※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
2026年10月17日|Ben McGregor
米国の大手テクノロジー企業が、データセンター向けの重要鉱物を確保するため、鉱山会社への出資や長期購入契約を検討しています。
10月15日、英資源大手アングロ・アメリカンのダンカン・ワンブラッド最高経営責任者(CEO)は、テクノロジー企業から鉱物資源の安定調達に向けた強い関心が寄せられていると明らかにしました。
ただし、今回の協議で新たな出資契約が成立したわけではありません。また、主に話題となっているのはデータセンターで大量に使用される銅です。
レアアースも重要鉱物の一つですが、銅の調達を目的とした協議が、そのままレアアース関連企業への投資につながるとは限りません。
実際に契約が成立している事例を見ると、Amazonは銅の供給契約や環境価値証書の実証事業を進めています。一方、Appleは2025年に米MP Materialsとの間で5億米ドル規模のレアアース磁石購入契約を発表しました。
企業が関心を示している段階と、実際に契約を締結した段階では、投資判断に必要な情報が異なります。
本記事では、テクノロジー企業による重要鉱物の調達事例を整理したうえで、MP Materials、Lynas Rare Earths、Neo Performance Materials、Aclara Resources、Ucore Rare Metalsの5社を比較します。
アングロ・アメリカンのワンブラッドCEOは、ロンドンで開催されたフィナンシャル・タイムズの金属・鉱業サミットで講演しました。
同氏によると、テクノロジー企業は将来の鉱物資源を確保するため、鉱山会社への出資や長期購入契約を検討しています。
供給不足への懸念から、企業の関心は高まっているといいます。
しかし、ワンブラッドCEOは新たな出資契約がまだ成立していないことも明らかにしました。
報道では協議相手となる企業名も公表されていません。
別の報道ではMicrosoftなどが原材料への直接的なアクセスを検討する企業として挙げられていますが、今回の協議で同社が契約を締結したと確認されたわけではありません。
アングロ・アメリカンは銅事業を重視する総合資源会社です。同社が進めるTeckとの統合計画も銅事業の拡大に関わっています。
両社は中国当局の承認などを条件に、2027年3月までの統合完了を目指しています。
今回の発言をレアアース関連株の材料として評価するには、まずテクノロジー企業がどの金属を必要としているのかを確認する必要があります。
テクノロジー企業による重要鉱物の調達は、すでに一部で始まっています。
ただし、実際に金属を購入する契約と、金属の生産に伴う環境価値を取得する契約は異なります。
2026年1月、Rio TintoはAmazon Web Services(AWS)との間で2年間の銅供給契約を締結しました。
対象となるのは、米アリゾナ州のJohnson Camp鉱山で生産される銅カソードです。
同鉱山ではRio TintoのNuton技術が使用されています。微生物と酸を利用して鉱石から銅を回収するバイオリーチング技術です。
生産された銅は、Amazonの米国内データセンター向け部品を製造する企業に供給されます。
Rio TintoはJohnson Campプロジェクトについて、4年間で約1万4,000トンの銅を生産する見通しを示しています。
ただし、これはプロジェクト全体の生産見通しであり、Amazonが全量を購入するという意味ではありません。
契約期間も2年間に限られています。
今回の契約は、テクノロジー企業が実際に銅の供給を確保した事例です。一方、その規模は世界のデータセンター建設需要と比べると限定的です。
また、契約対象は銅であり、レアアース酸化物や永久磁石ではありません。
2026年9月には、BHPとAmazonがチリのEscondida銅鉱山に関連する実証事業を発表しました。
こちらは銅の現物供給契約ではありません。
対象は銅精鉱や銅カソードの生産に伴う環境価値を示す証書です。
Escondida鉱山では再生可能エネルギーや淡水化した水が使用されています。Amazonは環境価値証書を取得することで、自社が使用する銅に関連する環境負荷の削減を評価する仕組みを試しています。
