インドでは金が「花嫁の財産」に?世界と日本の金文化を学んで投資に活かそう!

September 5, 2025

金(ゴールド)は世界中で価値ある貴金属として認識されていますが、その文化的意義や関わり方は国や地域によって大きく異なります。これらの文化的違いを理解することは、単なる知識を超えた投資戦略上の優位性につながります。季節的な価格変動、地域特有の需要トレンド、長期的な市場傾向まで、文化の理解が投資の成功を左右することがあります。

本記事では、世界の主要国における金の文化的位置づけを比較しながら、日本と金の関係性の特徴を探り、それらが金市場やゴールド関連投資にどのような影響をもたらすかを解説します。

国ごとによる金に対する価値観の違い

金市場の理解には、各国の金文化を知ることが不可欠です。普遍的な価値を持つ金も、国や地域が異なればその捉え方や需要は大きく変わります。ここでは、インド、中国、そして西洋諸国における金への価値観と、それが市場に与える影響を見ていきましょう。

インドの金に対する価値観

インドでは金が日常生活に深く根付いており、特に結婚式は金需要の最大の要因となっています。WGC(世界黄金協会)によると、インドのブライダルジュエリー市場は全体の50〜55%を占め、年間約1200万件の結婚式が行われています。結婚時に女性に贈られる金は女性の専有財産となり、重要な経済的保障になります。インドでは女性がジュエリーを選び、男性はそれに従うという文化も特徴的です。

インドの金製品は主に22Kの純度が好まれています。これは宝飾品としては純度99.99%の純金は使わないためです。理由は、高純度の金は柔らかすぎて形を保ちにくく、宝飾品としてのデザイン性が失われやすいからです。このため、東アジアとインドがゴールドを直接取引することはあまりないという特徴も存在します。

インドは常に多くのゴールドを輸入しているため、恒常的に貿易赤字国になっているという経済的特徴も持ち、インド政府は慢性的な貿易赤字を解消するため、ときどきゴールドの輸入関税を引き上げる試みをしています。インドの人たちにとってゴールドは投資対象ではなく、将来売るために買うものではないというのが基本的な姿勢です。

中国の金に対する価値観

中国において、金は富と幸運の象徴です。特に春節(旧正月)には縁起物として大量の金製品が購入され、金で装飾された縁起物は金運と福運を高めると信じられています。

近年注目されているのは「金豆」ブームです。若者の間で豆粒大の小さな金製品を買い貯めることが流行しており、ハート型や小さな玉など様々なデザインがあります。金の値段をチェックし、ライブコマースで「金豆」を買うことが若者の日常習慣になっています。

2024年からは中国経済悪化により客単価が減ることを懸念して、様々な販売促進が展開されています。人民元安で人民元建て金価格が上昇したことも、金の国内需要を委縮させている要因となっていますが、文化的に金選好度が高い国のため、小さくても金を購入する傾向は変わらないと言われています。

欧米諸国の金に対する価値観

ヨーロッパではコインを買うことが慣習になっており、最近では米国でも行われるようになりました。特にヨーロッパでは、子供が生まれたら誕生日ごとに親が金貨を1枚ずつ買い、子供が20歳になった歳にすべての金貨を渡すという文化もあります。これは長期的な資産形成と同時に、特別な記念としての意味も持っています。

近年の欧米では、金や銀の実物資産への関心がさらに高まっています。特筆すべき例として、大手小売企業コストコが2023年9月から金塊の販売を開始し、わずか1四半期で1億ドル以上の売上を記録しました。続いてカナダのメイプルリーフ銀貨も品揃えに加え、非常に人気を博しています。

欧米の消費者にとって金は、単なる装飾品ではなく「インフレに対するヘッジ」「経済的不確実性への保険」として捉えられています。金利の変動や市場の不安定さに関わらず、金は価値を保持する資産として信頼されています。

こうした傾向は、金をファッションや宗教的意味合いで重視するアジア諸国とは対照的に、より実用的な投資視点が強いことを示しています。同時に、コストコの例が示すように「宝探し」的な買い物体験としての金購入という新たな消費文化も生まれつつあります。

日本の金に対する価値観

日本人の金に対する姿勢は、インドや中国と比較すると控えめです。日本人はキラキラした宝飾品をあまり好まない傾向にあります。ネックレス一つを例にとっても、中国人やインド人はピカピカの金が好きですが、日本人はどちらかというとプラチナやシルバーを好む傾向があります。

特に婚約・結婚指輪の選択に、この傾向が顕著に表れています。プラチナジュエリーの国際的広報機関の調査によれば、2021年に日本で購入された婚約指輪の92%、結婚指輪の82%がプラチナだったとされています。これは世界的にみると結婚指輪はゴールドのリングが主流である中で特異な傾向です。

日本人がプラチナを好む理由は主に3つあります。

  1. 日本の結婚観との調和 - 花嫁衣裳の白無垢に象徴されるように、白は日本の結婚式で重要な色です。控えめで上品な白い輝きを持つプラチナは、日本人の結婚観に合っています。

  1. 実用性の高さ - プラチナは変質しにくく傷がつきにくいため、日常的に身につけやすく手入れも簡単です。また、控えめな輝きは様々な服装やシーンに合わせやすいという利点もあります。

 

  1. 皇室からの影響 - 日本では皇室がプラチナジュエリーを取り入れたことが大きな影響を与えました。特に皇室の方々がプラチナのティアラを身につける姿に憧れた人々が、プラチナを結婚指輪などに選ぶようになったと言われています。

 

日本の伝統的な美意識では、派手さよりも控えめで洗練された美しさが重視されます。このような美意識が、金よりもプラチナやシルバーを好む傾向の背景にあるでしょう。

現代の日本においては、主に投資や記念品として用いられることが多く、日常的な装飾品としての需要は限られています。しかし金箔を使った工芸品や食品装飾(金箔入り日本酒や金箔を散らした和菓子など)は特別な機会の贈答品として今でも人気があります。特に金沢は金箔工芸の中心地として知られ、伝統的な金の文化を今に伝えています。

このように現代の日本において、金は特別な記念や贈答の価値を持つものとして文化的に位置づけられています。装飾品としてよりも工芸品や投資、特別な場面での使用が中心という点が、日常的に金の装飾品を身につける文化を持つインドや中国との大きな違いと言えるでしょう。

まとめ

金に対する文化的関係は国によって大きく異なり、それが各国の金市場の特性を形作っています。インドでは結婚や宗教儀式が金需要を牽引し、中国では春節や「金豆」ブームが市場を活性化させています。一方、日本では金よりもプラチナが好まれ、金は主に投資や特別な記念品として位置づけられています。

これらの文化的特徴を理解することは、金関連市場の季節性や地域別の需要パターンを予測する上で重要な視点となります。インドの結婚シーズンや中国の春節前の需要増加、日本の金箔工芸品市場など、それぞれの国の文化が生み出す独自の機会を見逃さないことが、グローバルな金投資の成功につながるでしょう。

【出典】

WGC Jewellery demand and trade: India gold market series
https://www.gold.org/goldhub/research/jewellery-demand-and-trade-india-gold-market-series

Platinum Guild International ブライダルジュエリーには、なぜプラチナなの?
https://www.preciousplatinum.jp/aboutplatinum/bridal/

三菱マテリアル 中国と金
https://gold.mmc.co.jp/toshima_t/2024/01/3855.html

TAVEX BULLION Why Is Costco Selling Gold?
https://tavexbullion.co.uk/why-is-costco-selling-gold/

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