本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した“Weekly Roundup” の内容を翻訳・再構成したものです。
金価格は1.0%下落し、1オンスあたり4,173米ドルとなった。これは、今週実現した米イラン和平合意への期待から金価格に織り込まれた地政学的リスクプレミアムが低下した過去2週間よりも下落ペースが緩やかだが、状況は依然として不安定なままだ。
多くの大手投資銀行が2026年の金価格目標を引き下げ、ゴールドフィールズの株価はガーナが同社の国内鉱山の採掘権更新を議論していることで打撃を受け、アラモス社は地震の影響で推定値を引き下げた。
金価格は2週連続で下落したが、金関連株は上昇し、GDXは3.1%、GDXJは2.8%上昇した。また、地政学的リスクの低下が市場を押し上げ、S&P500は1.2%、ナスダックは2.9%、ラッセル2000は1.7%上昇した。
図1:金先物価格の週間パフォーマンス

図2:金鉱株ETF

図3:金先物および金鉱株ETFの価格パフォーマンス

金価格は今週1.0%下落し、1オンスあたり4,173米ドルとなった。これで3週連続の下落となり、2026年5月の高値4,720米ドルからは11.6%下落している。
背景には、米国とイランの和平合意を受けて中東情勢への懸念が後退し、地政学的リスクプレミアムが縮小したことがある。しかし、今週の金価格の下落幅は限定的だった。市場では、和平合意による好材料はすでに織り込まれており、依然として中東情勢の再悪化リスクも残ると見られている。
実際、週末にはイスラエルによるレバノン攻撃を受けて、イランがホルムズ海峡の再封鎖を発表した。市場は引き続き一定の警戒感を維持している。
一方で、株式市場はリスクオンの展開となり、S&P500は1.2%、ナスダックは2.9%、ラッセル2000は1.7%上昇した。
注目すべきは金関連株の動きだ。金価格が下落したにもかかわらず、GDXは3.1%、GDXJは2.8%上昇し、2週連続の上昇となった。
これは、市場が現在の金価格水準でも金鉱株は依然として割安だと判断している可能性を示している。金価格が1オンスあたり4,200米ドル前後で推移しているにもかかわらず、多くの金鉱株は過去の低い金価格を前提とした評価水準にとどまっている。そのため投資家は、金価格の短期的な調整よりも、企業収益の改善や将来的な利益拡大に注目しているようだ。
2025年後半から2026年初頭にかけて、貴金属市場は大きな上昇を見せた。銀は177%、プラチナは115%、パラジウムは92%、金は82%上昇し、市場を牽引した。
しかし、2026年に入ると状況は変化している。銀は2月以降16%、プラチナは20%、パラジウムは26%下落しており、前年から続いた急騰相場の反動が表れている。特に銀やプラチナ、パラジウムは上昇局面の終盤で投機的な買いが集中していたため、その巻き戻しが続いているとみられる。
一方で、投資家の関心はベースメタルへ移りつつある。
2026年2月以降、銅は11%、アルミニウムは14%、亜鉛は8%、ニッケルは3%上昇した。鉄鉱石のみ4%下落したものの、全体としては貴金属を大きく上回るパフォーマンスとなっている。
もっとも、ベースメタルの上昇率は2025年ほどではない。2025年には銅が30%、アルミニウムが25%、亜鉛が21%、ニッケルが15%、鉄鉱石が10%上昇しており、現在の相場はブームというよりも堅調な上昇局面といえる。
市場の資金は、過熱感のあった貴金属から、AI向けデータセンターや電力インフラ投資など実需拡大への期待が高いベースメタルへとシフトしているようだ。
図4:金属価格の推移

金価格の調整を受けて、大手投資銀行はここ数か月で相次いで2026年の金価格予想を引き下げている。
モルガン・スタンレーは目標価格を5,700ドルから5,200米ドルへ、UBSは5,900米ドルから5,500米ドルへ引き下げた。さらにゴールドマン・サックスは5,400米ドルから4,900米ドルへ、スタンダード・チャータード銀行も5,750米ドルから5,100米ドルへ予想を修正している。
各行は主な理由として、中東情勢の緊張緩和や、これまで市場が期待していた金融緩和ペースの鈍化を挙げている。
一般的に金価格はマネーサプライの拡大や低金利環境の恩恵を受けやすい。市場では、利下げ期待の後退によって金価格の上昇余地が限定されるとの見方が広がっている。
しかし、今後の金融政策を取り巻く環境は依然として不透明だ。中東情勢が安定すれば原油価格の下落を通じてインフレ圧力は弱まり、中央銀行は再び利下げに動きやすくなる。
一方で、すでに発生したインフレが賃金上昇を通じて定着すれば、各国の中央銀行は高金利を維持せざるを得なくなる可能性もある。また、現在の和平が長期的に維持される保証もない。
こうした不透明な環境の中で注目したいのは、投資銀行の予想精度だ。2019年から2025年にかけての金価格上昇局面では、多くの投資銀行が実際の金価格を大幅に過小評価していた。市場が強気相場の真っただ中にあった2025年後半から2026年初頭になって初めて、各行は目標価格を大幅に引き上げている。
つまり、投資銀行は相場の転換点を先読みするというより、実際の価格変動を後追いする傾向がある。その意味では、今回の相次ぐ目標価格引き下げは、市場の過度な楽観論が後退し、投機資金が整理されつつあることを示している可能性がある。歴史的にみれば、このような悲観論の広がりは長期投資家にとって魅力的な投資機会となるケースも少なくない。
図5、6:メジャー金鉱株とTSXVのジュニア金鉱株