この方式では、証書の移転と銅の現物の移動が必ずしも一致しません。
Amazonが証書を取得しても、Escondida鉱山で生産された銅がそのままAmazonの設備に納入されるわけではありません。
同じサミットに登壇したBHPのバンディタ・パント最高財務責任者(CFO)は、大規模データセンター事業者との協議やAmazonとの低炭素銅に関する取り組みに言及しました。
一方、鉱山会社への出資については別の問題だと説明しています。
Rio Tintoとの契約は銅の現物供給、BHPとの実証事業は環境価値証書の取得です。
どちらも重要鉱物の調達に関わる取り組みですが、契約の内容は異なります。
AIの普及によってデータセンターの建設が増えれば、電力設備や冷却装置、配線などに使用される金属の需要も拡大します。
なかでも銅は大量に使用される金属です。
BHPは、データセンターへの年間投資額が2,000億米ドル増えるごとに、年間15万トンを生産する新たな銅鉱山に相当する需要が発生すると試算しています。
同社の直近の通期銅生産量は約200万トンでした。銅事業は基礎的EBITDAの半分以上を占めています。
EBITDAは利払い・税金・減価償却前の利益を示す指標であり、最終利益とは異なります。
それでもBHPの事業において、銅が大きな収益源であることは確かです。
McKinseyの2026年の分析によると、2025年のデータセンター関連需要は鉱業全体の売上高の約0.5%に相当し、金額では約120億米ドルと推計されています。
また、世界のデータセンターの電力容量は2025年の84ギガワットから2040年には約600ギガワットへ拡大すると予測されています。
別の市場レポートでは、Goldman Sachsによる2026年のAI関連投資額が約1兆米ドルに達するとの試算も紹介されています。
こうした投資拡大は銅や電力、水などの需要増加につながります。
レアアース磁石もデータセンターのモーターや冷却設備などに使われていますが、必要とされる金属の種類と数量は銅とは異なります。
データセンターの建設需要が拡大しているからといって、すべての重要鉱物に同じ規模の需要が生まれるわけではありません。
銅とは別に、テクノロジー企業がレアアースの調達に踏み込んだ事例もあります。
2025年7月、Appleは米MP Materialsとの間で5億米ドル規模のレアアース磁石購入契約を発表しました。
この契約にはリサイクル由来のレアアースを使用した磁石の調達が含まれています。
両社はカリフォルニア州で、使用済み製品からレアアースを回収するリサイクル事業にも取り組む方針です。
これはテクノロジー企業によるレアアースの調達契約として、具体的な金額が公表された事例です。
ただし、AppleがMP Materialsの株式を取得したわけではありません。
また、契約の正確な購入数量や期間は、単純な鉱山の長期購入契約として比較できる形では公表されていません。
2026年10月15日のアングロ・アメリカンを巡る報道によって、新たに成立した契約でもありません。
Appleの事例は、レアアース磁石の需要家が実際に購入を約束したことに意味があります。
一方、契約の存在だけでMP Materials以外のレアアース関連企業にも同様の需要が保証されるわけではありません。
MP Materialsには、Appleとは別に米国政府との大規模な契約があります。
2025年7月10日、同社は米国防総省との包括的な支援策を発表しました。
この契約では、国防総省が新たに発行される転換優先株式を4億米ドルで取得し、株式取得権も受け取ることになりました。
優先株式の転換と株式取得権の行使を前提とした持分比率は、当時の普通株式の約15%に相当します。
これにより国防総省は最大株主となる見込みでした。
ただし、最大株主になることと経営権を取得することは異なります。
同契約にはネオジム・プラセオジム製品について、10年間にわたり1キログラムあたり110米ドルの価格下限を設定する仕組みも含まれています。
さらに、建設予定の10X磁石工場について、稼働開始後10年間の生産量すべてが防衛・民間顧客に購入されるよう政府が支援する取り決めが設けられました。
マウンテンパス鉱山の重希土類分離事業には、1億5,000万米ドルの融資も用意されています。
政府による出資、価格下限、購入支援は、MP Materialsの事業拡大を支える要因となります。
