分析に用いられたのが、同行初となるグローバル金鉱株ダッシュボードです。EMEA(欧州・中東・アフリカ)、オーストラリア、中国、北米、ラテンアメリカの5地域から20銘柄以上を対象とし、合計時価総額は約7,000億米ドル、年間生産量は合計約3,500万オンスに達します。

分析には株式部門だけでなく、中央銀行による金購入やETFへの資金流入などを分析する商品部門、ファンドのポジションを分析するデリバティブ部門も関わっています。

企業評価には、EV/EBITDA、フリーキャッシュフロー利回り、配当利回り、レバレッジ比率、AISC(全維持費)、金換算生産量、成長率などが用いられました。

JPモルガンが示したのは、金鉱株が大きく上昇した後でも、金価格との比較では依然として割安感が残っている可能性があるという見方です。ただし、これは調査結果であり、特定の銘柄を買うよう推奨するものではありません。

金価格は一時1オンスあたり4,600米ドルを超えた後、4,270~4,300米ドル付近で推移しています。米10年国債利回りは9月15日に5.04%を記録しました。

一方、NYSE Arca金鉱株指数は、3月から大きく下落した後、8月に約33%上昇しました。これは同月の金価格の上昇率の3倍以上です。

金鉱株には金価格に対するレバレッジが働くため、金価格の上昇局面では大きな利益を得られる可能性がある一方、下落局面では株価がより大きく下落する可能性もあります。

本記事では、JPモルガンの分析をどのように読み解けばよいのか、そして金鉱株を調査する際に何を確認すべきなのかを解説します。

投資家は今、金鉱株を買うべきなのか?

「今、金鉱株を買うべきなのか」という疑問を持つ投資家は少なくありません。しかし、その前に考えるべきことがあります。

それは、投資したいのが金そのものなのか、それとも金を生産する企業なのかという点です。

金そのものへの投資では、基本的に金価格の変動が投資成果を左右します。一方、金鉱株への投資は、金を採掘・生産する企業への投資です。

鉱山会社の業績は金価格だけでは決まりません。ディーゼルなどのエネルギーコスト、鉱石品位、許認可、生産量など、さまざまな要因に左右されます。

JPモルガン・プライベートバンクは別の2026年の見通しで、金価格について強気の姿勢を維持し、1オンスあたり6,000~6,300米ドルという予想を示しています。

ただし、これはあくまで金価格の見通しであり、鉱山会社のNAV(純資産価値)を示すものではありません。

金価格が予想通り上昇し、生産コストが一定に保たれれば、鉱山会社のキャッシュフローは金価格以上のペースで拡大する可能性があります。これが金鉱株の営業レバレッジです。

一方、金価格が下落してもディーゼルなどのコストが高止まりすれば、同じレバレッジが逆方向に働き、利益率を大きく圧迫する可能性があります。

GDXを構成する大手金鉱会社のAISCは、2026年半ば時点のガイダンスで1オンスあたり1,700米ドル台半ばとなっています。金価格が4,300米ドルであれば十分な利益余力がありますが、3,000米ドルまで下落すれば、その余力は大幅に縮小します。

また、現在はFRBの金融政策も重要な材料です。FRBのタカ派的な姿勢によって金鉱株が下落する可能性があります。

実際、8月には金価格が下落したにもかかわらず、金鉱株は約33%上昇しました。金価格と金鉱株は常に同じ方向へ動くわけではありません。

金鉱株へ投資するのであれば、投資額を考える前に、AISC、埋蔵量と鉱山寿命、事業地域の税制、そして金価格が20%下落した場合に企業へどのような影響が出るのかを確認する必要があります。

JPモルガンは金鉱株の何を比較しているのか?

