マイケル・ペント氏が「金鉱株は絶好の買い時」と考える理由

July 5, 2026

※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。

エコノミスト兼ポートフォリオマネージャーのMichael Pento(マイケル・ペント)氏は、米国経済の成長鈍化とFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げの可能性を背景に、金と金鉱株に強気の見方を示しています。

ペント氏はSoar Financiallyのポッドキャストで、雇用統計の悪化などからFRBの次の動きは利上げよりも利下げになる可能性が高く、これが貴金属、特に金鉱会社にとって強い追い風になると指摘しました。

米国の成長鈍化、カナダドルへの下落圧力、金価格の高値維持が重なれば、TSX(トロント証券取引所)に上場する優良な金生産会社や開発会社が大きな恩恵を受ける可能性があります。

雇用統計の悪化でFRBの利下げ期待が高まる

ペント氏は、最近の米国の非農業部門雇用者数が予想を下回り、過去の数字も下方修正されたことに注目しています。

失業率はわずかに低下したものの、その背景には労働力参加率の低下があります。個々の雇用統計は変動しやすいものの、雇用の伸びそのものが鈍化していることは、米国経済全体の減速と一致していると指摘しています。

年初には市場で複数回の利下げが予想されていましたが、地政学的な緊張による原油価格の急騰でインフレ率が一時的に上昇し、一部では約4.2%に達しました。その結果、FRBの金融政策をめぐってタカ派的な見方も強まりました。

しかし、その後エネルギー価格が下落するにつれて、基調的なインフレ圧力も弱まっています。ペント氏は、経済成長とインフレの勢いがともに鈍化する「ディスインフレ」の方向に進んでいると考えています。

この環境でFRBがさらに利上げすれば、景気後退、場合によってはそれ以上の深刻な経済悪化を招く可能性があります。そのためペント氏は、FRBが一時的なエネルギー価格上昇への対応より、経済成長を支えることを優先すると見ています。

金鉱株が魅力的になる4つの理由

ペント氏は金への投資を積極的に増やしており、久しぶりにGDXやGDXJなどを通じて金鉱株への投資も拡大しています。

その背景には、金価格の上昇だけではなく、金鉱山会社の利益率そのものが改善する可能性があります。ペント氏は、金鉱株が魅力的になる理由として主に4つを挙げています。

  1. 金価格の上昇とコスト低下

景気減速によって名目金利と実質金利が低下すれば、一般的に金価格には追い風となります。

その一方で、鉱山会社にとって主要な投入コストの一つであるエネルギー価格は低下しています。つまり、販売する金の価格が高くなりながら、生産に必要なコストが低下するという好条件が生まれる可能性があります。

  1. 営業レバレッジによる利益率の拡大

鉱山会社は鉱山や設備の維持などに多額の固定費を抱えています。

そのため、金価格が上昇して売上が増える一方、エネルギーなどの投入コストが下がれば、売上の増加以上に利益が大きく伸びる可能性があります。これが金鉱株の持つ営業レバレッジです。

  1. 魅力的なバリュエーション

ペント氏によると、多くの金鉱株はPER(株価収益率)14~15倍程度で取引されている一方、売上高と利益には明確な成長が見られます。

成長が期待できるにもかかわらず株価評価がそれほど高くないという組み合わせは、現在の株式市場では珍しいとしています。

  1. リスク回避局面で大きな上昇余地がある

金は、通貨価値の低下や地政学的な不確実性、政策ミスなどに対するヘッジとして利用されています。

金鉱株は、こうした金価格の値動きを増幅する傾向があります。そのため金価格が大きく上昇する局面では、金そのもの以上のリターンを得られる可能性があります。

ペント氏はこうした見方から、銀を売却して金と金鉱株への投資を増やしています。ディスインフレ環境では、産業需要の影響を強く受ける銀よりも、通貨的な性質を持つ金の方が好調になる可能性があると考えているためです。

米国の資産バブルは終盤に近づいている可能性

ペント氏は、現在の米国経済について厳しい見方を示しています。

同氏によれば、米国経済は歴史的に見ても金融化とレバレッジが極端に進んでいます。例えば、株式市場の時価総額をGDPと比較した指標は約235%に達しており、長期平均の約90%を大幅に上回っています。

住宅、信用、株式市場はいずれも、長年にわたる積極的な金融緩和によって膨張してきました。FRBのバランスシートも2007年以降、数兆ドル規模に拡大し、マネーサプライの増加を促した結果、それが最終的に物価上昇につながったとペント氏は考えています。

こうした資産価格の上昇は、資産を多く保有する上位20%の人々には恩恵をもたらした一方、残りの80%にとって住宅購入などを難しくする「K字型」の経済構造を生み出したとしています。

ペント氏は今後、信用市場の悪化から景気後退へ向かい、十分な政策対応がなければさらに深刻な経済状況に陥る可能性があると予想しています。その後、金融緩和によって再びインフレ圧力が高まる可能性もあります。