ただし、政府の支援があるからといって、鉱山や磁石工場の建設・操業リスクがなくなるわけではありません。
政策変更や契約条件の見直しが企業の事業計画に影響する可能性もあります。
ここからは、中国国外でレアアースの採掘、分離・精製、永久磁石製造に取り組む5社を比較します。
対象企業は以下の通りです。
5社は事業の進捗段階が異なります。
すでに酸化物を商業生産している企業もあれば、分離施設の建設資金を確保している段階の企業もあります。
今回のテクノロジー企業による鉱山投資の報道を評価する際には、実際の生産能力と契約の有無を確認する必要があります。
MP Materialsはカリフォルニア州のMountain Pass鉱山を運営する米国のレアアース企業です。
同社は鉱石の採掘だけでなく、ネオジム・プラセオジム酸化物の分離・精製にも取り組んでいます。
2025年のネオジム・プラセオジム酸化物の生産量は2,599トンで、前年の2倍以上に増加しました。
2026年第1四半期は917トン、第2四半期は840トンを生産しています。
上半期の合計生産量は1,757トンでした。
これは2025年通期生産量の約68%に相当します。
第2四半期は設備保守の影響があったものの、2026年上半期の生産量は前年通期の約3分の2に達しています。
MP Materialsはテキサス州で永久磁石の製造事業も進めています。
フォートワースのIndependence工場に加え、Northlakeでは大型の10X工場を計画しています。
10X工場は2028年の稼働開始を目指しており、建設費は12億5,000万米ドルを超える規模と報じられています。
一部の報道では約13億米ドルとされています。
2025年の政府支援策の発表時には、JPMorganとGoldman Sachsが工場建設に向けて10億米ドルの融資を検討する意向を示しました。
ただし、融資の実行には条件があります。
MP Materialsは2026年10月、ドローンやモーターの製造企業が将来の磁石生産能力を予約できるProject Swarmも開始しました。
同社CEOは、この取り組みが年間最大200万機のドローンに対応する可能性に言及しています。
しかし、生産能力の予約は拘束力のある購入契約とは異なります。
予約が集まっても、実際の売上高が確定したわけではありません。
MP MaterialsにはApple、米国政府、自動車メーカーとの具体的な関係があります。
General Motorsは2021年12月から磁石事業の主要顧客となっています。
一部の業界報道では、2026年第4四半期に国内供給網から小規模な商業出荷が始まるとされています。
ただし、これは報道されたスケジュールであり、契約書に記載された確定日程ではありません。
今後はApple向け磁石の出荷が始まるか、10X工場の建設が予定通り進むかが焦点になります。
また、ネオジム・プラセオジム酸化物の増産が続くかも重要です。
同社は鉱山、分離施設、磁石工場を米国内で整備する数少ない企業ですが、事業はMountain Pass鉱山への依存度が高くなっています。
政府が大株主となることで資金面の支援を受けられる一方、政策変更による影響も受けやすくなります。
Lynas Rare Earthsはオーストラリアに本拠を置くレアアース生産企業です。
西オーストラリア州のMt Weld鉱山で採掘した原料を、Kalgoorlieの処理施設とマレーシアの分離・精製施設で加工しています。
同社の強みは、中国国外ですでに商業規模のレアアース分離・精製事業を展開していることです。
新たな工場の建設を待たずに、ネオジム・プラセオジムなどの酸化物を供給できます。
この点で、商業生産を開始していないレアアース開発企業とは異なります。
Lynasは中国国外のレアアース供給網を支える企業の一つです。
ただし、事業が成熟しているからといってリスクが小さいとは限りません。
鉱石の安定供給、処理施設の稼働、マレーシアの規制環境などが業績に影響します。
また、ジスプロシウムやテルビウムといった重希土類の分離能力拡大も課題です。
軽希土類を大量に生産できても、重希土類の不足を同じ規模で補えるわけではありません。
テクノロジー企業が中国国外からネオジム・プラセオジムを調達する方針を強めれば、Lynasは供給候補となります。
