商品価格が高騰する一方で、ジュニア鉱山会社が低迷する理由と、2026年に形作られつつあるチャンス

July 24, 2026

※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。

金価格が過去5年間でほぼ2倍、銅価格も約50%上昇した一方、TSXV指数は2022年とほぼ同じ水準にとどまっています。大手鉱山株も直近の高値から大きく調整しており、商品価格と鉱山株の間には大きな乖離が生じています。

2026年夏には、Hecla Miningが高値から58%、Equinox Goldが54%、Coeur Miningが49%、Gold Fieldsが48%、Agnico Eagleが45%下落しました。Ivanhoe Minesも一時50%近く下落し、BHPとFreeport-McMoRanもそれぞれ12%、15%下落しています。

年初来ではTSXVが約13%、GDXが15%、GDXJが17%下落し、多くの指数がピークから25%以上下げています。しかしCEO.caのMat氏は、こうした状況を単なる悲観材料ではなく、過去の鉱業サイクルでも繰り返されてきたパターンであり、長期投資家にとってチャンスになり得ると見ています。

大手が先行し、ジュニアが遅れる:繰り返されるパターン

鉱業市場では、すべての銘柄が同時に上昇するわけではありません。Mat氏によれば、2001~2008年の大相場、2009~2011年の金融危機後の回復、1970年代の相場でも、まず大手生産会社や既存の鉱山会社が上昇し、その後にジュニア鉱山会社や探査会社へ資金が流れるパターンが見られました。

投資資金や市場の信頼は、まず生産実績、キャッシュフロー、機関投資家からの支持を持つ企業へ向かいます。その後、リスク許容度が高まるにつれて、TSXVに多い高ベータのジュニア企業へ資金が広がっていきます。

この傾向を過去5年間で見ると、乖離はさらに鮮明です。2021年末から2022年にかけて銅価格は1ポンド約4.50米ドルでしたが、2026年半ばには約6.50米ドルまで上昇し、約50%高となりました。金価格も約2,000米ドルから4,000米ドル前後まで上昇しています。

多くの大手金鉱株や総合鉱山会社も、この期間のピーク時には最大200%程度上昇しました。一方、構成銘柄の約55%をジュニア鉱山会社が占めるTSXV指数は、2022年のコロナ禍相場のピーク時に約850だったのに対し、2026年7月もほぼ同じ水準にあります。

つまり、商品価格と大手鉱山会社が大きく上昇したにもかかわらず、ジュニア鉱山株はほとんどその恩恵を受けていません。これがMat氏の指摘する「大いなる乖離」です。

金価格には依然としてテクニカル面での下落リスクがあり、4,000米ドルを明確に割り込めば3,800米ドル、場合によっては3,500米ドル付近まで下落する可能性もあります。それでも業界全体では、商品市場のファンダメンタルズに基づく強気相場がすでに始まっており、ジュニア企業がまだ十分に参加していないとの見方があります。

質の高い企業には依然として資金が集まっている

Mat氏が注目するもう一つのポイントは、鉱業セクターから資金そのものが消えたわけではないことです。

2026年6月には、このセクターで約7億米ドルの資金調達が行われました。前月比では16%減少したものの、前年同月比では67%増加しています。また、Cadillac Miningによる3億5,000万米ドルの資金調達は、大規模な資金が依然として鉱業分野へ流れていることを示す一例です。

Mat氏は、こうした数字について、投資家が足元の株価低迷だけを見るのではなく、長期的な商品価格の強さに注目している証拠だと考えています。

優れたプロジェクト、信頼できる経営陣、リスクがある程度低減された資産を持つ企業には、現在でも資金が集まっています。そのため、ジュニア市場全体の出遅れは、過去5年間の商品価格上昇をまだ十分に織り込んでいない企業を選別するチャンスになり得ます。

すべてのジュニア企業が買いではない:開発企業を重視

Mat氏は、現在のジュニア鉱山会社すべてに強気というわけではありません。

同氏が重視しているのは、すでに鉱床を発見しており、資本へのアクセスとプロジェクトを進められる経営陣を持つ開発企業です。成功すれば大きなリターンが期待できる純粋な初期探査企業よりも、現在のように投資資金が選別的な環境では評価しやすいとしています。

Mat氏が好む企業には、いくつか共通点があります。

  • 機関投資家や戦略的投資家から資金を呼び込める規模がある
  • プロジェクトを前進させられる経営陣がいる
  • 中核となる鉱床がすでに発見されている

同氏はCirios、Sterling、Pirate Gold、Mackie、Arrington、Allied Critical、AMEXなどを、こうした特徴を持つ企業の例として挙げています。

なかでもAMEXについては、約2億米ドルの資本投下によって5年間で15億米ドルのキャッシュフローを生み出せる可能性がある鉱床として、魅力的なリスク・リターンを指摘しています。

現在の市場では、広大な鉱区や将来の探査余地だけを持つ企業よりも、すでに資源量が確認され、現実的な開発ルートを持つ企業の方が、より確度の高いチャンスになりやすいというのがMat氏の考えです。

資本構成と資本コストから学べること

この考え方を実際の企業で示しているのが、Westhaven Goldです。

同社がブリティッシュコロンビア州で開発するShovelnoseプロジェクトでは、金価格4,000米ドルを前提としたPEA(予備的経済性評価)で、約10億米ドルのNPV(正味現在価値)と88%のIRR(内部収益率)が示されています。

11年間で約65万オンスを生産する比較的小規模な計画ですが、必要資本は鉱業業界の基準では比較的低い水準です。また、バンクーバーから車で約2時間半とアクセスしやすく、インフラや操業コストの負担も抑えられます。