ただし、2000年や2008年のようにFRBが金融緩和によって市場を支える「FRBプット」は、今回は以前ほど有効ではない可能性があります。すでに債務残高が高く、政府財政にも大きな制約があるためです。

こうした環境では、金のような実物資産や、それを生産する金鉱会社が、資産保全と収益機会の両面からポートフォリオの重要な構成要素になるとペント氏は考えています。

カナダの金鉱株が有利になる4つの理由

カナダの金鉱業界は、ペント氏が予想するマクロ経済環境から大きな恩恵を受ける可能性があります。

特に、カナダドルと米ドルの関係や国内の鉱山資産、エネルギーコストなどを考えると、カナダの金鉱会社には複数の追い風があります。

  1. 為替が追い風になる可能性

米国との生産性や経済成長率の差などからカナダドルが下落すれば、米ドル建てで取引される金から得られるカナダドル建ての収益が増加します。

そのため、TSXに上場するカナダの金鉱会社にとって、カナダドル安は収益面でプラスに働く可能性があります。

  1. カナダ国内の鉱山資産には強みがある

カナダの多くの金鉱山は、比較的安定した法域、優れたESGへの取り組み、北米の資本市場へのアクセスといったメリットを持っています。

こうした条件は、世界的に地政学的なリスクが高まるなかで、カナダの鉱山会社の競争力につながる可能性があります。

  1. 金価格上昇とコスト低下を同時に享受できる

主要な投入コストであるエネルギー価格が低下する一方、カナダドル建ての金価格が上昇すれば、効率的に鉱山を運営する企業の利益率は大きく改善する可能性があります。

金価格とコストの差が拡大するほど、金鉱山会社の利益には大きなプラスになります。

  1. 金鉱株の調整で投資機会が生まれている

2026年に金価格が上昇した後、多くの金鉱株は調整局面に入りました。

その結果、NAV(純資産価値)や利益に対して株価が割安になった企業もあり、以前より魅力的な価格で投資できる可能性があります。

特にAISC(全維持費)が低く、健全なバランスシート、長い鉱山寿命、成長プロジェクトを持つ優良企業は、金価格上昇と金利低下が同時に起きる環境で高いパフォーマンスを発揮する可能性があります。

また、GDXやGDXJなどの金鉱株ETFを利用すれば、個別企業特有のリスクを抑えながら、金鉱業界全体の値動きに投資することもできます。

ペント氏が考えるポートフォリオ戦略

ペント氏は、現在のように経済環境が大きく変化する可能性がある局面では、特定の資産配分に固執するのではなく、状況に応じて柔軟にポートフォリオを変えることが重要だと考えています。

現在のポジショニングでは、主に次のような方針を取っています。

  • 金と金鉱会社への配分を増やす
  • 値動きが比較的小さく、配当を支払う株式や海外投資を優先する
  • 当面は短期債を保有し、景気減速によって長期金利が低下した場合には長期債へ移行できるようにする
  • AIや半導体など、投資家が集中しているテーマを単純に追いかけず、技術的な成長と経済環境への耐性の両方を持つ企業を選ぶ

ペント氏は、株式60%・債券40%という従来型の「60/40ポートフォリオ」では、現在の極端な株価水準や金融政策の制約に十分対応できないと考えています。

そのため、ディスインフレやスタグフレーションなどの環境で強い資産へ柔軟に資金を移す、アクティブな運用が重要だとしています。

金鉱株には「割安・利益成長・マクロ環境」という追い風

ペント氏の分析では、長期間にわたる金融緩和によって生まれた米国の資産バブルは、終盤に近づいている可能性があります。

労働市場の悪化は景気減速の早期警告となっており、FRBが今後利下げや金融緩和へ向かえば、金価格には追い風となります。

こうした環境において金鉱株は、比較的割安なバリュエーション、高い営業レバレッジ、そして金利低下や金融緩和というマクロ環境との相性の良さを同時に備えています。

カナダの鉱業投資家にとっては、さらにカナダドル建て金価格の上昇や投入コストの低下が加わることで、優良な金生産会社や開発会社の利益成長と株価の再評価につながる可能性があります。

ただし、この投資機会が長期間続くとは限りません。

金鉱株の多くは、サイクル初期の上昇後に調整局面へ入っています。ペント氏の予想するマクロ経済環境の変化が市場全体に認識される前であれば、現在の調整局面がポジションを構築・追加するチャンスになる可能性があります。

一方で、このシナリオはあくまでペント氏の見方に基づくものです。実際の経済や金融政策が想定とは異なる方向へ進めば、金や金鉱株の価格も大きく変化する可能性があります。

【免責事項】

本記事は、Soar Financiallyのポッドキャストで行われたマイケル・ペント氏へのインタビューに基づいており、教育および情報提供のみを目的としています。投資助言を構成するものではありません。

金鉱株は値動きが非常に大きく、商品価格の変動、操業上の問題、地政学的要因、金融政策の変更など、重大なリスクがあります。

投資判断を行う前に、ご自身で十分なデューデリジェンスを行い、必要に応じて資格を持つ金融専門家にご相談ください。

著者:Ben McGregor

Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。

金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。

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