一方、今回のアングロ・アメリカンを巡る協議は主に銅に関するものです。
Lynasが新たなテクノロジー企業との出資契約を締結したと確認されたわけではありません。
同社を評価する際には、未成立の協議よりも酸化物の生産量や販売価格、マレーシア施設の操業状況を確認する必要があります。
Neo Performance Materialsはトロントに本拠を置くカナダ企業です。
同社はレアアースの分離・精製に加え、合金や磁石材料の製造も手がけています。
エストニアのSillamäeにあるSilmet施設は、中国国外で商業運転を行う数少ないレアアース分離施設の一つです。
Neoは2025年5月、中国にある2つの分離施設の過半数持分を売却したと発表しました。
ただし、中国での事業をすべて終了したわけではありません。
同社は中国のほか、エストニア、タイ、カナダ、ドイツ、英国などにも製造拠点を持っています。
2026年10月13日、欧州委員会はSilmet施設の近代化計画であるSilmet 2.0を、EU重要原材料法に基づく戦略的プロジェクトに指定しました。
この計画では、既存施設の生産能力を約3倍に増やし、重希土類の分離能力を拡大する方針です。
さらに、新たな原料を受け入れられる設備への改修も進めます。
ただし、既存施設では原料調達先の変更が課題となっています。
同社は現在の原料供給契約が終了することを明らかにしています。
エストニアの報道によると、これまでの供給元はロシアのSolikamskでした。
原料の切り替えに伴い、既存の軽希土類分離設備では生産量の減少や一時的な操業停止が発生するとされています。
施設の近代化は将来の生産能力拡大につながりますが、移行期間中は既存事業への影響も考慮する必要があります。
Neoはすでにレアアースの分離事業を行っています。
一方、Silmet 2.0の設備投資と原料調達先の変更が今後の課題です。
新たな原料を安定して確保できるか、設備改修の資金を調達できるかが重要になります。
また、中国産製品との価格競争も続きます。
Neoはカナダ上場企業ですが、今回の分離施設に関する事業の中心はエストニアです。
カナダに上場していることと、カナダ国内にレアアースの採掘・分離設備を持つことは同じではありません。
同社を評価する際には、株式の上場市場よりも実際の事業拠点と生産能力を確認する必要があります。
Aclara Resourcesはトロント証券取引所に上場するレアアース開発企業です。
同社はブラジルのCarinaプロジェクトとチリのPencoプロジェクトで、イオン吸着型粘土鉱床の開発を進めています。
また、米ルイジアナ州のPort of Vintonでは、レアアース分離施設の建設を計画しています。
この施設はProject Dynamoと呼ばれています。
2026年10月6日、同社は施設の設計規模を拡大する方針を発表しました。
従来から計画していたネオジム・プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムに加え、イットリウム、ガドリニウム、サマリウムも分離対象に加えています。
設備拡張に伴い、ミキサーセトラーと呼ばれる分離装置の数は約340基から約478基に増える計画です。
同社は州の大気排出許可も取得しています。
10月13日にはエンジニアリング会社Hatchによる基本設計が完了しました。
Class 3段階の建設費見積額は約4億9,400万米ドルです。
当初の概算見積額である約2億7,700万米ドルから約78%増加しました。
設計対象の拡大が建設費増加の一因となっています。
同社は2027年第1四半期に現地工事を開始し、2028年後半の建設完了を目指しています。
ただし、工事開始には資金調達などの条件を満たす必要があります。
米国輸出入銀行は最大7億5,000万米ドルの融資に関する意向表明書を発行していますが、法的拘束力はありません。
正式な融資契約が成立したわけではなく、建設資金が確保されたと判断することはできません。
Aclaraの分離施設では、ブラジルとチリのプロジェクトから原料を調達する計画です。
Pencoは環境面の承認を取得していますが、鉱山建設が完了したわけではありません。
Carinaも商業生産を開始していません。
同社はペルーにも探鉱権益を保有していますが、ルイジアナ州の施設へ原料を供給する3番目の商業鉱山ではありません。
