本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した“Weekly Roundup” の内容を翻訳・再構成したものです。
米国の雇用統計が市場予想をやや下回ったことを受け、年内の利上げ観測が後退し、金価格は2.7%上昇して1オンスあたり4,187米ドルとなった。これを受けて米ドルと米国債利回りはいったん低下したものの、利回りは週末にかけて持ち直した。
米国政府は早ければ今週にも銅関税に関する決定を発表するとみられており、その内容は短期的な銅価格の方向性を左右する重要な材料となる可能性がある。一方で、一部の調査機関は今後数年間に大幅な供給過剰が発生すると予測しており、中長期的には価格の下押し要因となる可能性もある。
金関連株は年初来安値圏から反発し、GDXは1.9%、GDXJは2.6%上昇した。
株式市場全体も持ち直し、大型株中心のS&P500は2.3%、ナスダックは2.9%上昇した。一方、小型株中心のラッセル2000指数は0.2%の上昇にとどまり、相対的に出遅れる展開となった。
図1:金先物価格の週間パフォーマンス

図2:金鉱株ETF

図3:金先物および金鉱株ETFの価格パフォーマンス

2026年6月の米国雇用統計が市場予想を下回ったことを受け、金価格は2.7%上昇し、1オンスあたり4,187米ドルとなった。雇用の減速が示されたことで、ここ数か月の堅調な雇用情勢を背景に高まっていた利上げ観測が後退したためである。
これを受けて米ドルは下落した。一方、米10年国債利回りは発表直後に低下したものの、その後は持ち直し、週末時点では前週末を上回る水準で取引を終えた。
利上げ観測の後退を受け、株式市場も上昇した。S&P500は2.3%、ナスダックは2.9%上昇した一方、ここ数週間に大型株を上回るパフォーマンスを見せていた小型株中心のラッセル2000指数は0.2%高にとどまった。金鉱株も買い戻され、GDXは1.9%、GDXJは2.6%上昇した。
雇用関連指標では、まず発表された2026年6月のADP雇用者数は9万8,000人増となり、5月の12万2,000人から減速したものの、市場予想の11万人をやや下回る程度だった。
一方、非農業部門雇用者数(NFP)は5万7,000人増と、5月の12万9,000人増から大幅に鈍化し、市場予想の11万5,000人も大きく下回った。失業率は4.2%へ低下したが、これは雇用の増加だけでなく、労働参加率の低下も影響したとみられる。
今週の金属市場で最大の注目材料となるのは、米国政府による銅関税の最終判断である。米商務省は2026年6月30日までに調査報告書を提出しており、現在は政府による最終審査が進められている。
銅市場が関税問題に注目し始めたのは2025年初めである。新政権は幅広い産業を対象に大規模な追加関税を打ち出し、その一環として2025年2月には銅も調査対象となった。政府は米商務省に対し、銅輸入が国家安全保障に及ぼす影響を調査するとともに、銅関連製品への関税導入の是非を検討するよう大統領令で指示した。
2026年6月30日に提出された報告書では、精製銅への関税導入は当面見送る一方、半製品には50%、銅派生製品には25%の関税を課すことが提言された。
2024年の米国の精製銅輸入額は87億米ドルで、銅製品全体の輸入額174億米ドルのおよそ半分を占めている。今後の政府判断では、この精製銅も関税対象となる可能性があり、2027年1月までに15%、2028年には30%へ引き上げられる案も検討されている。実現すれば、米国へ輸入されるほぼすべての銅製品が高関税の対象となる。
これは、2025年以前の状況とは大きく異なる。それまで米国の銅輸入に課される関税は5%未満と低水準で推移しており、大恐慌期を除けば、およそ100年間にわたってこの状態が続いてきた。今回の政策転換は、米国の銅市場だけでなく、世界の銅貿易にも歴史的な影響を与える可能性がある。
図4:銅価格

