地政学リスクの急上昇を受けて金価格が下落

July 13, 2026

本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した“Weekly Roundup” の内容を翻訳・再構成したものです。

中東戦争が再び勃発するも金価格は下落

中東で新たな攻撃が発生したものの、金価格は1.8%下落し、1オンスあたり4,144米ドルとなった。市場では、インフレや地政学リスクに対する安全資産としての需要よりも、原油価格の上昇が利上げや債券利回りの上昇につながるとの見方が優勢となったためだ。

金と主要資産の価格比率が平準化、Mako Miningが最新資源量を公表

今年の金価格の下落と他のコモディティ価格の大幅な変動を受け、金と主要資産との価格比率は長期平均に向けて平準化が進んでいる。一方、Mako MiningはMossプロジェクトの最新の資源量推定を公表した。

金価格の下落を受け、金関連株も下落

金価格の下落を受けて金関連株は下落し、GDXは-3.7%、GDXJは-3.9%下落した。これは大型株のパフォーマンスを下回るもので、S&P500は0.9%上昇、ナスダックは1.1%上昇した。一方、小型株は下落し、ラッセル2000は-0.6%下落した。

図1:金先物価格の週間パフォーマンス

図2:金鉱株ETF

図3:金先物および金鉱株ETFの価格パフォーマンス

地政学リスクの急上昇を受けて金価格が下落

中東で紛争が再燃したにもかかわらず、金価格は1.8%下落し、1オンスあたり4,114米ドルとなった。今回の情勢悪化は金価格に影響を与える複数の要因に作用したものの、市場では下落要因がより強く意識されたようだ。

最大の要因は原油価格の上昇である。ブレント原油は今週5.3%上昇し、インフレ圧力が再び高まるとの見方が強まった。

インフレの高まりは金価格に対して相反する影響を及ぼす。一つは、インフレ率の上昇を受けてFRBなど主要中央銀行が追加利上げを行い、実質金利が上昇するとの見方である。

実質金利が上昇すると、利息を生まない金を保有する機会費用が高まるため、一般的には金価格の下押し要因となる。実際、米10年国債利回りは今週1.6%上昇して5.6%となり、2026年5月以来の高水準を付けた。

一方で、インフレ率の上昇は金のインフレヘッジとしての需要を高める要因にもなる。しかし現時点では、市場は前者の影響をより重視しているようだ。

また、利上げ観測の高まりは通常ドル高要因となり、金価格には逆風となる。ただし、今週の米ドル指数は0.13%の小幅上昇にとどまり、債券利回りほど大きな反応は見られなかった。

本来であれば、中東情勢の悪化による地政学リスクの高まりも金価格を押し上げる要因となるはずだった。しかし市場は、中東で実現していた停戦が一時的なものに過ぎないとある程度織り込んでいた可能性があり、今回の紛争再開は大きなサプライズとは受け止められなかったようだ。

米国株式市場では、金利上昇や地政学リスクの高まりにもかかわらず、大型株は堅調な推移となった。こうした材料はすでに市場に織り込まれていた可能性がある。

S&P500は0.9%、ナスダックは1.1%それぞれ上昇した。一方、小型株中心のラッセル2000指数は0.6%下落し、投資家のリスク選好にはやや慎重さが見られた。

また、米国のハイテク株は底堅く推移したものの、韓国市場では世界的なハイテク株ブームの失速を示唆する動きが続いた。大型半導体株が指数を押し上げてきた韓国のKOSPI指数は今週さらに14.0%下落し、2026年6月下旬の高値からは25.3%下落している。

金価格の下落を受け、金鉱株も軟調だった。GDXは3.7%、GDXJは3.9%それぞれ下落した。

金と主要商品の価格比率が正常化

今年の金価格と主要コモディティとの価格比率を見ると、2025年から2026年初頭にかけて中期平均から大きく乖離していた複数の指標が、足元では平準化に向かっていることが分かる。

多くの比率は過去数年間の平均水準に近づいており、一部の資産で見られた過度な価格変動が落ち着き、市場の関心が投機からファンダメンタルズへ戻りつつある可能性を示している。

こうした動きは、金価格が1オンス当たり約4,000米ドルまで調整したことで市場の過熱感が和らぎ、5,000米ドルを超える水準は少なくとも短中期的には持続が難しかったことを示唆している。