分離施設が完成しても、原料が供給されなければ生産は始まりません。
逆に鉱山が完成しても、分離施設が稼働しなければ最終製品を販売できません。
同社は顧客候補との初期協議を進めていますが、正式な長期購入契約はまだ締結していません。
今後は資金調達の確定、原料供給体制の整備、購入契約の締結が焦点になります。
テクノロジー企業が重要鉱物に関心を示していることは追い風となる可能性がありますが、今回の報道でAclaraとの契約が成立したわけではありません。
Ucore Rare MetalsはTSXベンチャー取引所に上場するカナダ企業です。
同社はRapidSXと呼ばれるレアアース分離技術の商業化を進めています。
米ルイジアナ州AlexandriaのEngland Airparkでは、Strategic Metals Complexと呼ばれる分離施設を計画しています。
2025年5月には建設工事の着工式が行われました。
同社はアラスカ州のBokan-Dotson Ridge重希土類鉱床も保有しています。
ただし、アラスカの鉱床とルイジアナ州の分離施設は別の事業です。
鉱床を保有しているからといって、その鉱石がすでに商業規模で分離施設へ供給されているわけではありません。
Ucoreは分離施設の設計を見直し、生産ラインを当初の4系列から3系列に変更しました。
その前段階として、小規模設備のMachine Aを導入する計画です。
同社はMachine Aの設置、試験、試運転を2027年上半期に実施する目標を示しています。
後続の生産ラインについては、確定した日程が公表されていません。
2026年10月の市場レポートでは、2027年後半の商業生産開始や2028年の売上高計上を想定する見方も示されました。
ただし、これは市場関係者による予測であり、Ucoreが正式に示した工程表とは異なります。
同社の計画を評価する際には、まず2027年上半期のMachine Aの試運転が予定通り進むかを確認する必要があります。
Ucoreの事業には米国政府による支援や住友商事との関係もあります。
こうした公的支援や産業パートナーとの協力は、中国国外で分離施設を整備するうえで重要です。
ただし、今回のアングロ・アメリカンを巡る協議とは別の取り組みです。
Amazonなどのテクノロジー企業がUcoreに出資したと確認されたわけではありません。
今後は原料供給契約とMachine Aの試運転結果が焦点になります。
分離技術が商業規模で安定して稼働し、顧客が求める品質と回収率を達成できるかが重要です。
実証段階の技術が商業化されるまでには、設備投資や操業上のリスクが伴います。
Ucoreは中国国外でのレアアース分離能力の拡大を目指す企業ですが、現時点では計画段階の要素が多く残っています。
今回取り上げた5社は、すべて同じ条件で比較できるわけではありません。
すでに生産設備を稼働させている企業と、建設資金を確保している段階の企業では、事業リスクが異なります。
MP Materials
米国でレアアース酸化物を生産し、Appleや米国政府との具体的な契約を持っています。今後は磁石の商業出荷と10X工場の建設進捗が重要です。
Lynas Rare Earths
オーストラリアで採掘し、マレーシアで分離・精製を行っています。既存施設の安定稼働と重希土類の増産が焦点になります。
Neo Performance Materials
エストニアで商業規模の分離施設を運営しています。原料調達先の変更とSilmet 2.0の設備投資が今後の課題です。
Aclara Resources
米国の分離施設について基本設計を完了しました。ただし、建設資金や原料供給、長期購入契約の確保が必要です。
Ucore Rare Metals
RapidSX技術を使った分離施設の商業化を目指しています。2027年上半期に予定するMachine Aの試運転が重要になります。
この5社のうち、今回のテクノロジー企業による鉱山投資の協議で、新たな出資先として名前が挙がった企業は確認されていません。
株価が関連報道に反応したとしても、それだけで各社の受注や資金調達が進んだとは判断できません。
今後、テクノロジー企業がレアアースの供給確保に動く場合、どのような契約が成立したかによって企業への影響は変わります。
購入数量、価格、初回出荷時期が明示された契約です。