今週の金価格は小幅な下落となったが、メジャー金鉱株やTSXV上場の金鉱銘柄の株価はまちまちな動きとなった。
カナダ国内で事業を展開する企業では、Thesis GoldがLawyers-Ranchプロジェクトで2026年の探査プログラムを開始した。同社は2027年末までに実現可能性調査(FS)の完了を目指しており、今年は20,000mの掘削を計画している。
また、Amex Explorationは約8,000万カナダドル規模の私募増資を完了した。現在の市場環境においてこれだけの資金を調達できたことは、投資家の高い関心を示している。
海外案件を進める企業では、Benz MiningがGlenburghプロジェクトの試験結果を発表したほか、Heliostar Metalsはメキシコのラ・コロラダ鉱山で追加の許認可を取得し、探鉱を前進させている。
一方、Goldgroup Miningはサンフランシスコ金鉱山を保有するMoliMineralsの買収を完了し、24,000m規模の掘削プログラムを開始した。
このほか、Minera AlamosはTSXVからTSXへの市場変更について条件付き承認を取得しており、企業としての成長段階が一段階進んだことを示している。
全体としてみると、足元の金価格は調整局面にあるものの、多くの探鉱・開発企業は掘削、資金調達、買収といった成長戦略を継続しており、セクター全体の活動は引き続き活発な状況にある。
図7:カナダ国内におけるジュニア金鉱会社の最新情報

図8:カナダの海外展開ジュニア金鉱会社の最新動向

今週、大手金鉱株の中で最も大きく下落したのは Alamos Gold で、株価は14.3%下落した。要因となったのは、オンタリオ州にある Young-Davidson 鉱山で発生した地震だ。同鉱山では一部エリアへのアクセスが制限され、第2四半期に予定していた鉱石の採掘に影響が出ている。
Young-Davidson は同社の3鉱山の中では最小規模だが、2025年には17.4万オンスの金を生産し、全体の約3割を占める重要な資産である。
これを受けて Alamos Gold は、第2四半期の生産見通しを13.0万〜13.5万オンスへ引き下げた。従来の年間ガイダンスは57万〜65万オンスだったが、同社は年間生産量が下限の57万オンスを下回る可能性も示唆している。
Island Gold 鉱山の好調な操業が一部を補う見込みだが、2026年のコストは従来予想を上回る見通しだ。Young-Davidson の被害状況については現在も調査が続いており、同社は7月に追加のアップデートを公表する予定としている。
Gold Fields の株価は今週大きく変動した。週前半には上昇したものの、ガーナ政府による鉱業政策の見直しが報じられると急落し、週間では5.8%の下落となった。
市場が懸念したのは、同社が保有する Tarkwa 鉱山の採掘リース更新が保証されない可能性が示されたことだ。Tarkwa は2025年に48.8万オンスの金を生産したガーナ第2位の金鉱山であり、Gold Fields にとって重要な資産となっている。
背景には、ガーナ政府による資源ナショナリズムの強化がある。同国は近年、鉱業分野への国内企業の参加拡大を進めており、外国資本の鉱山会社に対して地元企業の活用を義務付ける新規制を導入した。
さらに政府は、「鉱業ロイヤルティの引き上げ」「採掘リース期間の短縮」「国内資本の出資比率拡大」なども検討している。
こうした政策は Gold Fields だけでなく、ガーナで操業する大手金鉱会社にも影響を及ぼす可能性がある。実際に同国では Newmont、AngloGold Ashanti、中国系企業などが主要鉱山を運営しており、今回の規制変更は業界全体の注目を集めている。
ガーナは現在、世界第6位の金生産国であり、世界の金供給量の約5%を占める重要な産地だ。近年は生産量の増加が続いており、2025年の金生産量は前年比21%増と世界平均を大きく上回った。
そのため今回の規制強化は、単なる一企業の問題ではなく、世界の金鉱業界全体に影響を与える可能性がある。
図9:2025年におけるガーナの主要金鉱山の生産量

図10:世界の主な金生産国

ガーナの鉱業政策の見直しは、近年西アフリカで進んでいる資源ナショナリズムの流れの一環とみられている。
特にブルキナファソやマリでは、クーデター後に鉱業分野への国家関与が強まり、外国企業に対する規制強化が進められてきた。ブルキナファソでは一部鉱山の接収が行われるなど強硬な対応が取られている一方、ガーナの政策は外国企業への配慮を残した比較的穏健なものとみられている。
マリでは新規鉱山プロジェクトにおける政府持分が20%から30%へ引き上げられたほか、ガーナでもロイヤルティ引き上げや国内資本の参加拡大が検討されている。
こうした政策変更を受け、両国の投資環境に対する評価は低下している。フレーザー研究所の2025年鉱業調査によると、鉱業投資魅力度指数はガーナが75.6から55.2へ、マリが76.3から46.6へ低下した。
ブルキナファソとマリは世界第11位、第13位の金生産国であり、ガーナも世界有数の金産地であることから、西アフリカにおける資源ナショナリズムの拡大は、今後の世界の金供給や鉱山投資に影響を与える可能性がある。
図11:ガーナの金生産量の伸びと世界全体の伸びの比較

図12:鉱業魅力指数

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Ben McGregor 氏は、CanadianMiningReport.com において「Weekly Roundup」を執筆している分析者であり、金属・鉱業セクターに関する鋭い視点で知られている。市場トレンドを見抜く能力に長け、複雑な市場の動きを TSXV(トロント・ベンチャー取引所)のジュニア鉱山企業を中心に、簡潔かつ分かりやすい洞察へと落とし込んでいる。
毎週のレポートでは、金・銅・ウランなど幅広いテーマを扱い、データに基づく分析と投資機会を見極める視点を組み合わせて、読者に価値ある情報を提供している。ダイナミックに変動するジュニア鉱山セクターにおいて、投資家にとって重要な情報源となっている人物である。