金銀比率は、その典型的な例である。2025年前半には金価格の急騰を受けて同年4月に104.7倍まで上昇し、2021~2026年平均の80.1倍を大きく上回った。その後、2025年後半から2026年初頭にかけて銀価格が急伸したことで、比率は45.9倍まで急低下した(図4)。

今年に入り、金と銀の価格がともに下落した結果、金銀比率は69.9倍まで戻り、中期平均に近い水準となっている。年初まで続いた両金属への投機的な資金流入が一巡し、市場がよりファンダメンタルズを重視する局面へ移行しつつあることを示す動きといえそうだ。

図4、5:金銀比率、金銅比率(2021年~2026年)

銅と金の価格比率も、中期平均へ回帰する動きを見せている。2026年1月には、金価格が急騰する一方で銅価格が比較的横ばいだったことから、この比率は0.0011まで低下した(図5)。その後、2026年3月頃から銅価格が上昇し始める一方、金価格は下落したため、比率は0.0016まで回復している。

ただし、この比率は米国のCME銅先物価格を基に算出しているため、やや割り引いて見る必要がある。過去1か月間で、CME銅先物と英国LME銅先物との価格差(スプレッド)は約6.0%まで拡大している。

この背景には、米国が銅への追加関税を導入するとの観測を受け、関税発動前に銅を確保しようとする動きが広がったことがある。トレーダーが米国内で銅を積み増したことで、CME価格がLME価格を大きく上回る状況となっている。

米商務省は2026年6月30日、銅市場に関する調査報告書を政府へ提出し、追加関税の導入を勧告したと報じられているが、政府による最終判断はまだ示されていない。

一方、LME価格を基準に算出した銅・金価格比率も上昇しているものの、その水準は0.0014と、CMEベースほど大きな上昇ではない。

今後の米国政府の判断次第では、銅価格は大きく変動する可能性がある。特に、実際の関税率が市場予想を下回れば、現在のCMEとLMEの大幅な価格差が縮小し、銅価格にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

図6、7:金対プラチナの比率(2021~2026年)、金銀比率(1915~2020年)

金とプラチナの価格比率は、2025年4月に3.56倍まで上昇した後、2026年1月には1.80倍まで低下した。その後は再び上昇に転じ、2026年3~6月の中期平均である約2.2倍付近まで回復している。足元ではさらに上昇し、過去1か月では2.58倍となった(図6)。

一方、金銀比率は中期平均へ回帰しているものの、長期的に見ると依然として高い水準にある。2021~2026年の平均は80.1倍で、1980~2020年の長期平均である54.1倍を大きく上回っており、この背景には市場構造の変化がある可能性がある(図7)。

これに対し、銅と金の価格比率は長期的に大きな変化は見られない。1980~2020年の平均は0.0020で、2021~2026年の平均も0.0019とほぼ同水準となっている(図8)。

図8、9:長期間における銅と金の比率(1960~2020年)、金と原油の比率(2021~2026年)

中東戦争の影響で原油価格が上昇したことを受け、金と原油の価格比率は大きく低下した。2026年1月には79.0倍まで上昇していたが、その後は43.7倍まで低下し、2021~2026年の中期平均である32.6倍に近づいている(図9)。

もっとも、この水準は1980~2020年の長期平均である20.1倍を依然として上回っており、歴史的に見れば金価格はなお相対的に高い水準にある。ただし、近年大きく乖離していた金と原油の価格関係は、徐々に正常化へ向かっていることがうかがえる(図10)。

一方、CRB指数を用いた金・コモディティ価格比率も、2026年1月の13.5倍から8.7倍まで低下した。依然として2021~2026年平均の7.7倍をやや上回るものの、こちらも主要コモディティと金の相対価格が中期平均へ回帰しつつあることを示している(図11)。

図10、11:長期間における金と原油の比率(1960~2020年)、金とCRBの比率(2021~2026年)

図12、13:メジャー金鉱株とTSXVのジュニア金鉱株

メジャー金鉱株はすべて下落し、TSXV金鉱株の大半も下落した

メジャー金鉱株は金価格の下落を受けて軒並み下落したほか、TSXV金鉱株も全体的に軟調な展開となった(図12、13)。

カナダ国内を中心に事業を展開するTSXV金鉱株では、Talamore MiningがCoffeeプロジェクト向け資金調達の拡大を発表したほか、Osisko DevelopmentはCaribooプロジェクトの掘削結果を公表した。

