本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した“Weekly Roundup” の内容を翻訳・再構成したものです。
金価格は2.2%下落し、1オンスあたり4,013米ドルとなった。週半ばには一時3,986米ドルまで下落し、年初来安値を更新したが、その後はやや持ち直した。米国のインフレ率が大幅に低下したことで、ドル安や米国債利回りの低下、地政学リスクの高まりといった金価格の支援材料を相殺したようだ。
今年に入ってからの金価格の下落は比較的緩やかであり、足元で続くハイテク株市場の混乱と比べると、その値動きは限定的となっている。特に韓国市場では、半導体株が急騰した後に急落するなど、極めて大きな価格変動が続いている。
金価格の下落を受け、金鉱株も軟調な展開となった。GDXは5.6%、GDXJは6.8%それぞれ下落し、ともに年初来安値を更新した。一方、主要株価指数の下落率はこれを下回り、S&P500は1.2%安、ナスダックは2.2%安、ラッセル2000は0.4%安となった。
図1:金先物価格の週間パフォーマンス

図2:金鉱株ETF

図3:金先物および金鉱株ETFの価格パフォーマンス

金価格は2.2%下落し、1オンスあたり4,013米ドルとなった。週半ばには一時3,986米ドルまで下落して年初来安値を更新したものの、その後は心理的節目である4,000米ドルを上回る水準まで持ち直した。
下落の主因となったのは、2026年6月の米国インフレ率が大幅に鈍化したことだとみられる。インフレ率の低下は通常、利上げ観測の後退を通じて株式市場を支える材料となる。しかし今週は大型株が下落し、S&P500は1.2%安となった。
背景にはハイテク株の弱さがある。韓国の半導体株急落が他市場へ波及するとの懸念から、ナスダックは2.2%下落した。小型株も軟調だったが、ラッセル2000指数の下落率は0.4%にとどまり、主要指数の中では比較的底堅い動きとなった。
金鉱株も下落基調が続き、年初来安値を更新した。GDXは5.6%、GDXJは6.8%それぞれ下落した。
足元の金価格の動きは、市場の金に対する評価に一貫性が欠けていることを示している。ファンダメンタルズが上向いても下向いても、金価格には下落圧力がかかっているように見えるためだ。
今週以前、市場ではインフレ率の上昇が米国の利上げ観測を強め、米ドルと実質金利の上昇を通じて金価格を押し下げるとの見方が優勢だった。また、中東情勢の沈静化も安全資産需要を弱め、金価格のさらなる下落要因になるとみられていた。
図4:米国消費者物価指数(CPI)のインフレ率、金価格

今週は、インフレ率の低下に加え、中東情勢の悪化を受けて米ドルと米国債利回りが低下した。本来であれば、こうした環境は金価格を支える要因となるため、市場では金を売るのではなく買い戻す動きが強まっても不思議ではなかった。
それにもかかわらず金価格が下落した背景には、市場が今回のCPI低下を強く意識し、他の要因を上回る材料として評価した可能性がある。ただし、インフレと、その根本にある金融緩和は依然として金価格を支える長期的な要因である。
一方で、この見方には矛盾もある。もし市場がインフレ指標をこれほど重視するのであれば、2026年6月に2026年5月の米国CPIが前年同月比4.2%上昇したと発表された際には、金価格はさらに大きく下落していても不思議ではなかった(図4)。
別の解釈として考えられるのは、2026年6月のインフレ率が3.5%まで低下したとはいえ、2026年5月のエネルギー価格急騰の影響もあり、依然として過去1年間と比べれば高い水準にあることだ。短期的には利上げ観測が後退したものの、市場では依然として追加利上げが織り込まれており、7月会合での利上げ確率は13%、9月まででは50.5%、12月まででは79%と予想されている。
また、中東情勢が再び緊迫化していることから、市場は今回のインフレ率低下を一時的なものとみなし、原油価格が再び上昇すると見込んでいる可能性もある。実際、今週の原油価格は7.0%上昇した。
さらに、食品とエネルギーを除くコアCPIは2026年6月に2.8%から2.6%へ低下したものの、過去1年間を通じてみれば依然として大きな変化はなく、比較的安定した推移を続けている。このため、市場は今回のインフレ率低下を一時的な要因と捉え、金価格へ積極的に織り込むことには慎重だった可能性がある。
こうしたファンダメンタルズに加え、2025年末から2026年初頭にかけて過熱していた金市場が調整局面に入っていることも、大きな要因と考えられる。金価格の急騰を支えた短期投機筋や多くの個人投資家は、現在では市場からほぼ撤退しているとみられる。実際、金価格は2026年1月末に付けた終値ベースの最高値である1オンスあたり5,318米ドルから24.3%下落している(図5)。
図6:投資銀行の金価格予測と実際の金価格の比較