AppleとMP Materialsの契約はその一例ですが、公開情報だけではすべての供給条件を確認できません。
契約金額だけでなく、実際の納入数量や開始時期を確認する必要があります。
分離・精製施設で生産された酸化物を、一定期間購入する契約です。
鉱石や精鉱の購入契約とは異なり、分離済みの製品を確保できます。
ただし、施設が建設中の場合は予定通り稼働できるかが課題となります。
テクノロジー企業が鉱山会社や加工会社の株式を取得する方法です。
出資比率や取締役の指名権、供給に関する契約上の権利などが重要になります。
株式を取得しただけでは、必ずしも生産物の優先購入権を得られるわけではありません。
また、出資が検討段階にある場合は、正式な契約や資金の払い込みが完了したかを確認する必要があります。
使用済み製品や製造工程で発生するスクラップからレアアースを回収する方法です。
AppleとMP Materialsが発表した取り組みも、この分野に関わっています。
リサイクルは新たな鉱山開発への依存を減らす可能性があります。
一方、回収する製品の量や回収率、再生材料の品質が事業の採算性を左右します。
これら4つの契約や事業は、いずれも中国国外のレアアース供給網を強化する手段となります。
ただし、契約が成立しても株価が割安であるとは限りません。
企業価値を評価する際には、契約によって見込まれる収益と設備投資、操業コストを比較する必要があります。
北米の重要鉱物関連企業を探す際には、まず対象となる金属を明確にする必要があります。
銅を確保したい企業とレアアース磁石を確保したい企業では、必要な供給網が異なります。
AmazonとRio Tintoの契約は、米国内で生産される銅をデータセンター向けに供給するものです。
BHPとの実証事業は、チリで生産される銅に関連する環境価値証書を対象としています。
どちらもレアアースの供給契約ではありません。
一方、MP Materialsは米国でレアアースの採掘と酸化物の分離を行い、テキサス州で永久磁石の生産能力を拡大しています。
AclaraとUcoreも米国に分離施設を計画していますが、商業生産の開始には至っていません。
Neoはカナダ上場企業ですが、今回取り上げた分離施設はエストニアにあります。
Lynasはオーストラリアとマレーシアを中心に事業を展開しています。
北米に上場している企業と、北米で実際に生産している企業を区別することが重要です。
さらに、北米に鉱床を保有していても、その鉱石を分離・精製する設備がなければ、完成した磁石の供給にはつながりません。
レアアース関連企業を評価する際には、次の3点が重要になります。
MP Materialsは、これらの条件を比較的多く満たしています。
LynasとNeoは既存の分離施設を持っていますが、事業拠点や設備投資の状況は異なります。
AclaraとUcoreは新たな分離能力の整備を目指しており、商業化までに複数の課題が残っています。
探鉱段階のジュニア鉱山会社については、鉱床の資源量だけでなく、将来の加工施設や販売先の確保まで確認する必要があります。
重要鉱物という言葉には、銅、ニッケル、リチウム、コバルト、黒鉛、ガリウム、レアアースなど、さまざまな金属や鉱物が含まれます。
しかし、それぞれ用途や供給網が異なります。
データセンターの建設需要が増えれば銅の消費量は増える可能性がありますが、レアアースの需要が同じ割合で増えるとは限りません。
また、企業が鉱山会社への出資を検討しているという報道と、実際に出資が完了したという発表は区別する必要があります。
例えば、今回の報道については以下を確認する必要があります。
これらが確認できなければ、特定の企業の売上高や生産量への影響を計算することはできません。
仮にレアアース関連株が報道を受けて上昇しても、企業の事業計画が進展したとは限りません。
株価の上昇と事業の進展は分けて評価する必要があります。
今回の報道では、テクノロジー企業による鉱山会社への新たな出資契約は確認されていません。
ただし、今後の企業発表によって状況が変わる可能性があります。
例えば、企業名が公表されたうえでレアアース鉱山会社への出資契約が成立すれば、新たな資金の流れが確認できます。
ネオジム・プラセオジム酸化物や永久磁石の長期購入契約が締結された場合も、具体的な需要が明らかになります。