New Found Goldは許認可の更新状況を報告し、Amex ExplorationはPerronプロジェクトにおけるバルクサンプルプログラムの進捗を発表した。また、Gold X2はフィンランドのRajapalotプロジェクトにおけるコバルト回収に関する覚書(MOU)の締結を発表し、スウェーデンでは新たな環境マネージャーを任命した(図14)。

一方、海外を中心に事業を展開するTSXV金鉱株では、Mako MiningがMoss鉱山の最新資源量推定を公表したほか、Goldsky MineralsとFounders Metalsは新たな経営陣の就任を発表した。また、Goldgroup Miningは株式併合および合併計画が承認されたと報告している(図15)。

図14:カナダ国内におけるジュニア金鉱会社の最新情報

図15:カナダの海外展開ジュニア金鉱会社の最新動向

Mako MiningがMoss鉱山の最新資源量を公表 

Mako Miningは、米国アリゾナ州のMoss鉱山について、前回の発表からわずか6か月後となる最新の資源量推定を公表した。今回の推定では、前回の測定・概測・予測資源量から、確定・推定埋蔵量へと評価区分が大きく進展している。

2025年12月時点の資源量は金76万8,000オンスで、このうち大部分を占める53万4,000オンスが概測資源だった。これに対し、今回の推定では金の確定・推定埋蔵量は合計59万8,000オンスとなり、そのうち47万9,000オンスを推定埋蔵量が占めている(図16)。

銀の確定・推定埋蔵量は合計629万6,000オンスで、前回公表された資源量の783万1,000オンスを下回った。

図16:モス鉱山の資源推定量

同社は2025年3月にMoss鉱山を買収し、2025年第2四半期から生産実績に反映されている。2026年第1四半期の金生産量は3,200オンスだった(図17)。

同社の主力資産はニカラグアのSan Albino鉱山で、2026年第1四半期には1万600オンスの金を生産した。一方、Moss鉱山は操業開始から間もないことから、生産量はまだ立ち上げ段階にあり、AISC(総維持コスト)は比較的高い水準にある。今後は年間平均3万オンスの金生産を目標としており、現在の生産水準から約3倍への増産を見込んでいる(図18)。

この見通しは、今回公表された最新の資源量推定と併せて示された生産モデルに基づくものである。一般的には、生産開始前に確定・推定埋蔵量の算定や、PEA(予備的経済性評価)などを通じて長期的な生産計画やコスト見通しが示される。

しかし、Mako Miningはこうしたプロセスを経ることなく生産を開始しており、今回初めて確定・推定埋蔵量を公表した。同社は、Moss鉱山が年間3万オンスの金を約15年間生産できると見込んでおり、これは過去1年間に約3万5,000オンスを生産したSan Albino鉱山に近い生産規模となる(図19)。

San Albinoプロジェクトの資源量は38万オンス、隣接するLas Conchitasプロジェクトは15万8,000オンスで、両プロジェクトを合わせた資源量は53万8,000オンスとなる。現在の生産ペースを前提とすれば、10年以上の操業が可能とみられる(図20)。

また、Moss鉱山の確定・推定埋蔵量は59万8,000オンスである。これに加え、ネバダ州のMount Hamiltonプロジェクトでも約59万9,000オンスの金埋蔵量を有しており、2027年までの操業開始を計画している。さらに、資源量180万オンスを有するガイアナのEagle Mountainプロジェクトも将来の生産拡大に寄与する見込みである。

図17、18:Mako Miningの生産量と総維持コスト(AISC)

図19、20:Moss鉱山の生産モデル、Mako Miningの資源量

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著者:Ben McGregor

Ben McGregor 氏は、CanadianMiningReport.com において「Weekly Roundup」を執筆している分析者であり、金属・鉱業セクターに関する鋭い視点で知られている。市場トレンドを見抜く能力に長け、複雑な市場の動きを TSXV(トロント・ベンチャー取引所)のジュニア鉱山企業を中心に、簡潔かつ分かりやすい洞察へと落とし込んでいる。

毎週のレポートでは、金・銅・ウランなど幅広いテーマを扱い、データに基づく分析と投資機会を見極める視点を組み合わせて、読者に価値ある情報を提供している。ダイナミックに変動するジュニア鉱山セクターにおいて、投資家にとって重要な情報源となっている人物である。

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