2026年初頭に金価格に対して強気へ転じた投資銀行は、最近になって相次いで金価格の目標値を引き下げ始めた。これは、金が市場で「コンセンサストレード(多くの投資家が同じ方向に賭ける取引)」となり、過熱感が高まっていたことを示す一つのサインとも考えられる。
もっとも、過去の実績を振り返ると、投資銀行による金価格予想は必ずしも精度が高いとは言えない。そのため、今回の目標価格引き下げは、むしろ金価格が底打ちに近づいている兆候である可能性もある。
実際、2019年から2025年にかけての強気相場では、投資銀行の予想価格は一貫して実際の金価格を下回っていた。予想と実績の乖離は、2023年が8%、2024年が2%、2025年には47%にも達している。今年初めになってようやく市場価格を上回る目標値を提示したものの、その直後に相次いで目標価格を引き下げる展開となった。
現在の投資銀行各社の2026年平均目標価格は1オンス当たり約5,000米ドルで、従来の約5,300米ドルから平均6.1%引き下げられている。それでもなお、市場価格を約25%上回る水準にある。金価格が早期に持ち直さなければ、今後さらに目標価格が引き下げられる可能性もあるだろう(図6)。
図7:世界の主要機関の金価格と実際の金価格の比較

金価格予測を公表している主要機関である世界銀行とオーストラリア首席エコノミスト事務所(AOCE)も、2019年から2025年にかけての金価格上昇局面を通じて、実際の金価格を一貫して大幅に過小評価していた(図7)。
両機関の予測が実際の金価格に最も近づいたのは、金価格が比較的横ばいで推移した2021年と2022年である。
一方、2026年の予測は投資銀行とはやや異なる。投資銀行が依然として市場価格を上回る目標価格を提示しているのに対し、世界銀行とAOCEはいずれも市場価格を大きく上回る予測は示していない。
世界銀行の予測は現在の市場価格をなお大きく下回っている一方、AOCEの予測はおおむね現在の市場価格と同水準となっている。
もっとも、金を9か月以上保有している投資家の多くは、現時点でも大きな損失を被っていない。大幅な下落の影響を受けているのは、主に2025年12月から2026年1月にかけての短期間に高値圏で購入した投資家である。
一方、2025年半ば以前に金へ投資した場合、依然として大きな利益が残っている。金価格は2025年1月の1オンスあたり2,638米ドルから約4,000米ドルまで上昇しており、上昇率は51.6%に達する(図8)。
同期間では、金鉱株の上昇率は金価格をさらに上回った。GDXは2025年1月の42米ドルから92米ドルへ119%上昇し、GDXJも34米ドルから71米ドルへ109%上昇している(図9)。
図8、9:金価格と金鉱株の推移

