ロシアに次いで世界第2位の広大な国土を持つカナダは、ロッキー山脈やナイアガラの滝といった雄大な自然、そして多文化が共存する国として知られています。また豊富な資源を背景に持ちながら、先進的な経済・社会システムも兼ね備えており、日本にとっては重要な貿易相手国であると同時に、魅力的な投資先でもあります。
本記事では、カナダの基本情報に加え、経済の特徴や資源の豊かさ、そして投資先としての魅力について紹介します。
カナダは1867年に連邦が結成され、1928年に日本と外交関係を樹立しました。国土の大部分はまだ手つかずの自然が残されており、日本の27倍もの面積に対して約4000万人の人口があります。
また世界的に見ても優れた治安と生活水準の高さから、観光だけでなく留学やワーキングホリデーなどの長期滞在先としても人気を集めています。
カナダの基礎データ
出典:外務省 カナダ基礎データ
2023年におけるカナダのGDPは2兆1401億ドル(世界10位)に達し、G7の一員として世界経済において重要な位置を占めています。
カナダの経済は多様な産業で構成されています。一般的に資源国家としてのイメージが強いものの、実際にはサービス業や製造業も発達しており、バランスの取れた産業構造を有しています。
カナダの主要産業
出典:Government of Canada 10 Key Facts on Canada’s Natural Resources – 2023
またカナダは15の自由貿易協定に参加しており、これにより世界のGDPの約61%とつながるサプライチェーンにアクセスすることが可能になっています。この開放的な貿易政策は、投資先としてのカナダの魅力を高める重要な要素となっています。
出典:外務省 カナダ基礎データ 主要貿易品目 主要貿易相手国
投資先としてのカナダには、以下のような魅力があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
カナダの最大の強みの一つは、その豊富な天然資源です。世界第4位の石油生産国、第5位の天然ガス生産国であり、石油埋蔵量はロシアを上回ります。カナダ統計局のデータによれば、2022年のカナダの天然資源富(厳選された天然資源埋蔵量のドル換算額)は史上最高の2兆5560億ドルに達しました。これは一人当たり約6万ドル相当の資源を有していることになります。
カナダ全土に存在する天然資源

出典:Government of Canada Canada’s Minerals and Mining Map
2023年の腐敗認識指数で、カナダはG7では2番目、世界では12番目に腐敗の少ない国として評価されています。この政治的安定性は、長期的な資源開発投資を呼び込む重要な要素です。資源国の中には政治的に不安定な国も多い中、カナダの安定した民主主義体制は、投資リスクを大幅に低減します。
カナダは法人税率がG7の中でも比較的低く、連邦税と州税を合わせた実効税率はおよそ26.5%前後です。資源分野では様々な税制優遇措置も活用できるため、実質的な負担はさらに軽減されることもあります。特に鉱業分野では探鉱支出の税控除なども整備されており、資金調達環境の整った国として世界中の鉱山会社が集まっています。
高等教育を受けた人材の割合が世界トップクラスであり、多言語対応可能な人材も豊富です。OECDのデータによれば、労働年齢人口に占める大卒・短大卒の割合は62%で、OECD諸国中第1位です。英語・フランス語はもちろん、移民の多様性を反映して様々な言語に対応できる人材が揃っており、グローバルなビジネス展開に有利な環境が整っています。
世界的な環境意識の高まりの中、カナダは資源開発と環境保護のバランスを取る先進的な取り組みを進めています。
カナダは「グローバル・クリーンテック100」で第2位、水力発電で第4位を誇り、クリーンテック関連の共同研究開発における世界的な中心地として知られています。カナダの総電力量の70%近くを再生可能エネルギーが占めており、世界の大規模なCO2回収・貯留・利用(CCS)プロジェクトの20%を担っています。
特筆すべきは、カナダの液化天然ガス(LNG)産業です。今後数年以内に、カナダは世界最低レベルの排出量のLNGを国際市場に輸出する予定であり、これは地球規模での排出削減に貢献する可能性があります。
例えば、インドの石炭消費増加を相殺するためにカナダのLNGを輸出することは、カナダ経済全体を停止させるよりも大きな地球規模での排出削減効果をもたらすとの分析もあります。このように、カナダの資源開発は地球環境問題の解決に寄与する可能性を秘めています。