MP Materialsについては、Apple向け磁石の出荷やProject Swarmの予約が正式な購入契約に移行するかが焦点です。
予約段階の需要が実際の注文に変われば、10X工場の将来の販売見通しを評価しやすくなります。
AclaraやUcoreについても、テクノロジー企業が資金提供や長期購入契約を締結すれば、事業計画の実現可能性に影響します。
ただし、拘束力のない融資意向表明書や政府補助金は、民間企業による購入契約とは異なります。
また、AmazonとBHPの環境価値証書の実証事業が、将来の銅の現物供給契約に発展する可能性もあります。
その場合は銅の調達に関する新たな進展ですが、レアアースの購入契約が成立したことにはなりません。
一方、中国の輸出規制や防衛産業からの需要によって、テクノロジー企業との契約がなくてもレアアース価格が上昇する可能性があります。
レアアース関連株の値動きには、テクノロジー企業による投資以外の要因も影響します。
米国の大手テクノロジー企業は、データセンター向けの重要鉱物を確保するため、鉱山会社への出資や長期購入契約を検討しています。
しかし、2026年10月15日のアングロ・アメリカンCEOの発言では、新たな出資契約の成立は確認されていません。
実際に契約が締結された事例を見ると、AmazonはRio Tintoとの間で銅の供給契約を結び、BHPとは銅に関連する環境価値証書の実証事業を進めています。
一方、レアアースではAppleが2025年にMP Materialsとの間で5億米ドル規模の永久磁石購入契約を発表しています。
今回取り上げた5社のうち、MP Materialsは米国政府やAppleとの具体的な契約を持っています。
Lynasは中国国外で商業規模の分離・精製を行い、Neoもエストニアで既存施設の近代化を進めています。
Aclaraは約4億9,400万米ドルの分離施設を計画していますが、建設資金の確保が課題です。
Ucoreは2027年上半期に最初の設備の試運転を予定しています。
各社の事業段階は異なり、テクノロジー企業による投資検討の報道だけで、すべてのレアアース関連企業の収益が改善するとは判断できません。
今後は実際の契約締結と生産設備の稼働、顧客への出荷が確認できるかが重要です。
企業が関心を示している段階と、契約に基づいて売上高が発生する段階を区別する必要があります。
本記事は2026年10月15日に開催されたフィナンシャル・タイムズ金属・鉱業サミットでのアングロ・アメリカンCEOの発言、および関連報道に基づいています。
Rio TintoとAmazon Web Servicesの銅供給契約、BHPとAmazonの環境価値証書の実証事業については、各社の発表および関連報道を参照しています。
AppleとMP Materialsの契約、米国防総省による支援策、MP Materialsの酸化物生産量、Project Swarmなどについては、各社の公表資料と業界報道に基づいています。
Lynas Rare Earths、Neo Performance Materials、Aclara Resources、Ucore Rare Metalsの事業計画や設備投資についても、各社の公表資料などを参照しています。
一部の設備稼働時期や商業生産開始時期は市場関係者による予測であり、企業が正式に公表した日程とは異なる場合があります。
また、拘束力のない融資意向表明書や生産能力の予約は、正式な融資契約や購入契約とは異なります。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や有価証券、先物取引の売買を推奨するものではありません。掲載した重要鉱物の価格動向や需給見通しは報道時点の情報に基づくものであり、将来の価格や市場動向を保証するものではありません。鉱山会社や重要鉱物関連企業への投資には、金属価格の変動、操業上の問題、資金調達、政治・規制リスクなどが伴います。投資判断にあたっては、最新の市場情報や企業の開示資料をご確認ください。
Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターの市場動向を分析しています。金、銅、ウランなど幅広い資源を対象に、特にTSXV上場のジュニア鉱山会社に関するデータや企業動向を取り上げ、投資家に向けて情報を発信しています。