JPモルガンのダッシュボードは、複数の金鉱株を比較するためのツールです。

重要なのは、単に「金鉱株が上昇しているか」ではありません。大幅な上昇を経た後でも、キャッシュフロー利回りや成長性からみて投資対象としての魅力が残っているのかを比較することです。

JPモルガンは、主に以下のポイントを比較しています。

現物価格と金価格予測に基づく企業価値

現在の金価格と将来の金価格予測では、鉱山会社の評価は大きく変わります。金価格が1オンスあたり6,000米ドルになった場合にしか割安に見えない企業は、現在の価格では必ずしも割安とはいえません。将来の金価格上昇に大きく依存している可能性があります。

フリーキャッシュフロー利回りと配当利回り

鉱山事業から実際にどれだけの現金を生み出しているのか、そのうちどれだけが株主へ還元されているのかを確認します。また、金価格が下落した場合にも配当を維持できるのかを判断するには、レバレッジ比率も重要です。

AISCと生産量

AISCが1オンスあたり1,500米ドルのカナダやオーストラリアの低コスト露天掘り鉱山と、2,200米ドルの高コスト地下鉱山では、金価格が同じでも収益性は大きく異なります。

また、現在の生産量と将来の成長計画を分けて考える必要があります。2029年に予定されている増産は、2026年のキャッシュフローには貢献しません。

投資家のポジション

すでにデリバティブ市場で鉱業株のロングポジションが大きく積み上がっている場合、その後の上昇余地は小さくなる可能性があります。

JPモルガンのダッシュボードは、こうした違いを比較するためのツールです。単に「金鉱株にはまだ上昇余地がある」という見出しだけで判断するのではなく、企業を絞り込むための材料として活用することが重要です。

投資家はどの金鉱株を調査すべきか?

銘柄を選ぶ際には、最近の株価上昇率ではなく、まずビジネスモデルの違いを見る必要があります。

大手金鉱会社

Agnico Eagle Mines(アグニコ・イーグル・マインズ)やBarrick Mining(バリック・マイニング)は、カナダを代表する大手鉱山会社です。Newmont(ニューモント)は米国を代表する大手企業で、Kinross Gold(キンロス・ゴールド)やAlamos Gold(アラモス・ゴールド)も主要な金生産会社に含まれます。

こうした企業では、埋蔵量、生産コスト、配当政策などを企業資料から確認できます。

ただし、大手企業であっても埋蔵量を補充できなければ、長期的には生産基盤が縮小します。金価格が高騰している時期ほど、将来の埋蔵量を確保できているかを確認することが重要です。

ストリーミング・ロイヤルティ企業

Wheaton Precious Metals(ウィートン・プレシャス・メタルズ)やFranco-Nevada(フランコ・ネバダ)は、一般的な鉱山会社とはビジネスモデルが異なります。

これらの企業は鉱山を直接運営するのではなく、鉱山会社へ資金を提供する代わりに、将来生産される金属を一定の条件で取得する権利などを保有します。

そのため、ディーゼル価格などの操業コストによる直接的な影響は一般的な鉱山会社より小さくなります。一方、契約先の鉱山で探査や開発が失敗したり、契約先企業に問題が生じたりするリスクがあります。

鉱山を直接運営するリスクを抑えながら、金属価格の上昇による恩恵を狙う場合に調査対象となる企業です。

地域による違い

JPモルガンのダッシュボードが5地域を対象としているのは、地域によって鉱山会社を取り巻く条件が異なるためです。

オーストラリアやEMEAの銘柄が常にTSXと同じ動きをするわけではありません。中国上場の金生産会社には独自の政治・上場リスクがあり、ラテンアメリカの鉱山には異なる税制や地域社会との関係に伴うリスクがあります。

カナダの金鉱株

カナダの金鉱会社は流動性が高く、北米の投資家が金鉱業セクターへ投資する代表的な手段となっています。

ただし、流動性が高いことと安全性が高いことは同じではありません。 流動性の高い大型銘柄でも、利上げなどのニュースによって短時間で8%下落する可能性があります。

ジュニア金鉱株

ジュニア企業がJPモルガンの約7,000億米ドル規模の分析対象に含まれていないのには理由があります。

ジュニア探鉱企業の企業価値は、掘削結果などに大きく左右されます。JPモルガンが「上昇余地がある」としたのは、上場している生産会社や開発会社を中心とするセクターであり、株価20セント程度の小規模な探鉱企業を指しているわけではありません。

「最も優れた金鉱株」を一律に決めることはできません。重要なのは、金価格が4,600米ドルのときだけでなく、3,800米ドルまで下落した場合でも、その企業のAISC、事業地域、バランスシートを評価できるかどうかです。

金鉱株の割安感はまだ残っているのか?