カナダのエネルギー・資源部門では、先住民のリーダーシップと参加が急速に成長しています。2017年以降、先住民はパイプライン、発電所、LNGターミナルなどのプロジェクトに約40億ドルの出資をしており、石油・天然ガス部門は現在、カナダで最大の先住民の資本所有源となっています。
これは単なる経済的恩恵にとどまらず、歴史的な和解と新たな協力関係の構築を示す重要な事例です。先住民族との関係構築は、カナダにとって重要な社会的・経済的課題となっています。
日本とカナダは互いに重要な経済パートナーです。2023年における日本からカナダへの直接投資残高は493億カナダドルに達し、インド太平洋地域で最大、世界第3位の投資国となっています。この数字は、両国の経済関係の深さを示しています。
2023年の日本とカナダの貿易状況
出典:外務省 カナダ基礎データ
カナダ政府の統計によると、2023年におけるカナダの日本向け商品輸出総額は158億カナダドル、日本からの輸入は207億カナダドルでした。以下は2015-2017年の平均値に基づくカナダから日本への主要輸出品です。
2015~2017年における日本への輸出平均額(カナダドル)

出典:Government of Canada
Government of Canada Top Canadian Exports to Japan (2015 - 2017 average,$CAD)より作成
このデータから分かるのは、カナダと日本の経済関係が“資源と製造”という形で明確に補完し合っているということです。
カナダは鉱物資源やエネルギーなど、原材料や基盤資源の供給国として、日本は自動車や機械・精密機器など、高度な加工技術と製品輸出の国として、それぞれの強みを活かす形で貿易関係を築いています。
こうした相互依存的な構造は、両国間の鉱業・資源分野における連携や、今後の投資協力にもつながっていくと考えられます。
日本とカナダの鉱業分野における協力は、両国にとって戦略的重要性を持ちます。日本は安定的な鉱物資源確保が不可欠で、カナダは豊富な資源を活用した経済発展を目指しています。
2023年9月、「バッテリーサプライチェーン」と「産業科学技術」に関する協力覚書が締結され、JOGMECもFPX社とニッケル探鉱を開始するなど、日本の資源安全保障に貢献しています。企業レベルでも三菱商事がリチウム鉱山開発に、住友金属鉱山がコテ金鉱山プロジェクトに参画するなど、鉱業という分野においても、カナダと日本の協力関係は着実に深まりを見せています。
世界第2位の広大な国土と多様な天然資源を持つカナダは、経済的にも社会的にも安定した環境を備えた、投資先として非常に魅力的な国です。
鉱業やエネルギー分野では、日本と補完的な関係を築きながら、資源供給国としての地位を確立しており、両国の協力は今後さらに深まっていくと考えられます。
こうした背景を理解することで、カナダが「遠い外国」ではなく、「投資対象として現実的な選択肢」として見えてくるのではないでしょうか。
次回は、カナダの鉱業事情について、その特徴や強みについて解説します。
【出典】
外務省 カナダ基礎データ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/canada/data.html
Invest in Canada Industries
https://www.investcanada.ca/industries/mining
Government of Canada Canada’s natural resource wealth, 2023
https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/241120/dq241120c-eng.htm
カナダ政府 日加関係
https://www.international.gc.ca/country-pays/japan-japon/relations.aspx?lang=jpn
Canadian Association of Petroleum Producers (CAPP) Unlocking Canada’s Economic Strength and Place in the World
hrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.capp.ca/wp-content/uploads/2024/05/BC-Chamber-of-Commerce-AGM-1.pdf
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