【CEOインタビュー】探鉱段階からキャッシュフローを生む異色のジュニア鉱山会社、ニコラ・マイニングの戦略とは?

April 8, 2026

ジュニア鉱山企業の多くは、有望な鉱床を見つけた後に大手企業にプロジェクトを売却することを出口戦略としています。しかし、カナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC州)に拠点を置くニコラ・マイニング社(以下、ニコラ社)は、自社で鉱石処理施設を持ち、探鉱段階からキャッシュフローを生み出しながら、かつて北米最高品位を誇った銅鉱山跡地の開発とNASDAQ上場を同時に進めるという、異なる道を歩んでいます。

今回は、ニコラ社CEOのピーター・エスピッグ氏に、「他社とは異なるビジネスモデルの全貌」「各プロジェクトの詳細」「日本の投資家へのメッセージ」まで、幅広くお話を伺いました。

【プロフィール】

写真提供:NICOLA MINING Inc.

Nicola Mining Inc. President, CEO and Director

ピーター・エスピッグ(Peter Espig)

ゴールドマン・サックス・ジャパン、米プライベートエクイティ企業オリンパス・キャピタルを経て、投資・企業再建の分野で豊富な経験を持つ。2013年にニコラ社のCEOに就任し、経営再建を主導。これまでに20億米ドル超の投資案件を手がけたほか、SPAC分野の先駆者としても知られる。コロンビア大学ビジネススクールMBA取得。

ニコラ社の事業紹介

── はじめに、日本の読者に向けてニコラ社の事業内容を教えてください

ピーター:当社は、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州に特化した鉱山会社であり、戦略的な鉱物資産と自社所有の処理インフラを組み合わせた、ジュニア鉱山会社としては珍しいビジネスモデルを構築しています。

当社の主要資産は4つあります。

1つ目は、ニュー・クレイグモント銅プロジェクトです。テック社が運営する北米最大級の銅鉱山「ハイランドバレー」に隣接する10,800ヘクタール超の広大な敷地で、大きな銅探査のポテンシャルを秘めています。

2つ目は、メリット・ミルと呼ばれる選鉱施設です。BC州メリット近郊の私有地に位置し、現在は日量200トンの処理能力を持ち、500トンへの拡張を進めています。BC州全域から第三者の金・銀鉱石を受け入れられる、州内唯一の許可済み施設です。

3つ目は、トレジャー・マウンテン銀プロジェクトです。BC州ホープ近郊にある歴史的な高品位銀鉱山で、既存の採掘許可と周辺の探査ポテンシャルを有しています。

4つ目は、ドミニオン・ゴールド・プロジェクトです。高品位な金プロジェクトで、2026年7月に金生産を開始する予定です。

当社の強みは、これらの資産が単独で存在するのではなく、相互作用を生む構造になっている点です。トレジャー・マウンテンやドミニオンから産出される鉱石は、自社の施設で処理できます。これにより、他社の施設に頼る必要がなく、生産のタイミングやコスト、運営の柔軟性を自社でコントロールできる仕組みになっています。

つまり、短期的なキャッシュフローと長期的な探査によるアップサイドの両方を兼ね備えている点が、他のジュニア企業にはない当社の特徴です。

BC州唯一の第三者鉱石処理施設「メリット・ミル」の戦略的価値

鉱石処理施設「メリット・ミル」の内部
写真提供:NICOLA MINING Inc.

── メリット・ミルは、BC州全域から金・銀鉱石を受け入れられる州内唯一の許可済み施設とのことですが、この施設の戦略的価値をどのように捉えていますか?

ピーター:メリット・ミルは、当社のビジネスモデルの中核をなす資産です。単なる処理施設ではなく、BC州の鉱業エコシステムにおいて当社を差別化する、希少かつ防衛的なインフラと位置づけています。

州内唯一の第三者鉱石処理施設として、このミルはニコラ社に3つの優位性をもたらしています。1つ目は、外部の鉱山会社から鉱石を受け入れることで運営キャッシュフローを生み出せること。2つ目は、利益分配などの形で外部パートナーとの関係を構築できること。3つ目は、新たにミルを建設する際に必要な膨大な資金と時間を回避できることです。

さらに、メリット・ミルは外部の鉱石を処理するだけでなく、自社のトレジャー・マウンテンやドミニオンから産出される鉱石の処理拠点にもなります。BC州内で唯一の許可済み施設であること、そして自社プロジェクトと直接つながっていること。この組み合わせが、当社のビジネスモデルの土台を支えています。

トレジャー・マウンテンの全景図
写真提供:NICOLA MINING Inc.
‍ドミニオン・プロジェクト内にある金の鉱脈
写真提供:NICOKA MINING

ニュー・クレイグモント銅プロジェクトの地質学的意義

ニュー・クレイグモント銅プロジェクトは、カナダのBC州メリット金鉱に位置する
写真提供:NICOLA MINING Inc.

── ニュー・クレイグモント銅プロジェクトは、北米最大級の銅生産拠点であるハイランドバレー銅山の隣に位置し、かつて北米最高品位とされた銅鉱山の跡地でもあります。この立地と歴史は、プロジェクトの価値にどのような意味を持つのでしょうか。

ピーター:クレイグモントの地質学的な意義は非常に大きいと考えています。なぜなら、ジュニア鉱山会社の資産としては珍しい3つの特徴を兼ね備えているからです。

1つ目は、高品位な銅鉱化の実績がある歴史的な鉱山であること。2つ目は、現役で稼働するハイランドバレー銅鉱山のすぐ隣に位置していること。3つ目は、カナダで最も重要な銅ベルトの一つであるギション・バソリス南部において、地区規模の鉱区を保有していることです。

当社が保有するニュー・クレイグモントの敷地面積は10,800ヘクタール以上で、ハイランドバレーの約25%に相当します。しかも、銅の品位はハイランドバレーよりも高いことが知られています。

ニュー・クレイグモントプロジェクトにおける銅鉱化の一例。岩石中に銅鉱物(緑色)が確認できる。 
写真提供:NICOLA MINING Inc.