米国の関税政策への思惑は、米国のCMEと英国のLMEにおける銅価格の差を大きく広げた。通常、両市場の価格差は1~2%程度に収まるが、2025年7月30日の関税発表直前には約30%まで拡大した(図4)。
2025年6月の平均でも約14%と高水準だったが、その後は徐々に縮小し、2026年初めには過去平均に近い約1%まで低下した。しかし、この3か月で再び拡大に転じ、現在は約11%となっている。ピーク時には及ばないものの、依然として歴史的に高い水準で推移している。
こうした価格差は、世界の銅在庫の地域別構成にも大きな変化をもたらした。2014年から2024年までの平均では、米国、英国、中国の在庫シェアはそれぞれ21%、51%、28%だった。しかし、米国で関税導入が見込まれたことで銅が大量に米国へ流入し、とりわけ英国からの供給が増加した。英国は不足分を中国から調達したため、中国の在庫も減少した。
その結果、2025年6月時点では、米国、英国、中国の在庫シェアはそれぞれ55%、24%、21%へと大きく変化した。一方で、3地域の在庫総量は38万4,315トンにとどまっていた。
その後も、銅在庫が英国と中国から米国へ移動する流れは続いた。2026年6月時点では、世界全体の銅在庫は114万3,648トンまで増加し、在庫シェアは米国が59%、英国が29%、中国が11%となっている。米国への在庫集中がさらに進む一方、中国の在庫比率は大きく低下した。
今後、関税政策の見直しによってこの不均衡が解消されれば、在庫は米国から英国、さらに英国から中国へと再配分される可能性がある。この在庫移動だけでも、市場の需給バランスに大きな影響を及ぼし、マクロ経済要因とは別に銅価格が大きく変動する可能性がある。
米国政府による関税の最終判断は、銅価格の方向性を左右する重要な材料となるだろう。高関税が導入されれば、世界的な在庫の偏在がさらに進み、米国への銅流入が続くことで、米国内の銅価格は一段と押し上げられる可能性が高い。一方、中国の在庫シェアはすでに11%まで低下しており、英国向けの供給を拡大できる余地は限られつつある。そのため、英国の在庫がさらに減少する可能性もある。
逆に、関税が想定より低い水準にとどまる、あるいは導入が見送られれば、これまで積み上がった在庫の偏在が急速に解消される可能性がある。その場合、世界の銅市場は在庫の再配分を通じて大きく動くことも考えられる。
そのため、銅価格は短期的には米国の関税政策を巡る動向によって大きく変動する可能性がある。一方で、オーストラリア首席エコノミスト事務所(AOCE)と国際銅研究グループ(ICSG)の予測では、今後2年間は供給過剰が見込まれており、中長期的な見通しは弱気となっている。
図5~8:銅の需給バランス


AOCEは、3月の定期報告書を見送った後、2026年6月の報告書でようやく新たな需給予測を公表した。同機関は、中東戦争による資源市場の急激な混乱を受け、当時は予測が困難だったと説明している。一方、ICSGの予測も2026年4月に公表された比較的新しいものであり、中東戦争の影響や過去1年間にわたる世界の銅供給の大幅な減少が反映されている。
OCEとICSGはともに、2026年の銅生産はそれぞれ前年比-0.2%、0.0%と、ほぼ横ばいで推移すると予測している(図5、6)。消費についても、それぞれ1.3%、1.6%の増加を見込んでいる。ただし、2025年の基準値が若干異なるため、需給見通しには大きな差が生じている。AOCEは2026年に23万3,000トンの供給余剰を予測しているのに対し、ICSGは6,000トンのわずかな余剰にとどまり、市場はほぼ均衡すると見込んでいる(図7、8)。
両機関とも、2027年には生産の伸びがAOCEで2.3%、ICSGで3.3%へと大きく回復し、消費もそれぞれ2.5%、2.0%増加すると予測している。その結果、いずれも供給余剰が続く見通しだが、その規模には大きな違いがある。AOCEは余剰が13万3,000トンへ縮小すると見込む一方、ICSGは37万7,000トンへ大幅に拡大すると予測している。
AOCEは2031年までの銅価格予測を公表している一方、ICSGは価格予測を直接示していない(図9)。一方、世界銀行は銅を含む金属価格の定期的な見通しを公表しているものの、AOCEのような需給予測は提供していない。世界銀行の予測も2026年4月時点の最新データに基づいているが、対象期間は2027年までとなっている。
AOCE、世界銀行ともに、銅価格は2026年にピークを付けると予測している。AOCEは1トン当たり12,699米ドル、世界銀行は12,000米ドルを見込んでおり、2027年にはそれぞれ12,777米ドル、11,000米ドルへ低下すると予想している。さらにAOCEは、2028年に12,053米ドルまで下落した後、2029年と2030年には12,218米ドルまで緩やかに回復すると予測しているものの、2026~2027年の水準には戻らないと見込んでいる。
この見通しは、今後1年間で銅価格が1トン当たり15,000米ドルまで上昇すると予想する一部の大手投資銀行の強気な見方とは対照的である。一方で、多くの投資銀行は1トン当たり12,000米ドル前後を基本シナリオとしており、世界銀行の予測とおおむね一致している。最も弱気な予測は9,500米ドルだが、これは例外的なケースであり、それ以外では11,000米ドル前後が下限となっている。この水準は、価格が2026年頃の水準へ回帰するシナリオを示している。
弱気な見通しの背景には、足元の高値が関税政策を巡る混乱によって一時的に押し上げられているとの見方がある。関税を巡る不透明感が解消されれば、価格を押し上げている要因も薄れ、銅価格は調整する可能性がある。
また、近年の銅価格は、AIやハイテク分野の急成長による需要拡大への強い期待にも支えられてきた。しかし、市場ではこうした成長が長期的に持続するかどうかへの懸念も高まっており、需要期待が後退すれば銅価格の下押し要因となる可能性がある。
図9:銅価格予測