金鉱株は長年、金価格に対して出遅れていました。しかし、2026年8月には状況が大きく変化しました。

Bloombergによると、金鉱株指数は8月、少なくとも1994年以降で最も高い月間パフォーマンスを記録しました。また、GDXへの月間資金流入も2月以来の高水準となりました。

この急速な上昇を受け、「簡単に得られる上昇余地はすでになくなった」とみる投資家もいます。

一方、JPモルガンは、現在の金価格を前提として株価とキャッシュフローを比較すれば、依然として割安感が残っているとの見方を示しています。

この2つは必ずしも矛盾しません。

金鉱株のバリュエーション倍率が前回のサイクルのピークを下回っている一方で、株価自体は1カ月前より30%高いという状況はあり得ます。

重要なのは、JPモルガンがダッシュボードを公開したから金鉱株が割安なのではないということです。ディーゼル価格や税負担が上昇した場合でも、今後3年間に生み出すフリーキャッシュフローが現在の企業価値に見合うかどうかを確認する必要があります。

そのため、投資家は第2・第3四半期のコスト見通しや維持設備投資、企業が余剰資金をM&Aに使うのか、自社株買いに使うのかなどを確認する必要があります。

2026年半ば時点で、GDXを構成する大手金鉱会社はグループ全体で400億米ドルを大きく上回る現金を保有しています。金鉱会社には、こうした資金を新たな金資産の取得や株主還元に使う選択肢があります。

ただし、金価格が高い局面で行われるM&Aでは、買収先企業の埋蔵量不足を補うために、買収側の株主が高いコストを負担する可能性もあります。

金鉱株に残るリスク

JPモルガンが金鉱株には上昇余地があるとの見方を示していても、投資リスクがなくなるわけではありません。

米10年国債利回りが5%に達する環境、米ドル高、FRBによる利上げと高金利の長期化、原油・ディーゼル価格の高止まり、AISCの上昇、資源ナショナリズムなどは、いずれも金鉱会社にとってリスクとなります。

さらに、金価格だけが過去の平均へ戻る一方、生産コストが高止まりすれば、鉱山会社の利益率は大きく縮小する可能性があります。

カナダの金鉱株もこうしたリスクと無縁ではありません。市場で売買しやすいという流動性の高さがあるだけで、それ自体がリスクをなくすわけではありません。

結論

JPモルガンは、金鉱株には依然として上昇余地があり、大幅な株価上昇を経た後でもバリュエーションには投資機会が残っている可能性があるとの見方を示しています。

同行のグローバル金鉱株ダッシュボードは、5地域・20銘柄以上、合計時価総額約7,000億米ドルを対象としており、金鉱会社を比較するための有力な材料となります。

ただし、「金鉱株にはまだ上昇余地がある」という言葉そのものを買いのシグナルとして使うべきではありません。

大手生産会社では埋蔵量や生産コストを、ストリーミング企業ではコスト構造や契約先を確認する必要があります。ジュニア探鉱企業については、今回のJPモルガンの分析とは性質が異なることにも注意が必要です。

まず、自分が投資したいのは金そのものなのか、金を生産する企業なのかを明確にすることが重要です。そのうえで、短期的なFRBの金融政策による市場変動だけに左右されず、それぞれの企業のキャッシュフローやコスト、事業地域、バランスシートを分析する必要があります。

【重要なお知らせ】

JPモルガンの「上昇余地」に関するコメントおよびダッシュボードの説明は、2026年9月15日に公開されたグローバル金鉱株ダッシュボード(Proactive Investorsおよび関連レポート)の内容に基づいています。

JPモルガン・プライベートバンクが提示する金価格帯は、同部門が公表した見通しであり、変更される可能性があります。市場水準は2026年9月中旬時点のものであり、取引ごとに変動します。

企業名は調査のための例として掲載されており、推奨ではありません。本記事は投資助言ではなく、金鉱株の売買を推奨するものでもありません。投資に関するご相談は、資格を有するアドバイザーにご相談ください。

著者および発行者は、本記事に基づいて行われた行為について一切の責任を負いません。

著者:Ben McGregor

Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週更新される「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターを分析しています。金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、市場動向やTSXV上場のジュニア鉱山会社について、データに基づいた分析を提供しています。

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