かつてのクレイグモント鉱山は、この地域に豊富な銅鉱化が存在することを示す実績そのものです。周辺にはまだ探査が進んでいない土地が広がっており、新たなスカルン型・斑岩型鉱床が見つかる可能性も十分にあります。銅の探鉱では立地が極めて重要ですが、北米最大級の銅生産拠点のすぐ隣という位置は、地質的な条件の近さ、既存インフラへのアクセス、そして将来的な戦略の幅という点で、大きなアドバンテージになると考えています。

本年には、新たに発見された斑岩(ポーフィリー)への掘削を実施する予定です。

地用付近の鉱化帯を確認するために掘削されたトレンチ。探鉱活動の初期段階を表す。
写真提供:NICOLA MINING Inc.

NASDAQ上場の進捗

── ニコラ社は現在NASDAQへの上場準備を進めているとのことですが、現在の状況と今後の見通しを教えてください。

ピーター:米国での公募の完了を経て、4月中にはNASDAQでの取引を開始する予定です。今回の公募は、NASDAQまたはニューヨーク証券取引所へのアップリスティング(格上げ上場)に直接関連した、カナダ企業としては初の事例であり、米国預託証券(ADS)によって構成されています。

資本市場の観点からは、ADSプログラムによって流動性の向上、投資家層の拡大、米国指数への採用促進、そしてバリュエーションの比較可能性の向上が期待できます。

このプロセスを通じて分かったのは、米国の機関投資家は企業の事業構造やマイルストーンに対する鋭い分析力を持っている一方、カナダの個人投資家は探鉱に関する深い知見を持っているということです。ニコラ社はその両方の投資家層にアピールできる企業であり、NASDAQ上場によって投資家への露出と市場流動性がさらに拡大することを期待しています。

現在直面している課題

── 現在の事業拡大フェーズにおいて、ニコラ社が直面している最大の課題は何でしょうか?

ピーター:現時点での最大の過大は、世界情勢の不安定化によって「投資家心理」の悪影響を受けていることですが、これは私たちのコントロール外のことです。

当社がコントロールできる範囲での最大の課題は、ドミニオン・プロジェクトでの金生産の開始と、トレジャー・マウンテンの操業再開を着実に軌道に乗せることです。

現在、中国をはじめ世界各国の銅関連企業からの関心は高まっています。個人的には、日本の企業にもっと関わっていただきたいと思っているのですが、日本からの関与が現状まだ限定的である点は残念に感じています。

ニコラ社の長期ビジョン

── 多くのジュニア鉱山会社がプロジェクト売却を出口戦略とする中で、御社は異なるアプローチを取られています。ニコラ社の長期的なビジョンを教えてください。

その違いこそが、ニコラ社を理解する上での鍵だと考えています。当社は、資産を証明して売却するだけの従来型のジュニア企業ではありません。BC州において、より持続可能で自律的な鉱業プラットフォームを構築している企業です。

当社のモデルは多層的な価値を生み出す設計になっています。メリット・ミルによる運営キャッシュフロー、自社プロジェクトの開発スケジュールの制御、外部インフラへの依存の低減、そしてニュー・クレイグモントによる長期的な探査のアップサイド。探鉱から処理、生産、市場アクセスに至るまで、各段階で価値を取り込める構造を目指しています。

日本の投資家、金属産業の関係者へのメッセージ

── 日本は銅をはじめとする多くの資源を海外に依存しており、資源安全保障やサプライチェーンの多様化が大きなテーマとなっています。日本の投資家や金属産業に携わる方々に向けて、ニコラ社をどのような企業として理解してほしいとお考えでしょうか。

当社は、資源の所有、処理インフラ、そして運営の柔軟性を一つのプラットフォームに統合した、独自のポジションを持つカナダの鉱山企業です。

日本の投資家や業界関係者の皆様にとっての当社の意義は、単に鉱物資産を保有していることではなく、世界で最も信頼される鉱業管轄区の一つであるBC州において、戦略的なインフラをコントロールしている点にあります。

当社は、長期的な銅の探査ポテンシャルを持つニュー・クレイグモント、高品位銀鉱山として再開を目指すトレジャー・マウンテン、そして短期的な金生産が見込めるドミニオン・クリークという3つのプロジェクトを保有しています。そして最も重要なのは、これらの鉱石をすべて自社のメリット・ミルで処理できるという点です。いつ、どのように鉱石を処理するかを自社で決められるのは、多くのジュニア企業にはない大きな強みだと考えています。

電動化の進展、地政学的リスクの高まり、サプライチェーンの安全性への関心が増す中で、ニコラ社は銅・金・銀という戦略的に重要なコモディティへのアクセスを提供します。長期的な資産の質、安定した法治環境、そしてインフラに裏打ちされたビジネスモデルを重視される日本のステークホルダーの皆様にとって、当社は特に親和性の高い存在だと考えています。

ニコラ社を、単なる探鉱企業ではなく、処理・開発・生産までを統合した、より回復力のある鉱業プラットフォームとして見ていただければ幸いです

※本インタビューは英語で行われた内容を、日本語に翻訳・編集しています。文意を損なわない範囲で再構成しています。

取材・文:山本峻

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【出典】

Nicola Mining Inc.

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