図10、11:銅の供給量(国別、鉱山別)

銅の供給面では、この1年間、世界有数の銅鉱山で相次いで生産が落ち込んだ。しかし、生産減少の要因となった問題は2026〜2027年にかけて解消へ向かうとみられ、世界の銅生産には回復余地がある。
代表例が、2024年に世界第2位の銅鉱山だったグラスバーグ鉱山である。同鉱山ではインドネシアで発生した土砂崩れの影響により、2025年第4四半期から生産量が大幅に減少した(図9)。一方、被害は2026年中に復旧する見込みであり、生産量は2027年までに大きく回復すると予想されている。
また、世界最大の銅生産国であるチリのコラワシ鉱山と、第2位のコンゴ民主共和国にあるカモア・カクラ鉱山でも、生産は低迷している。いずれも操業上の問題が生産減少の主因とされているが、今後数年で改善される見通しだ(図10、11)。
さらに、パナマのコブレ鉱山は、規制上の問題で操業を停止する前には年間30万トン超の銅を生産していた。現在、政府は操業再開を検討しており、実現すれば世界の銅供給を押し上げる要因となる可能性がある。
これらの主要鉱山で生産が回復すれば、世界の銅生産は2027年に大幅に増加するとの市場予測を裏付ける材料となりそうだ。
図12:世界の主な銅鉱山の銅生産量

図13、14:メジャー金鉱株とTSXVのジュニア金鉱株

メジャー金鉱株とTSXV上場の金関連銘柄は、金属価格の上昇に伴いほぼすべて上昇した(図10、11)。主に国内で操業しているTSXVの金鉱会社では、タラモア・マイニングがメキシコのクリスティーナ・プロジェクトの鉱物資源を更新し、金換算で200万オンスと報告した。
これには銀、銅、鉛、亜鉛も含まれる。このプロジェクトは、ユーコン準州のコーヒー・プロジェクトの総資源量300万オンスをやや下回る。しかし、コーヒー・プロジェクトはクリスティーナ・プロジェクトよりもはるかに進んだ段階にあり、今年の初めにPEAが完了。2026年末までに実現可能性調査が予定され、許可も進んでいる。
ニュー・ファウンド・ゴールドはTSXベンチャー取引所からTSXへの上場変更の条件付き承認を受け、アメックス・エクスプロレーションはアメックス・ゴールド・マイニングに社名を変更し、ゴールドX2はモス・プロジェクトのメインゾーンからの掘削結果を報告した(図12)。
主に国際的に事業を展開するTSXV上場の金鉱会社のうち、ベンツ・マイニングはグレンバーグ・プロジェクトのアイコン・キャンプとハリケーン・キャンプからの結果を報告した(図13)。
図15:カナダ国内におけるジュニア金鉱会社の最新情報

図16:カナダの海外展開ジュニア金鉱会社の最新動向

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Ben McGregor 氏は、CanadianMiningReport.com において「Weekly Roundup」を執筆している分析者であり、金属・鉱業セクターに関する鋭い視点で知られている。市場トレンドを見抜く能力に長け、複雑な市場の動きを TSXV(トロント・ベンチャー取引所)のジュニア鉱山企業を中心に、簡潔かつ分かりやすい洞察へと落とし込んでいる。
毎週のレポートでは、金・銅・ウランなど幅広いテーマを扱い、データに基づく分析と投資機会を見極める視点を組み合わせて、読者に価値ある情報を提供している。ダイナミックに変動するジュニア鉱山セクターにおいて、投資家にとって重要な情報源となっている人物である。