冶金プロセスも一般的な手法で対応できるほか、75kmにわたる地質帯には既存資源量を超える探査余地があります。

特に注目されるのが資金調達の方法です。

Westhavenは、市場環境が悪い中で何度も増資して株主価値を希薄化させるのではなく、Dundee Corporationとアーンイン型のジョイントベンチャーを締結しました。これによって、プロジェクト単位で最大8,500万米ドルの資金を受けられる可能性があります。

Dundeeはまず3,000万米ドルを投じることで25%の権益を取得し、追加投資によって最大60%まで取得できます。一方、Westhavenは40%の権益を維持します。

この資金によって、3万5,000mのインフィル掘削と1万5,000mの探査を並行して進めながら、PFS(予備的実現可能性調査)やFS(実現可能性調査)へ向けてプロジェクトを進めることができます。

Mat氏は当初、ジョイントベンチャーに懐疑的でした。しかし、時価総額に対して十分な資金を確保できること、重要な上昇余地を維持できること、パートナーが支配的ではないこと、継続的な増資なしで開発を進められることなどを評価しています。

ジュニア鉱山会社にとって資本コストが高い現在、株式の希薄化を抑えながらプロジェクトを進められる資金調達は大きな強みになります。

つまり、商品価格が高いにもかかわらずジュニア株の評価が低迷している現在、すでに鉱床を発見し、有能なチームを持ち、資金問題もある程度解決している企業に有力なチャンスが存在するということです。

カナダの鉱山投資家への影響

現在の環境は、TSXVのジュニア鉱山会社を無差別に買う局面ではありません。初期段階の探査は依然としてリスクが高く、資金調達に苦戦する企業も多く存在します。

また、大手鉱山株でさえ高値から40~60%下落していることを考えると、金価格がさらに下落すればジュニア企業の株価も一段安となる可能性があります。

一方、Mat氏が指摘した歴史的なパターンには注目する価値があります。

大手企業が先に上昇し、ジュニア企業は遅れて上昇する。

すでに商品価格が大幅に上昇し、質の高いプロジェクトには資金も流れているのであれば、このジュニア企業の出遅れそのものが投資機会になる可能性があります。

特に、明確な資源量、無理のない必要資本、有能な経営陣、株主にとって不利になりにくい資金調達方法を持つ開発企業は、こうした環境の恩恵を受けやすいと考えられます。

また、カナダの投資家には一定の優位性があります。TSXVは世界でも有数のジュニア鉱山会社や金探査会社が集まる市場であり、規制環境への理解や経営陣へのアクセスなど、海外投資家より情報を得やすい面があります。

AME RoundupやPDACのようなイベントも、企業や経営陣を直接評価する場として活用できます。

Mat氏が示す「すでに発見された資産」「実行力のあるチーム」「過度な希薄化を避けられる資本構成」という3つの視点は、ジュニア鉱山株を選別する実践的なフィルターになります。

リスクと現実的な期待

こうした投資機会があるとしても、鉱山投資そのもののリスクがなくなるわけではありません。

鉱業は多額の資本を必要とし、操業も複雑です。さらに、商品価格の変動、事業地域の政治・規制、許認可の遅れ、プロジェクト実行の失敗など、多くのリスクがあります。

質の高い開発企業でも、冶金、地盤、地域社会との関係などの問題によって、プロジェクトが遅れたり経済性が悪化したりする可能性があります。

ジョイントベンチャーは株式の希薄化を抑える効果が期待できますが、パートナーとの関係を適切に管理する必要があります。また、地質的に魅力的な探査余地があったとしても、実際に鉱床を発見できる保証はありません。

ジュニア鉱山株は流動性が低い銘柄も多く、情報格差も存在します。そのため、独立した技術的評価、資本構成の確認、経営陣が計画を実行できているかの継続的な確認が重要です。

結論:忍耐、選別、そしてサイクルへの理解

2026年夏の鉱業市場は、鉱山株のボラティリティの大きさを改めて示しました。大手生産会社は高値から大幅に下落し、TSXVやジュニア鉱山会社は過去5年間の商品価格上昇にほとんど追いつけていません。

しかし、CEO.caのMat氏が指摘するように、このパターン自体は新しいものではありません。過去のサイクルでも、大手企業が先行して上昇し、ジュニア企業は後から追いつくという動きが繰り返されてきました。

商品価格のファンダメンタルズが依然として強い一方で、鉱山株へのリスク許容度が低下している現在、その乖離の中にチャンスが生まれている可能性があります。

これは、すべてのジュニア鉱山株を買うべきだという意味ではありません。すでに明確な資産を持ち、有能な経営陣と現実的な資金調達方法を備える質の高い開発企業を、過去の上昇局面より魅力的な評価で選別できる環境だということです。

商品価格の上昇とジュニア企業の低い評価との乖離がいつ解消されるかは分かりません。しかし過去のサイクルでは、ファンダメンタルズが崩れていない局面ほど、忍耐強く企業を選別した投資家が報われるケースが多く見られました。

【免責事項】

本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、証券の購入・売却・保有の推奨、または記載されている企業の推奨を目的とするものではありません。

ジュニア鉱山会社、金鉱株、銀鉱株などへの投資には、元本を全額失う可能性を含む高いリスクがあります。商品価格は大きく変動し、過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

投資判断を行う前に、ご自身で十分なデューデリジェンスを行い、すべての技術報告書や企業開示資料を確認するとともに、必要に応じて金融・法律・技術分野の専門家へ相談してください。市場環境は急速に変化する可能性があります。著者および発行者は登録投資顧問ではありません。

著者:Ben McGregor

Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。

金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。

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