金価格は調整局面にあるものの、空売りを狙うトレーダーにとっては、値動きの大きさという点で必ずしも魅力的な市場とは言えない。2026年4月、5月、7月(現時点)までの月間下落率はいずれも約1.0%にとどまり、大幅な下落となったのは2026年3月と6月の11.0%超のみだった(図10)。
全体として見ると、今回の調整は比較的秩序だったものであり、市場全体にパニックが広がっている状況ではない。
金鉱株も同様の動きを示したが、金価格に対するレバレッジ効果があるため、値動きはより大きかった。GDXとGDXJは2026年4月に5.0%未満の下落となった後、5月にはそれぞれ1.0%超、2.0%超上昇した。一方、7月にはともに5.0%を超える下落となった(図11)。
特に2026年3月には20%超、6月には15%超の下落を記録し、数か月にわたり厳しい局面が続いた。しかし、長期にわたって下落が続くような本格的な弱気相場には至っていない。
エネルギーセクターでは、年初3か月は力強い上昇が続いた後、2026年第2四半期は緩やかな調整局面となり、7月に再び大きく反発した(図12)。
この上昇は中東紛争だけによるものではない。市場では、割高となったハイテク株から、エネルギーを含む相対的に割安なセクターへ資金がシフトしており、実際にエネルギー株は2026年3月の中東紛争激化以前から上昇基調にあった。
その後、中東情勢の悪化による原油価格の急騰がセクター上昇を後押しした一方、市場が数か月以内の停戦を織り込み始めると原油価格は調整した。しかし今月は、中東で攻撃が再び激化したことを受け、原油価格とエネルギー株はいずれも反発している。
一方、今年最も大きな値動きを見せたのは依然としてハイテクセクターだった。特に韓国市場では、AIブームの恩恵を受けたサムスン電子やSKハイニックスなど半導体株がKOSPI指数を押し上げ、2026年1月、2月、4月、5月にはそれぞれ24.0%、19.5%、25.0%、28.4%上昇した。一方で、3月には15.5%下落している(図13)。
しかし、市場がAIブームの持続性に疑問を抱き始めたことで半導体株は急落し、KOSPIは6月に横ばいとなった後、7月には19.5%の急落を記録した。
これは、AI関連株で初めて本格的な調整局面が表面化したことを意味しており、テクノロジーセクターも大幅な下落を免れないことを示している。
こうした韓国ハイテク株の急激な値動きと比較すると、2026年の金価格や金鉱株の調整は、依然として比較的穏やかなものにとどまっている。
図10、11:金と金鉱株の月別株価推移

金価格は、需要の大部分を金融要因が占め、産業用途による需要が比較的限定的であることから、ハイテクセクターの大幅な調整による影響は限定的と考えられる。一方、銀は金融需要と産業需要の比率が比較的均衡しているため、ハイテクセクターの動向から金よりも大きな影響を受けやすい。
ハイテクセクターの影響を最も強く受ける主要金属は銅である。AI向けデータセンターの建設需要が拡大したことで、銅需要は大きく押し上げられ、アルミニウムを上回る伸びを示した。アルミニウムもAI関連需要の恩恵を受けているものの、その増加幅は銅ほどではない。
一方、鉄鉱石、ニッケル、亜鉛といった主要金属は、需要の大半を鉄鋼産業が占めているため、ハイテクセクターの減速による影響は比較的小さい。鉄鋼需要全体に占めるデータセンターやAI関連施設向け建設需要の割合は依然として限定的であり、不動産やインフラ向け需要の方がはるかに大きい。
このため、世界的なハイテクセクターのさらなる低迷が金属市場全体に深刻な打撃を与える可能性は、現時点では高くないと考えられる。
図12、13:エネルギーセクターと韓国市場の株価推移

図14、15:メジャー金鉱株とTSXVのジュニア金鉱株

メジャー金鉱株はいずれも2週連続で大幅な下落を記録し、TSXV上場の金鉱株も大半が下落した(図14、15)。主に国内で事業を展開するTSXV上場の金鉱株では、Artemis Goldが026年第2四半期の生産実績を発表し、Osisko Developmentは社名をOsisko Goldに変更すると発表。
Amex GoldはCMAC-ThyseenがPerronバルクサンプルプログラムの地下採掘の請負業者になると発表し、Gold X2はMoss鉱山の1.0%の正味製錬ロイヤルティを子会社にスピンアウトし、NYSEに上場する計画を発表し、TSXVに6:1の株式併合の承認を申請した
主に海外で事業を展開するTSXVの金鉱会社では、Mako MiningとThor Exprorationsが2026年第2四半期の生産実績を発表し、Founders MetalsがAntinoプロジェクトの掘削結果を発表した(図17)。
図16:カナダ国内におけるジュニア金鉱会社の最新情報

図17:カナダの海外展開ジュニア金鉱会社の最新動向

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Ben McGregor 氏は、CanadianMiningReport.com において「Weekly Roundup」を執筆している分析者であり、金属・鉱業セクターに関する鋭い視点で知られている。市場トレンドを見抜く能力に長け、複雑な市場の動きを TSXV(トロント・ベンチャー取引所)のジュニア鉱山企業を中心に、簡潔かつ分かりやすい洞察へと落とし込んでいる。
毎週のレポートでは、金・銅・ウランなど幅広いテーマを扱い、データに基づく分析と投資機会を見極める視点を組み合わせて、読者に価値ある情報を提供している。ダイナミックに変動するジュニア鉱山セクターにおいて、投資家にとって重要な情報源となっている人物である。